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愛して


 ロッシュは瞬間魔法を使いアストリットの所に行った。アストリットはロッシュが来る事がわからないはずだ。なぜならいつもは超自然魔法でアストリットは自分を捜索する魔法から逃れていたので捜索魔法が使われるとすぐに誰かが来ると気がついていた。しかし今はアストリットはなんの魔法も使っていないのでロッシュが突然近くに来ても気がつかない。そう、アストリットはロッシュに殺されるとわかっていたからだ。


 ロッシュは大きな木にもたれかかってお昼寝をしているアストリットを見ていた。アストリットはとても綺麗な顔をした美しい娘だった。クライツラ王国の子供は美形だったがアストリットもそうだった。


 いつも顔を隠していたがもう隠す必要が無い。だからアストリットは顔を出しているのだ。ロッシュはアストリットに近づいて行った。優しい風がアストリットの美しい灰色の髪をなびかせその髪は柔らかい光を放っている。ロッシュはアストリットの真の姿を見て不思議な感情になった。アストリットを殺しに来たのに殺したく無いと思っている。

 ロッシュはずっとアストリットを見つめていた。

 

「ロッシュ様、どうして殺さないのですか」


 アストリットはロッシュに声をかけた。アストリットはロッシュが来た事に気がついていたのだ。ロッシュは何と返事をしていいのかわからなかった。「ロッシュ様、覚悟は出来ております」アストリットは言った。


 それくらいロッシュにもわかっている、あの大量にロッシュの元に送られて来たリルケを見ればアストリットの覚悟は誰にでもわかる。ロッシはアストリットに近づいた。アストリットはゆっくり目を開いてロッシュを見た。


 その時アストリットはロッシュに微笑んだ。今から殺されるなのに。。。


 ロッシュはアストリットがこんなに美しい人だと知らなかった。見た目もそうだがアストリットの心の波動は澄んでいる。ロッシュはアストリットを殺せないと思った。

 

 ロッシュはそっとアストリットの髪に触れた。アストリットは突然ロッシュが髪に触れたので驚いている。アストリットはロッシュの顔を見つめて何が起きているのかわからないという表情をしている。


 ロッシュはアストリットに言った。「アストリット、君は魔法使いが嫌いか?」ロッシュはまたアストリットに聞いた。アストリットは意味がわからなかった。自分を殺しに来たロッシュがどんな意味でそんな事を言うのか。

「いえ、嫌いではありません。。。」アストリットは戸惑いながら答えた。「それならよかった」そう言ってロッシュはアストリットを抱き寄せ瞬間移動を発動した。


 ロッシュはアストリットを自分の領地にある城に連れて行った。この城は魔法がかけられていた。全ての魔法からこの城は守られている。戸惑うアストリットはなぜロッシュが自分をここにつれて来たのか分からなかった。ここで殺すのだろうか、そんな事を考えていた。

 

 ロッシュは戸惑うアストリットを見て言った。「アストリット、君はここに居るんだ。ここは絶対に誰にも見つからない場所だ。」「ロッシュ様、私は逃げも隠れもしません。もう良いのです。やれることは全部やったのですから。」アストリットは言った。

「僕はアストリットの事を何も知らないんだ。ずっと前から知っていたのに」


「ロッシュ様は知る必要はありません。知ったとしても何も運命は変わらないのですから」そう言ってアストリットは笑った。「僕はアストリットの事を知りたいと思う」ロッシュはアストリットを見つめながら言った。

 アストリットは悲しそうな表情になり「ロッシュ様はフローエンの魔法使いです。敵を目の前にしてそんな事を言ってはいけないのです。知らない方がいい事だって沢山あります。どうかもう私を殺して下さい。覚悟は出来ています。」アストリットはそう言って目を瞑った。


「出来ないよ。」ロッシュは言った。アストリットは昔鳥達を白魔法で治癒していたロッシュを思い出した。きっと私はあの鳥なんだ。いつかロッシュが傷ついてしまう。。そう思って下を向いた。


 アストリットはロッシュの城にきて一月が経った。

 この城は魔法がかけられておりロッシュが言った通り誰もアストリットがここに居るとわからなかった。ロッシュは念のためアストリットの髪の色と瞳の色を変える魔法を使った。いまアストリットの髪がブラウンで瞳は深いブルーだ。ロッシュはどうしてこんなことまでしてくれるのかアストリットにはわからなかった。


 だが久しぶりに穏やかな日々を送れているのも事実だ。ロッシュは週に二回城に訪れアストリットの顔を見にくる。特に何をするわけでは無いが、「元気?」とか、「何か困ってない?」とか二言三言話して帰っていく。ロッシュは魔力が高いのでいいかもしれないけど普通は週に往復四回も瞬間魔法発動したら疲れる。アストリットはロッシュが何を考えているのかわからないでいた。

 

 一方ロッシュは、アストリットが自分を殺しに来た魔法使いの家に連れてこられて軟禁され恐怖に思っているのでは無いかと思い、まずは環境に慣れてもらおうと思っている。ロッシュは彼女から嫌われていないと言ってもらえたが、多分怖がられているので本当は色々と聞いてみたかったが我慢して顔だけ見て帰るようにしていた。


 今のところ戦争は起きていないのでフローエンでは月に二、三回城でパーティーが開催されていた。ロッシュは最近そんな気分になれなかった。常にアストリットの事を考えていた。彼女に深入りしてしまうとダメだと思いながらも週に二度顔を見に行くとホッとする。


 ホッとする理由もわからなかった。マルクスがいた頃何でもなかったアストリットがどうしてこんなに気になるのか。ロッシュは今日のパーティーで誰と過ごすかよりもアストリットの顔を見に行きたいと思った。「ロッシュ今日は誰と?」テリウスがニヤニヤしながら聞いて来た。「いや、今日は用事ができたから帰る」「ロッシュどうしたんだ?熱でもあるのか?治そうか?」エーデルが言った。「いや無いよ。じゃあ僕帰るから」そう言ってロッシュは帰ってしまった。二人はそんなロッシュを初めて見たので驚いていた。

 

 ロッシュは今日は星降際だと気がついた。星降る丘に星が降る日。アストリットも気分転換がしたいかもしれない、一緒に出かけよう。夕暮れで空がオレンジ色になっている。夜はすぐそこまで来ていた。ロッシュはすぐに着替えローブを羽織って自分の城に行った。

 

 アストリットは突然表れたロッシュに驚いた。今までこんな時間にここに来た事がなかったので少し身構えた。その様子を見てロッシュは慌てて言った。「アストリット、違う襲いに来た訳じゃなくて、今日は星降際だから一緒に見に行かないかと思って、、


 あ、僕が一緒だから安心して、大丈夫だから、、あ,違う信じて、ただ星を見るだけで怖い思いさせないから」ロッシュはどう説明したらいいのかわからなくなった。自分を殺そうとした男が大丈夫だから安心して、、は無い。でも純粋に一緒に星が見たいと思ったことは事実。


「アハハハ、ロッシュ様大丈夫です。ちゃんとわかりましたから」アストリットは思わず笑ってしまった。自分を殺そうとして現れたロッシュが大丈夫と言うなんて!信用無いようなあるような。でもアストリットは嬉しかった。星降る丘はあれ以来だった。

 

「アストリットこれを」ロッシュはアストリットにローブをかけてくれた。「このローブは魔法がかけられている。物理攻撃と黒魔法による攻撃を無効にするんだ。白魔法には効かないが白魔法は攻撃力が無いから大丈夫だ」

 「ロッシュ様ありがとうございます。これを着ていたらロッシュ様の攻撃からも身を守れるのですか?」アストリットは笑いながら聞いた。「残念ながら無理だな、僕の魔法だから無効にはならないんだ僕以外の魔法にしか効かない」「じゃあまだ私も危険なんですね!」アストリットはクスクスと笑っている。「ああ、ホント信用ないなぁ」ロッシュはガッカリしている。「ロッシュ様、信じます」アストリットはそう言ってフードを被った。「じゃあ行こうか!」ロッシュはアストリットを抱き寄せ瞬間移動をした。

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