興味
ロッシュはメーベルト一世達と帝国軍の視察をしていた。帝国の西側に大きな森がありそこで軍隊の訓練が行われていた。
その森の脇には小川が流れており小魚がいた。休憩中ロッシュはその小魚を見て不意にアストリットを思い出した。マルクスが死んだ時からずっとアストリットは行方不明だった。なんとなくアストリットが気になりロッシュは捜索魔法を発動させアストリットを探してみた。しかし捜索魔法が弾かれた。要するに強制的に捜索がキャンセルされたのだ。ロッシュは自分の魔法が弾かれることは初めてだったので驚いた。もう一度発動したが結果は同じだった。ロッシュは弾く原因を探した。超自然魔法が使われていた。まさかこの魔法が使える人物がいるとは。。この魔法を使える人間は滅多にいない奇跡の魔法と呼ばれる分類だ。クライツラの王が使えると聞いた事があったが定かではない。
まさかアストリットが超自然魔法を?ロッシュはそんな想像が出来なかった。が、ふと疑問に思った。アストリットは何者だったんだ?ロッシュは初めてアストリットに興味を持った。そういえばアストリットはマルクスの実の娘ではなかった。どうしてマルクスの所にいたのだろう?リルケを創る事ができたのか?今まで興味のなかった,存在さえ忘れていたアストリットの事を考えている。ロッシュはアストリットを探そうと思った。
ある日またリルケが届いた。そのリルケ無色透明だった。とても美しくロッシュはそれをお守りのような存在だと感じた。だから身につけた。そのリルケを触りながら神経を集中させた。追跡魔法を細い糸のようにして発動してみた。やはり途中で切れてしまったが東南を示していた。ロッシュは途切れた場所を中心に大地に手をつけてこのリルケを作った人間を探す大地の魔法を使った。この大地の上にいる捜索対象者を特定する上級魔法だ。しかしそれも弾かれた。ロッシュはなぜそこまで追跡を拒むのかわからなかった。探してほしくないというメッセージなのはわかる。だけどそこまでされるとロッシュも本気でリルケを創ったであろうアストリットを探したくなる。「仕方がない」ロッシュは深緑のリルケを取り出し耳につけた。超自然魔法を解除する絶魔法を発動し同時に大地の魔法を使った。こんなことできる魔法使いはロッシュしかいない。アストリットを発見した。瞬時にロッシュはアストリットのところに移動した。
アストリットは超自然魔法が強制解除されたのを感じた。「あ、」と言った瞬間ロッシュがアストリットの目の前に現れた。
驚いたがアストリットは一応挨拶をした「ロッシュ様、お久しぶりですね」「アストリット元気だった?」「はいお陰様で」……
お互い黙ってしまった。やはりあのリルケを創ったのはアストリットで、実際アストリットに会うと何を言って良いのかロッシュはわからなくなった。上級魔法まで発動してアストリットを探したのに、、ロッシュ自身少し戸惑ってしまった。
「ロッシュ様どうしてここに?私になにか御用でしょうか?」アストリットはロッシュに聞いた。「アストリットがリルケを創ったのか?」ロッシュはアストリットを見つめた。アストリットは一瞬悲しみの表情を浮かべた。ロッシュはアストリットがなぜそんな顔をしたのか気になったが、アストリットは黙っている。
「アストリット?」「ロッシュ様、どうして私を思い出したのですか?」アストリットはロッシュに聞いた。ロッシュは答えられなかった。本当はマルクスが死んだときにアストリットを探すのが正解だ。だけどロッシュはアストリットの事をそれほど思っていなかったから探さなかった。でもそんな事言えない。
「そのまま忘れていて欲しかったのですが、上手くいきませんね。ロッシュ様が超自然魔法も解除してしまったし。。。ロッシュ様、私に関わらないで下さい。お願いします。」アストリットは言った。「なぜ?」ロッシュは聞いた。「ロッシュ様にとって良いことがないから」「良いことが無い?どう言う意味?」ロッシュは首を傾げた。
「だってアストリット、マルクスが生きていた頃も関わっていたじゃないか?」ロッシュが言った。「あの時とは状況が変わりました。ロッシュ様、私はマルクスの実子ではありません。どこの誰かわからない人間に帝国の大魔法使い様は関わってはいけないのですよ」「アストリット、だからって追跡させないようにするとは、しかも超自然魔法を使うとはアストリットに興味を持ってしまう。この魔法は普通の人間は使えないのだ。アストリットは使えることを隠していたのか?」
「ロッシュ様答えられません。」「それにこのリルケは間違いなく君が作った」「ロッシュ様それにも答えられません」「じゃあ何に答えてくれるんだ?」「私に関わらないで下さい。それが答えです。」
「アストリット、僕は女の子にそう言われるの初めてで、なんか余計に興味をもってしまう。」ロッシュはアストリットに微笑みなから言った。アストリットはため息をついた。「もう用事がないなら帰ってください。」そう言ってアストリットは森の中に走って行ってしまった。追いかけようかと思ったけれど、怒られそうだからやめた。
アストリットってどんな子なんだ?ますます興味が湧いてきた。ロッシュは「今日は諦めて帰るか。。」そう言いながら瞬間移動で城に帰った。
アストリットは突然ロッシュが訪ねてきて驚いた。もう会う事はないだろうと思っていたロッシュがアストリットを覚えていてくれて、しかも高等魔法を使って、超自然魔法を解除してまで探しにきてくれた。
アストリットはときめきが止まらなかった。久しぶりに見るロッシュはやはりカッコよかった。アストリットはロッシュに憧れていたけれど叶う事のない思いだったので胸の奥の奥にしまっていた。でもその恋心を突然刺激された。
しかしロッシュはアストリットに関わると何一つ良いことがないとアストリットにはわかっていた。
ロッシュはマルクスが居なくなり自分の魔力に耐えれるリルケを唯一作れるアストリットを保護するだろう。だけどアストリットはそれを望んでいない。アストリットは敵国の私生児の姫なのだ。万が一それが露見するとロッシュに大きな迷惑をかけてしまう。
だからリルケを作れる事は言いたくなかった。このまま関わらなければ何事もなく過ごせる。ロッシュのリルケはオープンで届ければ良い。自分はロッシュとは違う世界で生きる人間なのだ。今日ロッシュに会えた事、興味を持ってもらえた事、これだけで十分。
アストリットはまた超自然魔法を使い姿を消した。