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アストリットの秘密

アストリットはマルクスが殺された時小川にいて難をのがれた。工房から火の手が上がり異変に気がついたアストリットはすぐに身を隠した。世界中で誰一人アストリットがリルケを創れると知らない。知られてはいけないのだ。


 アストリットは師匠が殺されたとわかった。どうか魂が家族の元に帰れますように、、。師匠を失ったアストリットだが悲しんでいられない。アストリットはこれから秘密でロッシュの為にリルケを作らなければならない。マルクスの思いを継いで。。。


 とにかくロッシュが困らないようにどの魔法でも使えるゴールドとシルバーのリルケを創った。これは上級者でもかなり難しいのだがなぜかアストリットはそれができるのだ。ロッシュにマルクスがいなくなってもあなたを支えるリルケがあるから大丈夫だと知らせるためそのリルケをにロッシュに送ろうとした。


 だけどどう届けて良いのかわからなかった。アストリットは一か八か自分のためにリルケを創った。追跡魔法を阻止できて安全に届けるオープンと名づけたリルケだ。これは自然界が持っている力を使って届ける超自然魔法でこの魔法はアストリットが唯一使える魔法だった。

 

 リルケは無事ロッシュの元に届いた。アストリットは自分が創ったリルケがロッシュに使われている事がわかった。創った人間だけが感じられる波動の様なものをアストリットは感じている。ホッと胸を撫で下ろした。


 戦争も停戦になり平和な日々が訪れた。アストリットはふと気がついた。。そういえばロッシュ様の誕生日がもうすぐだ。魔法使いは常にギリギリの精神力で戦っている。その消耗を考える何かホッとできるようなプレゼントをリルケで創れないかと考えた。

 アストリットがロッシュにできるのはリルケを創ることだけだったので彼が楽しい気持ちになれるようなリルケを創った。


 真っ白なリルケ。ロッシュ様が喜んでくれると良いなと思って心を込めて創った。そしてまたオープンで送った。アストリットは密かに想いを寄せていたロッシュの役に立てる自分が嬉しかった。

 

 アストリットには大きな秘密がある。彼女はクライツラ王国を治めるシュトルム王の隠し子なのだ。アストリットが顔隠す理由もそこにあった。シュトルム王はクライツラ王国のアイゼンシュミッット公爵家令嬢だったアストリットの母マリーを無理矢理自分の物にしアストリットを産ませた。アストリットはマリーの実家で育てられていたがシュトルム王の正妻がアストリットの存在を知り殺そうとし刺客を送ってきた。


 それを察知した叔父でアイゼンシュミット公爵家当主ミハエルが機転を効かせ使用人にアストリットの保護を頼みアストリットを逃した。その後使用人の親戚だったマルクスにアストリットは保護された。その時アストリットは十一歳だった。アストリットはその使用人の子供としてマルクスに預けられた。

 

 アストリットは幼いときにロッシュにあった事がある。その時ロッシュは傷ついた子供だった。人並み外れた魔力を持つロッシュは幼いこともあってその魔力をコントロール出来ていなかった。そのせいで周りから恐れられていた。ロッシュは魔力が暴走したときに巻き添えになった鳥たちに白魔法を使って治癒していた。黒魔法使いが白魔法を使うと体に大きな負担がかかり一週間は何も食べられないほど消耗する。しかしロッシュは自分を顧みず白魔法を使っていた。そんな姿をみたアストリットは人々に恐れられているロッシュは本当は誰よりも優しい魔法使いだと知っていた。


 そんなある日、アストリットは星降際に行って星を眺めていた。星降際は年に一度夜空の星が寿命を終えて地上に落ちてくる日だ。


 この日は魔法使いにとって魔力が最大に発揮できる日でもあり、闇の力が非常に強い日でもあった。ロッシュは一人で星降る丘にいた。アストリットは落ちてくる星を集めていたが魔法使いのロッシュが星降る丘の沼にで闇に飲み込まれそうになっている姿を見た。

 星降る丘にある沼は強い魔力を持ったものが近づくと闇が濃くなりその闇に飲まれると人の心を捨てた魔法使いになるのだ。


 アストリットは闇にのまれるロッシュを助けた。「飲み込まれてはダメよ!あなたは優しい魔法使いだからきっと人は理解してくれるわ」アストリットはロッシュを励ましどうにか沼から引き上げる事が出来た。ロッシュは気を失っていた。アストリットは彼を探していた師匠の魔法使いにロッシュを引き渡しクライツラーに戻った。


 そんな事があってアストリットはマルクスの工房でロッシュに再会した時は嬉しかった。当のロッシュはアストリットを覚えていなかったが、アストリットはそれで良いと思った。なぜなら辛い記憶は無い方が良い。アストリットはそんなロッシュの暗い過去を知っていたので魔法を使って何かをしてくれようとすると使わなくて良いと言った。辛い思いをして血の滲むような努力をしてようやくコントロール出来るようになった彼の魔法をそんな事に使って欲しくなかった。その苦労を知らない人達はロッシュの魔法に喜んで、ロッシュも普通に見せてくれるようになっていたがアストリットは頑なに拒んだ。


 アストリットがロッシュから身を隠す理由は、彼女はロッシュにとって敵国の人間であり、敵の娘でもある。だからいずれそれがバレて殺されるのは仕方がないと思っているが、今は、ロッシュのリルケを創れる人間はアストリットしかいない。だからアストリットは今後ロッシュが困らないほど大量のリルケを創り、それを届けるまではロッシュに見つからないようにしなければいけない。

 

 アストリットは居場所を転々と変えていた。幸いな事にロッシュはマルクスが亡くなってアストリットの事を探してはいなかったのでそれも幸いだった。ロッシュにとって重要じゃない自分を思うと少し寂しく悲しく感じたが、あの美しい魔法使いがアストリットの事を好きになってくれることはあり得ないとわかっていた。それにアストリットは物心つく頃から誰かに心配されたり大切にされた経験がなかった。どこに行っても誰に対してもアストリットは特別になれない存在だった。

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