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愛する人

 ロッシュは三人のメイドを紹介してくれた。ジャスミン、マリナ、カリナ。「この三人はあなたの身の回り全てを助けてくれるのと、あなたを守ってくれる。」「お嬢様、よろしくお願いいたします、」三人は挨拶をし、「ロッシュ様お嬢様のお支度を致しますのでお待ちください」と言ってマリナが指を鳴らした瞬間部屋の中にシールドが出来てロッシュは追い出されてしまった。


「アストリット様、男子禁制ですからロッシュ様を追い出しました」と言ってマリナがウィンクした。アストリットは思わず笑ったしまった。三人は笑ったアストリットを「お嬢様の笑顔は帝国一可愛い」「世界一よ」等と褒めてくれてあっという間にドレスを着せてくれ、髪を整えてくれた。

 

 「ドレスなんて久しぶりです。大丈夫でしょうか?」アストリットは三人に聞いた。「お嬢様、美しすぎて罪です」「支度する私たちもテンション上がる!」「うちのお嬢様が一番」と言って褒めてくれた。アストリットはこの明るい三人が好きになった。「嬉しいです。ありがとうございます。ジャスミン,マリナ、カリナ」そう言って微笑んだ。「きゃ。ーーーー天使よ!」三人はアストリットの可愛さに夢中になっていた時急にシールドが解除されロッシュが目の前に現れた。


「もう待ちきれないぞ!アストリットは僕のものだ」そう三人に言ってロッシュはアストリットを見つめた。アストリットは薄いピンクのドレスに幾重もオーガンジーが重ねられたドレスを着て髪は柔らかくまとめられており、襟足の後毛が初々しさを醸し出していた。ロッシュは初めて見るアストリットのこの姿こそ本物の姿だったと確信した。アストリットはやはり王国の姫の姿だった。「ああ、アストリット」ロッシュはアストリットの愛らしい姿に言葉が出なかった。

 

 「ロッシュ様」アストリットは何かおかしいのかな、、と心配して不安そうにロッシュを見つめた。そんなアストリットを見て「やはりアストリットは私の天使だ」と言って抱きしめた。アストリットは恥ずかしくなりロッシュの胸に顔を隠してロッシュを抱きしめた。「ああ、僕は今幸せだ」そう言ってさらにアストリットを抱きしめ二人は少しの間抱き合っていた。「トントン」ドアをノックする音が聞こえロッシュは「用意できたから向かう」と言ってアストリットに言った。「アストリット、少しだけ待ってて」と言い、「手を出して」とアストリットの左手を指差した。アストリットは左手を出した。ロッシュは自分の左手から一本指輪を抜き取りアストリットの左手の薬指に指輪をはめ呪文を唱えた。指輪が光ってアストリットの指にピッタリ収まった。


 ロッシュは満足そう頷きアストリットの左手を持ち上げて指輪にキスをした。そして今度はアストリットの右手をを少し持ち上げて右手の薬指にキスをした。その瞬間闇が集まり指輪になった。「アストリット、この指輪は意味があるんだけど,それはいずれ話す。僕の大切な姫」ロッシュはアストリットをもう一度抱きしめ「ちょっと行ってくる」と言って部屋を出て行った。


 カリナが「お嬢様こちらに」と言って部屋の奥にあるーテラスに連れて行ってくれた。テラスに備え付けてあるソファーに腰掛けカリナがが用意してくれたお茶を飲んだ。帝国の城の最上階にロッシュの部屋があった。ロッシュは魔法使いでこの城の最上階からこの城を魔法で守っている。テラスからずっと遠くにある海まで見えた。ロッシュはここに住みながらこの帝国を守っている。その上アストリットまで守っている。アストリットは胸が苦しくなった。ロッシュに負担をかけてしまっている。


 何度も行ったり来たりする後悔と希望。まだアストリットの心は揺れている。「ああ,ダメ」アストリットはまた泣いてしまった。「お嬢様?!」カリナが慌ててアストリットのそばに走ってきた瞬間ロッシュが現れアストリットを抱きしめた。

 

「アストリット、泣かないで、僕はあなたに泣いて欲しく無い。僕はあなたがいてくれるだけで良いんだ。お願いだから泣かないで」「ロッシュ様、、ごめんなさい、まだ、、、」アストリットは言葉が出てこない、そんなアストリットをロッシュは黙って抱きしめていた。


 「アストリット、きっとこれからもずっとあなたの気持ちは行ったり来たりすると思う、だけどどうか信じて欲しい。僕は一切後悔なんてしていないんだ。それだけは信じて欲しい」「あと、一人で泣かないで、その悲しみさえ僕は僕のものにしたい。あなたの感情を全て僕にぶつけて、全て僕が受け止めたいんだ。あなたの喜びも絶望も」アストリットは泣きながらロッシュを見つめてその胸に顔を埋めた。

 

 ロッシュはアストリットを抱きしめ何度も「あなたが居てくれるだけで本当に幸せなんだ」と言ってくれた。それから二人はテラスから遠くに見える海を眺めていた。静かで穏やかな時間。アストリットは少しだけ落ち着いた。「ロッシュ様ありがとうございます。もう大丈夫です。お仕事中ごめんなさい」「アストリット、あなたより大切なものをなんて何一つ無いんだ。気にしないで。」そう言ってロッシュは自分のローブを脱ぎアストリットに着せた。「離れている時はこれを僕だと思って。」ロッシュはそう言ってアストリットをもう一度抱きしめて部屋を出て行った。

 

 アストリットはロッシュのローブに包まれて幸せを感じていた、魔法使いにとってローブは身を守る大切な盾だ。ロッシュはアストリットの縦になってくれているのだ。みんなが憧れている大魔法使い、誰よりも強く美しいロッシュがこんな私を。。幼い時にあったロッシュ、努力して、気の遠くなるような努力を積み重ねて今のロッシュがいる。


 そんな彼の隣に敵国の王の私生児で後継者のとして望まぬ覚醒したアストリットがいても良いはずがない。ロッシュはきっとメーベルト一世にアストリットの話をしてもきっと受け入れてもらえない。そんなの当たり前だ。ロッシュだってそう思ったからアストリットを殺そうとしたのだから。「アストリット、僕を信じて」ロッシュの言葉を思い出した。アストリットは思った。全てロッシュに委ねよう。ロッシュがアストリットに死んでくれといえばそうしよう。生きてくれと言われたら生きてみよう。怖いけど少しだけ前に進んでみようと思った。


「お嬢様、こちらに、、」マリアが呼んだ。アストリットはマリアの方に歩いて行った。マリアはアストリットを椅子に座らせ泣いて乱れてしまった髪を綺麗に下ろしてくれた。「アストリット様の髪は本当に美しい。誰が何と言おうと美しい事は善ですから」マリアが面白いことを言う。思わず笑ってしまった

「アハハハマリアは楽しい方ですね」「お嬢様が笑ってくれるなんてマリアは幸せです!」と言って抱きついてきた。人なつこい猫のようでつい可愛くなって頭を撫でた。

 

 「トントン」部屋をノックする音が聞こえた。アストリットは少し怖くなった。ロッシュのローブを少し握りしめた。

「おい、アストリットが怖がるだろテリウスやめろ」ロッシュの声が聞こえた。アストリットは立ち上がってドアの方を見つめた。

 

 「あ、えっと初めましてレディ、私はメーベルト一世ですが、ドアを開けてもよろしいでしょうか?」アストリットは驚いた、この帝国に陛下が部屋を訪ねて来たのだ。怖いけどロッシュが一緒にいる事がわかっていたのでゆっくり息を吐いて返事をした。「メーベルト陛下、どうぞお入り下さい。」アストリットはドアの近くに移動して陛下を迎え入れた。

 

 ドアが開きメーベルト一世達が入ってきた。アストリットはなるようになれ!と思い礼を持って迎え入れた。「アストリット嬢はじめまして」メーベルト一世は言った。アストリットはゆっくりと顔を上げて陛下に微笑んだ。その瞬間その場の全員がアストリットの美しさに時が止まったような感覚になった。


 アストリットは少しだけ戸惑った。すかさずロッシュがアストリットの横に立ちアストリットの手を取り手の甲にキスをして言った「私のアストリットだからダメだ」アストリットはロッシュがそばに来てくれたので少しホッとした。アストリットは何事が起きたのか分からず戸惑っている。


 メーベルト一世はロッシュからアストリットの手をそっと取り上げて、「アストリット嬢歓迎致します」と言いながら手の甲にキスをした。アストリットは驚いた。そしてテリウス,エーデルも同じようにアストリットの手にキスをして受け入れてくれた。


 アストリットは驚いて泣きそうになった。ロッシュはアストリットを抱きしめた。「アストリット、心配しなくていいんだ。アストリットはアストリットなんだ。敵も味方もないんだ。」ロッシュの言葉にアストリットは泣き崩れた。


 ロッシュはアストリットのことをメーベルト一世、テリウス、エーデルに話すことにした。大切な仲間には嘘を言いたくなかった。だけど万が一アストリットを殺せと言うならロッシュはこの帝国を出ようと決めていた。ロッシュほどの魔力があれば自分の国を作ることも難しくないが、ロッシュはメーベルト一世が好きだった。だからちゃんと話しをして、それから決めようと思った。だからロッシュは三人を朝から呼び出した。

 



 

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