溺愛
「アストリット、僕は世界中を敵にまわしてもあなたを守る。僕はたとえあなたで自身であってもあなたの命を奪わせない。絶対に僕の魔法を解く事は不可能だから。だからアストリット、諦めて僕の側にいて。お願いだ僕の側にいて欲しい。あなたがこの先生きることを諦めたくなっても後悔しても僕は絶対にあなたを諦めない。それでも万が一誰かが僕からあなたを奪ってしまった時は、僕はこの世界を終わらせる」
ロッシュはそう言ってアストリットを抱きしめた。アストリットはまた泣いてしまった。そんな覚悟をロッシュにさせてしまったことが辛かった、でも反面そこまで言ってもらえるのは死ぬほど幸せだった。アストリットは頷いてロッシュの胸に身体を預けた。絡み合っている指は強く握ったまま離したくなかった。疲れ果てたアストリットはロッシュの胸の中で眠ってしまった。
翌朝アストリットは起きると初めて見る場所に来ていた。驚いてベットの上でキョロキョロしていると突然ロッシュが目の前に現れた。アストリットは更に驚いた。ロッシュはそんな可愛い反応をするアストリットを抱きしめながら言った。
「おはよう御座います。アストリット」「は、はいおはよう御座いますロッシュ様」胸の中のアストリットは少し緊張しているようだ。そんな彼女が愛おしい。
アストリットは昨夜いつ眠ってしまったのか覚えていなかった。ただロッシュが自分を生かす事を選んでくれ、しかも大切だと言って抱きしめ手を絡めてつないでくれた事を一気に思い出し耳まで真っ赤になった。
ロッシュはそんなアストリットを嬉しそう見つめながら「アストリット、ここは帝国の城にある僕の部屋だ。僕は昨日自分の気持ちに初めて気がついた。もうあなたと離れたくない。だからここにアストリットを連れてきた。相談しなくてごめんなさい」
アストリットはロッシュに離れたくないと言ってもらえた事が想像以上に嬉しかった。胸の奥にしまったロッシュへの想いが本人に届くなんて想像した事もなかった。アストリットを見つめるロッシュの美しく深い濃紺の瞳からは溢れ出る愛を感じるほど情熱的にアストリットを捕らえている。そんな瞳で見つめられアストリットはロッシュの恋の魔法にどっぷりとハマってしまったのを感じた。
「いえ、ロッシュ様、、。ロッシュ様のお側においてもらえて嬉しいです」アストリットは正直な気持ちを伝え目の前にいる美しい魔法使いを見上げた。「アストリット,。僕は夢を見ているのかな?僕から逃げ回っていたアストリットが嬉しいと言ってくれるなんて、、、」ロッシュはアストリットを抱きしめた。「アストリット、この城は魔法がかけてある。この部屋にも魔法がかかっていてアストリットにも魔法がかけてある。僕はあなたを探す白魔法も、黒魔法も全て無効にしているから安心して。」
「……ロッシュ様、私は本当にロッシュ様の側にいても良いのでしょうか?」アストリットは聞いた。
「アストリット、愛しています。僕はあなたの存在を公表しようと思います。それはあなたには僕がいると言うことを知ってもらうためです。反対する者もいるでしょうが、僕からあなたを取り上げたらこの世界を消し去る魔法があることも言います。僕は脅しだと思われても構わない。アストリット、それでも辛い思いをさせてしまうかもしれないがあなたと生きたい。許してくれ。」
「ロッシュ様、、、」アストリットはなんて答えていいのかわからなかった。ただ叶うなら少しだけでも彼のそばにいたい。この恋心は既に止められないほど大きくなってしまったのだ。