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Memory5

組織は魔法少女をそこまで脅威だと思っていません。邪魔だとは感じていますが、忙しすぎて対処ができない状態です。なので多少はクロも自由に動けるんですよね。ぜひ学校生活を満喫してほしいものです。

「今から転入生を紹介するぞー」


目の下にクマができた、少しやる気のなさそうな男性教諭が生徒に向かってそう話す。


「女子か?」


「かわいい女子が来たってお前にはお近づきにさえなれないだろうよ」


「言いやがったな!」


転入生と聞いて教室内がザワザワと騒ぎ出す。


「あまりはしゃぐなよ。転入生を紹介したらすぐに授業に入るからな。影山、入っていいぞ」


教師がそういうと教室へ1人の無表情な黒髪の少女が入ってきた。


「影山クロです。えと、これからよろしくお願いします」


「女子だ! かわいい……」


「クロちゃん……か、いい響き………」


「おいお前ら、転入生の話は後だ。授業の準備しとけ」


再び生徒達が騒ぎ出すが教師が発言したことにより授業の準備を始めている。


「とりあえず影山は、双山の隣に座ってくれ。あー双山っていうのはあの白い髪の……」


「分かりました」


教師が言い終える前にクロは双山と呼ばれた少女………真白もといシロの隣の席へ腰を下ろす。


「来ちゃった♪」


そういい微笑みながら話すクロとは対照的に、シロの顔は青ざめていた。





☆★ ☆★ ☆★ ☆★ ☆★





「クロ、答えて」


クロは今、休み時間にシロに連れ出され、人気のないところへ連れ出されていた。

シロがクロを連れ出した時、「え!? 逢引き?」「表出ろってやつ?」「保健室か?」など様々な声が聞こえたが、シロもクロも無視した。


「答えてって……何を?」


「どうして学校に来たの?」


「年頃の少女が学校に通うってそんなにいけないことかな?」


「そうじゃなくて……」


「私もそういう年頃だからね。だから学校に通ったんだよ」


「そういう話じゃない!」


とぼけ続けるクロに、シロが少しイライラしながら問い詰める。


「何が……目的なの?」


「目的……あれ? そういえば何だったっけ?」


「とぼけないで!!」


今回ばかりはとぼけたわけではない。本当に忘れてしまっていたのだ。とぼけ始めていた時はまだ覚えていたのだが……。


クロは組織に脳を弄られた影響により、たまにではあるが部分的に記憶喪失に陥ることがある。さっきまでは本当にとぼけていたのでシロからは今回もとぼけているのだと勘違いされてしまったが。


「あ、思い出した。潜入捜査ってやつだ」


「……それは……私に言っていいことなの?」


堂々と潜入捜査だと話してきたクロに、シロは少しの疑いと、困惑の感情を持った。


「別にいいよ。失敗しても代わりはいるし、そもそも顔が割れてるんだから潜入も何もないしね」


そう話しているクロの表情が、少し曇ったのをシロは見逃さなかった。


(やっぱりクロも本当はーーー)



「………ねぇクロ、組織を裏切って私たちと一緒に……」


「それは無理。私は組織に従うことが楽しい。この前、マジカレイドイエローと戦った時も最高に楽しかった。だから私にシロ達の仲間になるって選択肢はない」


「クロ、本当のことを言って、本当はどう思ってるの? 櫻達には……他の魔法少女達には言わないから、私だけには本心を…」


「あ、もうすぐチャイムなるよ。遅刻はいけないよね。成績悪くなっちゃうし。そろそろ行こっか」


「待って、クロ!」


そういってクロは早足で教室へと向かってしまった。






☆★ ☆★ ☆★ ☆★ ☆★






放課後、クロと話そうと思っていたシロだったが、隣の席だったはずなのに、シロはクロのことを見失っていた。

周りにいつの間に帰ったのか聞いてみると、6時間目の授業中に早退してしまったらしい。シロはクロのことは気になってはいたが、根が真面目であるため授業に集中しきっていた。そのせいでクロが早退したことをついさっきまで忘れてしまっていたのだ。

結局シロはいつものメンバーで集まり、今日のことを話すことにした。


「皆は……どう思う?」


真白が他の魔法少女達に尋ねる。ちなみに彼女らは現在櫻の家に集まって話を進めている。両親からは友達を連れてきて遊んでいる。そんな風に見えているのだろう。


「私は何かやられる前にこっちが仕掛けないといけねぇかなって思う。それに茜から聞いたがこの前説得に失敗したんだろ? だったらもう私には関係ない。約束は無効。私はあいつと戦うぞ」


「私も正直あいつに対していいイメージは持っていないわ。この前真白と一緒にあいつと話した時から。だから来夏に1票ね」


来夏、茜と二人がクロと敵対することを選ぶ。


「私はどちらでも。多数決でいいんじゃない?」


「私もどちらでもいいです。八重さんと同じですね」


八重と束はどちらでもいいらしい。二人はクロと会話を交わしていない為、クロに対して良い印象も悪い印象も抱いていない。そもそも八重と束は身内以外には冷たい性格だ。八重などは元々冷え切った性格をしていたが、櫻達と過ごす内に段々と丸くなってきたのだ。そのせいか、八重は櫻達には気を許しているが、櫻達以外の人間には基本的には興味ない。束も同様だ。


「櫻さんはどうなんですか?」


束が櫻に問う。


「私は…‥何か事情があるんだと思う。茜ちゃんは本心から言ってたって言ってるけど……でも真白ちゃんが言うには本心じゃないって。もし本当に仲良くできる可能性が少しでもあるなら、私はそっちの可能性を信じたい。だから私は……真白ちゃん派に…なるのかな?」


少し自信なさげに櫻は言う。

結局クロを説得したい真白派が2人、クロと戦闘して決着をつけたい派が2人、中立派が2人となってしまった。


「これじゃ……いつまでも意見がまとまらない……」


「なら分かれて行動するって言うのはどうだ? 私と茜はあの黒い魔法少女を見つけたら戦いに行く。真白と櫻は説得。八重と束はご自由に…‥って感じでな。私と櫻、八重は魔力が完全には回復してないが、真白と束、茜は万全の状態だ。結局それぞれ1人ずつは動けるだろ? ならそれでいいだろ。」


「それじゃ皆バラバラになっちゃう……」


「別に縁切るってわけじゃない。しばらくの間だけだ。気にすることでもねぇだろ」


櫻が呟くが、その言葉は即座に来夏に切り捨てられる。


「このまま話しても埒があかないわ。一旦解散しましょ」


「そうね。それじゃ私は帰るわ」


「そうだな。私も帰るわ」


八重が5人に対してそう提案すると、来夏と茜は足早に櫻の家から出てしまった。八重と束も2人に続こうとする。


「待って八重ちゃん!」


「櫻、ここは一旦お互いに冷静になったほうがいいわ。焦らないで。ゆっくり考えた方がいい。2人を説得するのはかなり厳しいと思うわ。私は出来るだけ櫻の力になるから、今日のところはもうお開きにしましょ」


櫻が止めようとするが、八重はそう言って、束と共に帰ってしまった。


「どうしよう……」


「大丈夫。クロは私が説得する。絶対に」








☆★ ☆★ ☆★ ☆★ ☆★








時は少し遡り、シロ達が6時間目の授業を受けている頃、クロは早退するために闇魔法で高熱を出し、仮病を装っていた。現在クロは保健室で休んでいる。何故早退したいのか?簡単だ。シロにこれ以上詮索されたくなかったからだ。最初はシロと一緒に通えることにワクワクしていたクロだったが、いざシロと会うと、こちらをとても心配して、気にかけているのがよくわかる。クロはシロの前で嘘を吐き続ける自信がなかった。そもそも嘘も見破られているような気がする。だから逃げたのだ。学校に通っている以上、明日も明後日も顔を合わせることになる。そんなことはわかっているはずなのに、だ。


「気分はどう?」


保健室の先生が尋ねてきた。


「あの……早退はさせて貰えないんですか…?」


「仮病でしょ?」


「そうですけど…………え……? なんで……」


「私の苗字、双山って言うんだけど、聞き覚えある?」


「双山……?」


確かシロもそんな感じの苗字だったはずだ。もしかしてシロの義理の親なのだろうか?しかしそうだとしても何故クロが仮病だと分かったのか。クロは疑問に思う。


「そうだね〜。君の妹……姉? どっちでもいいか。双子の姉妹の苗字と同じ」


「シロ……真白の義理の母親ってことですか? でもそれと私の仮病がわかったことになんの関係が……」


どうして自分のことを知っているのか一瞬疑問に思うクロだったが、シロに聞いたのだろう、そう思って深くは探らないことにした。


「そうだね。仮病が分かったことについては……私は少し魔法に詳しくてね。だから君が闇魔法で高熱を出してることを見破ることなんて造作もないことなんだ。ちなみに魔法少女達の後見人をしてるのも私。組織に魔法少女達の素性が暴かれないように、彼女達の情報を操作してるのも私」


彼女は一体何者なのだろうか。組織のことや、魔法少女のことについて詳しそうな素振りだ。一般人なら組織について知らされていない。時々出没する怪人についての謎は明らかにされていないし、魔法少女についても、怪人から人々を守ってくれている小中学生、または高校生くらいの少女、と言った認識だ。そのせいで掲示板チャンネルなどでは度々怪人や魔法少女について考察されており、中には宇宙人説なんかも出ている。ともかく、彼女がただの保健の先生ではないということは確かだ。しかし、


「そんなにペラペラと話してもいいんですか? 私実は組織の人間なんですけど」


「それは君にも言える台詞じゃないかな? 私は魔法少女達の味方だよ? まあ私は君のことを信頼してるからね。報告しないんだろう? 私のことは」


「…………………」


一応幹部の男から「お前は物忘れが激しいから何かあったらすぐにこのノートに書け」と渡された魔法式のノートを渡されている。このノートは設定された人物しか内容を読み取ることができないノートで、仮に一般人やシロ達魔法少女に見られても問題はない。だから隠れて報告することはできる。だが、彼女が言った通りクロに報告するつもりはない。


「どうして信頼してくれるのかは分かりませんが、とりあえず貴女が私の敵だということは分かりました。それはともかく早退させてくれませんか?」


彼女から情報を聞き出したい気持ちがあったが、元々クロは組織にそこまで忠実な部下というわけではない。シロと放課後に顔を合わせたくない。そういった気持ちの方が強かったのだ。


「ん。仕方ないね。いいよ。担任には私から言っておくよ」


「一応私は敵ですが、いいんですね。早退させても。とりあえず、ありがとうございました。また明日」


そういってクロは保健室から足早に立ち去った。


「敵…か。別に私は君の敵だなんて言った覚えはないんだけどね」




連絡です。日曜日用事があるので投稿ができません。ただお盆なので月曜日、火曜日くらいは投稿しようかなと思っています。

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