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Memory3

「調子はどうだ」


「………少し体が怠いです」


クロは今、サングラスにスーツ姿の男と話していた。

彼は組織の幹部のうちの1人だ。

幹部は全部で5人いる。

幹部は魔法が扱えるが表立って街を破壊したり、魔法少女と対峙することはない。

魔法少女は確かに組織にとって厄介な存在ではある。だが最優先事項ではない。

幹部には色々と仕事があるのだ。

企業と契約して経済的な面での世界支配を進めたり、政治家や官僚となって国を組織に有利なように改造しようと日々励んでいる。

だからこそ、ある程度街を破壊するのには怪人を使うのだ。

しかし怪人を使っていても魔法少女にすぐに倒されてしまう。

そこで用意されたのがシロこと真白とクロだったりする。


「そうか。魔法少女について何か情報は?」


「すみません。記憶が曖昧で…」


確かに記憶が曖昧な時はあるが、今回は違う。

しかし、男は疑う様子はない。

裏切る可能性はないと踏んでいるのだろう。

それもそうだ。爆弾が仕掛けられている以上、簡単には裏切れない。

それにクロは組織とある契約を交わしている。

魔法少女はちゃんと倒すし、身柄も渡すがシロには手を出さないでほしいーーーと。

裏切るつもりなら、わざわざ条件など出したりする必要はないだろう。そう思われたのだ。


実際クロは完全には裏切ろうとはしていない。魔法少女側に付くことはクロの中ではもうないのだ。


「ふむ。少し脳を弄りすぎたか…」


男はそう呟いて部屋から退出した。


「やっと出ていったか‥」


クロからすると、幹部の男が目の前にいるという状況は緊張して仕方がなかった。

失言をすれば何をされるのか分からない。最初に街を襲撃した時も、怪人を見捨てたことを咎められた。


「これからどうすればいいのかなぁ…」


クロはひとりごちる。

クロとしては魔法少女達とは戦闘したくはない。

来夏と戦闘した時は少し楽しんでいたが、本気で魔法少女達を倒そうとは考えていない。

それに裏切りさえしなければ、基本的に幹部はクロの動向など気にしないだろう。

しかし、かといって全く魔法少女と戦闘しないわけにもいかない。


「とりあえず寝るか…」


今考えても仕方がない。

それにいくら魔力が回収できるとはいえ、体力は消耗しているし、必殺技の魔法を全て吸収したせいでさっきから体が怠いのだ。

クロはとりあえず体を休めることにした。





☆★ ☆★ ☆★ ☆★ ☆★






現在、櫻達は街に現れた巨大なゴーレム型怪人と戦闘していた


「『召喚・桜銘斬』!」


そう言って櫻は桜の柄が入った日本刀を亜空間から取り出す。

櫻は無属性魔法の使い手だ。魔法によって武器を作り出し、その武器を使って怪人と戦闘する。それが無属性魔法の使い手の戦い方だ。


「櫻!桜銘斬じゃあの怪人には効かない!」


八重が叫ぶ。

現在戦闘に赴いているのは櫻、八重、束の3人だ。

来夏はクロとの戦闘で消耗しており、真白と茜はこちらに向かって来ているが、まだ時間がかかりそうだ。


「えいや!」


櫻が一撃二撃と桜銘斬で攻撃を繰り返すが、ゴーレム型怪人はビクともしない。八重が水の弾を放ち、束が風魔法でそれを強化する形で櫻の援護をするが、これまたゴーレム型怪人には効かない。


「八重ちゃんの言った通りだね…桜銘斬じゃダメ。でもこれなら!」


櫻は桜銘斬を異空間へ収納し、別の武器を取り出す。


「『召喚・大剣桜木』!」


そう櫻が唱えると、櫻模様の入った黒い大剣が異空間から出現する。

櫻は大剣桜木を手に取りゴーレム型怪人に向かって両手で振りかざす、が。


「グォォォォォ!」


ゴーレム型怪人は大剣桜木を掴み、櫻に向かって拳を振りかざした。

櫻は大剣桜木を振りかざした影響か体勢が崩れていた。攻撃を避けようとして大剣桜木から手を離すが、体勢を崩していたせいか、大剣から手を離した途端その場にへたり込んでしまった。とても避け切れる状況ではない。


「櫻!避けて!」


普段は冷静な八重だがこの時は本当に焦っていた。


(……間に合わない!)


ゴーレム型怪人は拳を振り下ろす。もう間に合わない。八重はそう思ったが、


「風よ!」


咄嗟に束が強風を吹かせ櫻を無理矢理ゴーレム型怪人から引き離した。


「っありがとう束ちゃん!」


「櫻さん!危ないじゃないですか!危険な真似はやめてください!」


「櫻、束、私たちのそれぞれの魔法じゃあの怪人に有効な攻撃はできない……真白と茜が来るまで持ち堪えるしかないわ」


ひとまず安心する八重だったが、櫻はゴーレム型怪人の巨体を相手にできる武器を持っておらず、束の風魔法ではゴーレム型怪人に傷をつけることすらできない。八重も同じだ。


「八重ちゃん……“アレ”なら倒せないかな?」


「“アレ”なら確かにあの怪人を倒すことはできる。でも“アレ”は魔力の消費が激しいし、茜と真白もこっちに向かって来てる。私達は抑えることに集中したほうがいいわ」


八重の言う通り、真白と茜はこちらに向かって来ている。櫻がいう“アレ”以外は有効打がない状況だが、それも真白と茜が来るまで持ち堪えれば済む話だ。しかし、


「私はこれ以上街が破壊されるのを見たくない!」


櫻は心優しき少女だった。

街の住民は既に避難している。わざわざ魔力を大量消費してまで敵を倒そうとせずに、真白と茜の到着を待った方が合理的だろう。しかし櫻はそうはしない。

魔法少女として正義感の溢れる少女なのだ。

家一つ一つに暮らしがある。誰かの思い出がある。

そんな家が一つでも多く破壊されることが櫻にとってはとても耐えられなかった。

次の戦闘を考えれば、魔力の消費は避けた方がいいだろう。

しかし八重はそんな櫻だからこそ一緒に戦おうと思えたのだ。


「分かった。”アレ“を使うことにする」


そう言って八重は櫻と手を繋ぐ。“アレ”を発動させるためだ。



そして2人はこう叫んだ。


「「connection!」」


突如、櫻と八重の体が光り輝き出し、膨大な魔力が彼女らに集中する。

そうして二人は唱える。


「「友情魔法(マジカルパラノイア)・春雨!」」


2人がそう唱えた途端、ゴーレム型怪人の頭上に雲が現れ、大量の雨が降り出す。


「ア”ア“ア”ァ”ァ“ァ”ァ“ァ”ァ“ァ“!!」


ゴーレム型怪人が悲鳴を上げたとともにゴーレム型怪人の体が崩れ出す。


「束ちゃん!お願い!」


「了解です!」


そう言って束はゴーレム型怪人の周りに竜巻を出現させる。

そして、“春雨”を巻き込みながら、ゴーレム型怪人の体を切り刻んでいく。


「ァ“ァ”ァ“……ァ”ァ“ァ”ァ”」


次第にゴーレム型怪人は力を失って行き、地面に倒れ伏した。


「やった! 倒した!」


「でも大量に魔力を消費したから、私と櫻はしばらくはあまり戦闘に参加できなくなるわね」


「来夏さんも万全の状態じゃありませんし、しばらくは私と真白さん、茜さんで戦っていくことになりそうですね…」


「やっぱり茜と真白を待った方が良かったんじゃない?」


少し不安に思う少女達だったが、彼女達は臆することはない。

数々の死線をくぐり抜けてきたのだ。

そしてこれからもきっとそうだと信じて疑っていない。

誰一人欠けることなく、全員で戦って行けると信じている。



そして櫻の頭の中では、

その全員の中に既にクロも含まれていた。









友情魔法(マジカルパラノイア)


櫻と他の魔法少女のうち誰か一人が揃った時に使える必殺魔法。

真の友情が芽生えている二人にだけ発生する魔法のため、たとえば櫻とクロが行おうとしても発動されることはない。

ペアを組む魔法少女によって魔法の種類が変わる。

今回の場合は『春雨』。

『春雨』は敵に対して局所的な魔力の雨を降らせる魔法であり、『春雨』を食らった敵は無属性魔法の特性によって体を無に返される。さらに水属性の特性に闇属性の魔法を浄化する効果があるため、闇魔法によって体が構成されている怪人には効果覿面である。ただ、櫻の魔法の精度がまだ完璧ではないため、完全に無に返す・浄化することは現状では不可能である。

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