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Memory36

実は全然書いてなくて、少なくとも30話以降は全部ためてた分だったんですけど、これの次でストックが尽きるのでまた書かなきゃいけません。間に合わなければ次の投稿ないかもです。

  

「ふふーん! 私の砂の城が一番立派じゃない?」


「わ、す、すごいねユカリちゃん………」

 

「へぇ。手先が器用なんだねー」


「ま、まぁ私も? そのくらいできるもん」


「どうしてこうなった……」


海水浴をしにきたクロとユカリだったが、なんやかんやあって先日ちょっかいをかけた三人組と一緒に遊ぶ流れとなってしまっていた。 


一人は火属性の使い手で、茜に名義を貸している少女、 福怒氏 焔(フクヌシ ホムラ)で、

一人は雷属性の使い手で、来夏に名義貸しをしているギャル褐色の少女 魏阿流 美希(ギアル ミキ)

そして、一人は水属性の使い手で、八重に名義貸しをしているおさげの少女佐藤 笑深(サトウ エミリ)だ。


クロはこの三人との出会いを一人回想する。


 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 



『お姉ちゃん! 見ててね! 私のクローごぼぐぼげぼぐぼ』


『ユカリ!?』


『あんなところに溺れている子が! 私が助けに行かなきゃね! とうっ! 安心して! 私がきたからにはごぼぐぼげぼぐぼ』


『ほ、焔ちゃん!?』


『あちゃー。なんで泳げないのに助けに行こうと思っちゃったのかなぁ』





〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


とまぁ。そんな感じで、ユカリが溺れていたところを助けようとした焔という少女も溺れてしまい、最終的に二人ともクロが助けたのだが、その流れで三人との接点ができてしまったのである。


「よしっ! 私もできた!! 砂のお城!」


「ほ、焔ちゃん……それ、お城じゃなくて館じゃ……」


「ぷっ!」





(大丈夫かな? 正体バレてない……? うわぁどうしよう………どうしよう………あ、あんないかにも厨二病って感じの姿を晒しておいて、今更仲良く遊んでるなんて知られたら……………)


クロはユカリが焔達三人と交流を進める中、一人だけ横で棒立ちになりながら考えるこむ。

その姿はとても理知的に思えるのだが、実際は自分の黒歴史が三人の少女にバレていないかヒヤヒヤしているだけである。




「ーーー髑髏マークだ!」


(っ!?)


一瞬、髑髏仮面として活動していたことがバレたのかと思いヒヤリとするクロ。


「焔ちゃん、お城のお旗に髑髏マークって、ちょっと禍々しくないかな…?」


しかし、どうやら焔達が話していたのは城に立てる旗の模様のことだったらしい。


髑髏仮面として活動していたことは、一応既にユカリに知られている(というかユカリも協力者なため知っている)とはいえ、一応は家族だし、妹として見ている存在だ。


恥ずかしい部分も多少晒しても問題はない。だがもし、焔達に髑髏仮面をつけてカッコつけていたことがバレたらどうなるだろうか。


………笑いものにされるに決まっている。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



『アハハハハハ! 髑髏の仮面付けてごっこあそびって、アハハハハハ!』


『ほ、焔ちゃん、あんまり人のこと、ぷっ、笑っちゃ、ふふっ、ダメだよ、ぷっ』


『そういうお年頃かな? 可愛いね〜。ぷーくすくす』



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


脳内でクロのことを小馬鹿にする三人の姿が鮮明に映し出される。


いけない。彼女達にこのことを知られるわけには。


組織の最重要機密情報(そんなものはないが)よりも決して漏らしてはいけない情報だ。


(絶対に知られてはいけない。この秘密は、確実に隠し通す!!)


クロは一人で決意する。その熱意は、今世においてもっとも溢れていると言っても過言ではないだろう。

この熱意さえあれば、クロの秘密を死守することは可能だろう。そう思われていたが、


ポロっ


「あっ……」


砂浜に、髑髏の仮面が落ちる。

クロが三人にちょっかいをかけていた時に被っていた面だ。


どこに隠していたのか、その仮面はユカリのところから出てきた。


(あれ? ユカリが着ているのって水着だよね? どこに……)


「あー! この仮面は!!」


(まずい!! 気づかれた!!)


クロの、今世における最大の危機が訪れようとしていた。





☆★ ☆★ ☆★ ☆★ ☆★





「アストリッド様、機嫌がよろしいようですね」


「ん? あぁ。まあね。最近ようやく“下準備”が終わったし、それに、久しぶりに欲しいって思える子ができたからね。」

 

人間の少女は、『吸血姫(ヴァンパイア・ロード)』であるアストリッドに話しかけている。彼女はアストリッドの眷属で、アストリッドに仕え出したのは3年ほど前だ。


アストリッドの眷属になっているけれども、それは吸血鬼になるということではない。もちろん、人間を吸血鬼にすることは可能だが、それには少し時間をかける必要があるし、何より、アストリッドは吸血鬼を誇り高い種族だと思っている。


そのため、彼女が吸血鬼にするのは、忠実で、かつ自分が本当に気に入ったものだけなのだ。


つまり、人間の少女はアストリッドのお気に入りではない。

しかし、彼女はいつも、アストリッドに吸血鬼にしてもらうことを心待ちにしていた。三年間ずっと。


「アストリッド様、つかぬことをお聞きしますが、その欲しいとおっしゃっているのは、クロという魔法少女のことですよね? まさか彼女を吸血鬼にするつもりでは………」


「それは実際に会ってみないとわからないなぁ。その子と会った時に、私が運命を感じたら、まずは私に心酔させて、それから吸血鬼にしようとは思っているけどね」


そのアストリッドの言葉に人間の少女は嫉妬する。

自分が眷属にされたときは、最初から吸血鬼にする気などなかったと言われていたからだ。仮にその魔法少女が吸血鬼にされなかったとしても、それでも吸血鬼にすることを検討すらしてもらえなかった人間の少女にとっては嫉妬の対象となったのだ。

 

(確かに、アストリッド様の手によって今まで吸血鬼になったことがあるのはたったの三人。うち二人は10年仕えていたということから、半分お情け。アストリッド様の手によって吸血鬼になれる確率はかなり低い………しかし、それでも、私は…‥)


「バンもイザベルも殺されちゃったし、その魔法少女の他に、もう一人くらい吸血鬼にしてあげてもいいかもね」


「も、もう一人、ですか?」


人間の少女はその言葉を聞いて、食い入るように言葉を反芻する。


「そうだねぇ。与える名前は………んー何にしようかなぁ」


アストリッドはそうして、吸血鬼にする者に与える名を考えている。基本的にアストリッドが人間を吸血鬼にする時、その人間には人間だった時の名前を捨てさせ、新たな名前を名付けるのだ。人間の少女は、その名付けもとても魅力的に思えた。


(アストリッド様に忠誠を誓っている眷属はほとんど仕えて5年以上は経っている者ばかり…………数は少ないけれど、その中で吸血鬼にさせていただくとなれば、やはり3年しか仕えていない私は不利………いや、それでも……私が…‥! 私が吸血鬼となって! アストリッド様の片腕として……!)


アストリッドに吸血鬼にしてもらうため、


(私が、クロという魔法少女に取り入って、彼女を連れてくれば…………きっと、アストリッド様は私を吸血鬼へと進化させてくださるに違いない!)


そして、アストリッドに喜んでもらうために、人間の少女は一人決意する。




☆★ ☆★ ☆★ ☆★ ☆★





「元気にしていたかい? ドラゴ」


ごく一部のものしか知らない、秘密の地下牢で、ドラゴンのような見た目をした人型の魔族が、牢の中で鎖に繋ぎ止められ、拘束されていた。彼は『穏健派』のリーダーであり、人類側に協力していた魔族だ。

双山魔衣は、地下に通じる二つの入り口のうちの一つから、地下牢の目の前へとやってきていた。


「…………………………」


「何も語らない、か。人間に裏切られて、さぞショックだったろう? 自分は人間のために尽くしたのに、その結果がそのザマだ」


「…………………………」


「反応なし。私がからかって楽しんでいるだけって分かっているみたいだね」


ドラゴは特に語る様子はない。静かに目を閉じ、死んだかのようにただ只管に眠っているだけだ。


「からかいがいがないね。まあいいか」


牢の中にいるドラゴを揶揄うのに飽きたのか、双山魔衣は牢からさっていく。

魔衣の足音が遠ざかっていき、完全に牢に音が届かなくなったとき、牢の中にいた者が、目を覚ます。


「飯かと思えば、からかいにきただけか。ショックだなぁ。わしは別に人間に裏切られたことなど気にしとらんのだがの」


その様子は、とても鎖で拘束されている者とは思えないほど明るかった。

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