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Memory30

 

「魔法少女……っすか?」

 

「うん。当たり〜!」


メイド服の少女、クロコは、毒の魔法を扱う少女、ユカリと接敵していた。

クロコの後ろには、リリスから借りた大量の死体人形が控えている。


「魔法少女じゃ私らに勝てないっすよ」


「あ〜! ふぉーすれべるってやつ?」


「あぁ。知ってるんすね。そうっす。魔法少女は基本的にforce level1ってのは知ってるっすよね? それに対して魔族のは最低でもforce level3。魔法少女じゃ逆立ちしても勝てないっすよ」


「知〜らない♪」


メイド服のクロコが丁寧に解説を挟むが、それに対してユカリは耳を傾けている様子はない。


会話を挟める相手ではないのだろうと、そう判断したクロコは、リリスから借りた死体人形を使役し、ユカリに向かわせようとするが………


「ん…? 反応しないっすね……」


しかし、死体人形が反応する様子はない。


「後ろのお人形さん達なら、毒でもう倒しちゃったけど…?」


ユカリの毒魔法は、生者、死者関係なく、あらゆるものに対して作用する。

その毒の作用は、毒以外にも薬になったりと、色々な効果を持っているのだが、それについては、今は関係ないだろう。


「雑魚狩りは得意みたいっすね……」


「ふ〜ん? 弱いものイジメしかできないと思ってるんだ?」


「私のforce levelは3ですが、どちらかといえばforce level4にかなり近い部類のforce level3っすよ」


「だから何?」


言いながら、ユカリは魔法により、大きな鎌を作り出す。

その鎌の形状は、クロの還元の大鎌と酷似している。


ただ、その色は紫色をしていて、毒々しく、いかにも死神が持っていそうなほどに禍々しい。


「なるほど………クロっちの関係者ってことっすね」


そして、その鎌を見たことにより、どうやらクロコはクロとユカリが関係していることに勘づいたようだ。

クロコはリリスの学校襲撃の場に居合わせていたため、クロが大鎌を使う場面を見ていたのだ。


「お姉ちゃんは……返してもらうから」




☆★ ☆★ ☆★ ☆★ ☆★




「アスモデウス……よくも私の邪魔をしてくれたわね。もう少しで奴らを始末できそうだったのに……」


「『過激派』の連中のことか。俺としてもあいつらとは相容れない。始末してもよかったんだが、あいにく、今はそんな気分じゃなくてな」


リリスの戦力は、ヒヨリやカゲロウ、散麗を含めた大量の死体人形に、魔法少女である深緑束。加えて鷹型の異形。


対してアスモデウスは、その身ただ一つ。


もしこの場に第三者がいれば、間違いなく勝つのはリリスだと答えるだろう。

実際、アスモデウスがリリス達に勝つ術はない。


だが、元よりアスモデウスはリリス達に勝つつもりはない。

クロの奪還。目的はただそれだけだ。


リリス達を足止めしている間に、ユカリにクロを取り戻してもらうのが狙いだ。


元々リリス達は他の連中と抗争していたため、本来ならアスモデウスもクロの奪還に向かうつもりだったのだが、その間にリリス達が戦闘を終えてアジトに戻ってきてしまわれては厄介だ。


そのため、アスモデウスが一人で陽動をすることにした。


「大方、あの魔法少女の奪還が目的でしょう? まだ生きてるって望みに賭けてるのね」


「昔のお前なら真っ先に殺していただろうが、今のお前を見ていると、生かしていそうだったからな」


「せっかくわざわざ一人で立ち向かってきたんだし、教えてあげるわ。あの魔法少女の子は生かしてあるわ。まあ、そんなことわかったところで意味ないと思うけれど」


リリスとしては、アスモデウスに自分達の基地を探し当てることは不可能だと思っている。それに仮にアジトがわかっていたとして、今のアスモデウスに何ができようか。


「束。前と同じように、お願いね」


「はい。禁忌魔法(マジカルパラノイア)ーーー」


「させるか!」


束が禁忌魔法(マジカルパラノイア)を使おうとするが、アスモデウスは高速で動き、束に電撃を加える。


「うっ………」


「同じ手は二度もくらわん」


電気ショックにより、束の体は地面に倒れていく。


「流石の速さね。でも、こちらには魔族が二人。いくら貴方のforce levelが5でも、force level4を二人同時に相手するのは厳しいでしょう?」


言いながら、リリスは死体人形の数体を手で操り、その形を剣のようなものに変えて行く。


「元よりお前達に勝つつもりはない」


「時間稼ぎのつもり? あっはは! ばっかみたい。そう簡単に私達のアジトを見つけれるとでも?」


リリスはアスモデウスが時間稼ぎをしようとしていることに気づき、馬鹿にして笑う。彼女の中で、絶対に自分達のアジトを見つけられることはないという自信があるのだ。


「お前達にゴブリンが味方をしている。それだけで、大体お前が拠点にしそうな場所はわかってくる」


「………………ゴブリンが私に味方をしたってこと、知ってるわけね」


「これは推測に過ぎないが、お前達のアジトは地下に作ってあるんだろう? ゴブリンの地属性魔法で、誰にも気づかれないような場所にな」


金属音が響く。

剣と剣がぶつかり合う音だ。


それも、リリスとアスモデウスの。


「図星だったようだな」


「いつのまにそんな武器調達してたのかしらねぇ!? ふふっ、いいわ、貴方を倒して、すぐにアジトに戻る!」





☆★ ☆★ ☆★ ☆★ ☆★






櫻達がミツルの話を聞いている中、コソコソと小声で話す少年が二人。


(なんだか、すげぇ話を聞いちまった…‥)


(辰樹、すまん。正直俺も、この話を聞いて動揺していてな………。少し頭の整理をさせてくれ…)


辰樹と朝太は、魔法少女の………正確には真白の跡をつけて会話を盗み聞きしていた。あの学校襲撃の際、屋上にいなかった櫻達が魔法少女だと朝太が推測したからだ。


その際、保健の教師の双山魔衣も何かと彼女と交流しており、また、わざわざ名乗り出て危険な校舎内に櫻達を探しに行ったため、何かしらあると思った二人は早速彼女と接触して探りを入れようとしたのだが、


『君達は櫻達が魔法少女だと気づいているんだろう? 隠しても無駄だよ。あぁ、安心してくれたまえ。別に危害を加えるつもりはない』


と、一瞬で辰樹達の狙いについて看破した。


ただ、そのおかげもあってか、双山魔衣から奇妙なアイテムを貰うことに成功したのだ。


『これは透明マントってやつで、その名の通り被れば周りからは透明に見えるんだ。本来は大人一人しか入れないサイズなんだけど、子供の君達なら二人分入ることができるだろう。せいぜい有効活用してくれたまえ』


と、そう言いながら二人に透明マントを渡してきたのだ。


そしてその透明マントを使い、彼女達を尾行して話を聞いていたのだ。

当然、魔族のことや、政府のことについても聞いてしまった。


「やっぱり、政府は信用できない。クロのことも隠蔽してるし…やっぱり悪い奴らみたいだ」


そう、政府はクロの件を隠蔽している。

というのも、クロが攫われた後、学校側が世間に攫われた生徒のことを公表しようとしていたのだが、その際、クロの個人情報を調べているうちに、色々と不可解な点を見つけた。


それに気づいた政府が、権力にものを言わせ、中学校から一人の生徒が攫われたという事実を無かったことにしたのだ。


世間では中学校に怪人が攻めてきたが、政府と政府公認の魔法少女によって、撃退に成功した。という事実だけが残っている。


実際には政府は動いていないし、魔法少女に関しても誰一人として公認の魔法少女は動いていなかった。


しかし、屋上にいた生徒達は殆どがクロが鷹型の異形に連れ去られる様子を見ている。

そのことをSNSなどで拡散される可能性もあるため、隠蔽などうまく行くわけないと、そう思うかもしれないだろう。


だが、政府は全てを揉み消した。

というのも、怪人関連の話題になると、一般人はそれほど深くは触れてはいけない、というのが暗黙のルールなのだ。


10年前に魔法少女が登場し始めた際、まだ魔法少女についての法を定めていなかったため、たくさんの少女達が戦場に現れ、また、たくさんの魔法少女が散っていった。


そんな彼女らを見て、SNSでは賛否両論ではあったものの、賛成派による魔法少女への応援や、魔法少女のランキングなど、ネット上で魔法少女がエンタメ化していく現象が起こってしまったのだ。


それを見た無垢な魔法少女達は、どんどんと戦場に赴き、一人、また一人と散っていった。


そんな負のスパイラルを見て、政府が魔法少女の戦闘の禁止、そして、魔法少女のエンタメ化の禁止を行ったのだ。


もちろん、それでもまだ魔法少女をエンタメとして楽しむ者たちは存在した。


だが、そんな者たちは、なぜか、ことこどくネット上から姿を消したのだ。


世間ではこう囁かれるようになるーーー政府の刺客によって、暗殺されてしまったのではないかーーーと。


その結果、魔法少女について触れづらい状態になり、SNSでの発信も皆慎重になっているのだ。


唯一、掲示板での怪人の考察は未だに検閲されていないのか、機能しているようだが、それでも政府非公認の魔法少女について話したりした掲示板は存在を消されている。


真保市立翔上中学校の生徒達は、政府に救出され、そしてしばらくは学校を休みとなった。ただ、それだけ。生徒は全員無事ということになった。


それを信じる者もいるが、大抵は政府によって隠蔽されたのではないか、なかったことにされたのではないか、と感じている。


だが、誰もクロを助けようとは思わない。

怪物達の戦いに、巻き込まれたくはないし、それに、クロと親友と呼べるほどの関わりを持った者は誰もいない。中にはクロのことを心配する者もいたが、しかし何かアクションを起こすつもりもない。


ただ、一人を除いて。


「やっぱり俺は……‥クロを助けたい!」


そして、辰樹はこう、高らかに宣言した。







「今、何か聞こえなかった!?」


「ここのセキュリティは結構厳しめだったと思いますが……」


「誰だ!!」


「櫻! 気をつけて! 敵かもしれないわ!!」


「(辰樹の声だったような……?)」





少々声は大きかったかもしれない。  

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― 新着の感想 ―
[気になる点] もしこの場に第三者がいれば、間違いなく勝つのはアスモデウスだと答えるだろう。 実際、アスモデウスがリリス達に勝つ術はない。 恐らく1度目のアスモデウスがリリスと入れ替わってると思いま…
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