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Memory164


「させるかぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」


来夏の命は、ルサールカによって刈り取られるかのように思われた、が、

来夏とルサールカの間を、一瞬にして“何か”が通り過ぎる。


「朝霧来夏をやらせはしない!! お前の相手はこの魔法少女マジカルドラゴンシュートスター様がやってやる!! かかってこい!かかってこい!」


突然の乱入者。それは、2人で1つになれば最強の魔法少女、マドシュターだった。


「……分身はどうしたのかしら? 貴女には2人分寄越したはずなのだけれど」


「どっちも倒したぞ! 厄介だったけど、なんとかなった!! 余裕!余裕!」


「………どうやら、2人じゃ足りなかったようね。残念。せっかく苦労して用意したのに、2人で満足してくれないなんて、貴女とっても我儘なのね」


どうやら、ルサールカの相手はマドシュターがするつもりらしい。現状来夏では、ルサールカに勝てそうもないので、ありがたい限りだ。


そして……。


「おっと、忘れるところだった、これを!」


マドシュターから来夏に、1つの物が投げられる。……無線だ。

元々マドシュターは2人で1つの魔法少女だ。そのため、合体がとければ2人になってしまう。その時のために、あらかじめマドシュターは二つ分の無線を持たされていたのだが、来夏が無線を破壊されたのを見て、その一つを渡すことにしたのだ。


「ここは任せて先に行けってやつか……。悪いな、ルサールカの相手は、任せる」


本当は自分がルサールカの相手をしたいと考えていた来夏だったが、櫻の危機と、自身の現状を見れば、このままルサールカの相手をし続けるのは得策ではないだろうと判断した。また、状況が現状ではわかっていないため、一度無線で確認する必要があるだろう。そう思い、来夏は先ほどマドシュターから受け取った無線を取り出し、指令班とコンタクトをとる。


「あーあー」


『……来夏か! よかったよ……どうやら間に合ったみたいだね』


無線で出てきた相手は、どうやら古鐘のようだ。


「ああ。魔法少女マジカル………ドロロンシューズスターだっけ? に助けられた」


『うん、多分あってるよ。君との連絡が取れなくなって、すぐに手の空いている子に救援に向かわせようと思ってね。ただ、君がやられている可能性も考えると、君より上の実力の者でないと、かえって犠牲者を増やすだけだと思ったからね。彼女の手が空いていて助かったよ』


「それで、私はどうすればいい? 櫻達と合流した方がいいと思ってるんだが……」


『……驚いた。話が早くて助かるが、どうしてそんな判断に? まあいい。とにかく、来夏、君には組織のアジトに向かってもらう。詳細は省くが、どうやら君がいないと勝てないらしい。勿論、アジトに向かうための足は用意してあるよ』


「そうか、それで、私はどこに向かえばいい?」


『地点Fだ。そこにホークがいる。話は通してあるから、彼に運んでもらってアジトまで行くといい』


「ああ、わかった!」




★☆ ★☆ ★☆ ★☆ ★☆




櫻とシロと共に、目の前の怪人の猛攻を耐え続ける。

来夏がくるまでの辛抱だ。


攻撃はしない。ただ、敵の攻撃を相殺するためだけに魔法を使う。そうしなきゃ、いたずらにこちらの体力が削られていくだけになってしまうから。


「くっ……」

『もーっ! 来夏は何をやってるのよ!! このままじゃ私達全員仲良くあの世行きよ!』

『落ち着いてください茜さん。騒いでますけど、本当はそこまで焦っていないんでしょう?』

『みたいね。なんとなくでしかないけれど、束と、茜からは、そういう感情を感じない気がするわ』


茜も束も八重も、本当の意味で、現状に対して危機感を抱いているわけじゃない。


理由は単純だろう。今まで戦ってきた仲間と、皆一つになっているんだ。俺だって、櫻と融合した時は、負ける気がしなかったし、不思議とネガティブな感情も湧かなかった。4人での融合ともなれば、心強いことこの上ないだろう。それに……。


「皆やっぱり、来夏のこと信頼してるみたいだね」


来夏は必ずきてくれる、皆そう確信しているんだろう。そこには、今まで培ってきた絆が、確かにそこにあるからこそ誕生したものなんだ。


「クロちゃんも、同じでしょ?」


「当たり前だよ。私が外で初めて戦った魔法少女だから。来夏の強さはよく知ってる。厄介なことこの上ないよ」


俺もまた、櫻や来夏達のことを信頼しきっている。今までずっと見てきたが、彼女達の絆は本物だ。彼女達といれば、負ける気なんてしない。

シロといれば、不安も何もかも、吹き飛ぶ。


最初から、こうできていればよかったな、なんて、今更ながら感じてしまう。

そうすれば、シロを苦しめることもなかっただろうし、俺も、もっと、やれることはあったはずだ。


「ふふっ、皆と一緒にいるから、怖くないや」


「櫻達は、ずっと一緒に戦ってきたもんね。私も最初は、櫻達の連携の厄介さに困らせられてたし」


「そうだね。でも、その時よりも、私達はもっと強くなったよ。だって、クロちゃんが一緒に戦ってくれるんだから」

『まあ、クロが仲間になってくれるまで、色々あったけど、結果的にこうなってよかったわ』

『ですね』

『私も、クロも真白も……大切な家族だから。今こうして、隣に立ってくれているのが、嬉しくて仕方がないわ』


ああ、そうだ。この戦いが終わったら、ちゃんと、皆と……。

シロと、向き合おう。


長い長い回り道だったけど、今からでも、十分やり直せる。


「ありがとう、皆。あとは……」


怪人の腕が飛んでくる。こうして俺達が会話している間にも、怪人の動きは止まらない。

だから、怪人の攻撃を迎撃するか、回避するか、そのどちらかを取る必要がある。

俺は咄嗟に、魔法を放とうと、つまり、迎撃の方向で動くことにしたが……。


「櫻、クロ、………来た」


俺が怪人の迎撃を行うよりも早く、怪人の腕に電撃が走り、俺への攻撃をキャンセルさせる。


「悪い、時間かけた」


目の前にいる怪人を倒すための、最後のピース。

朝霧来夏。彼女が、到着した。


「来夏ちゃん、おかえり」


「……ただいま? なんでおかえりなんだ?」


「うーん? なんとなく。なんだかもう、皆一緒にいて当たり前の存在みたいになってるっていうか………。とにかく、あの怪人を倒すには、来夏ちゃんの力が必要なの。だから、手を貸して!」


「わかった」


来夏と櫻が融合する。それに対して、危機感を覚えたのか、怪人は攻撃を加えようとする。だが、させない!


「シロ!」


「わかってる!」


俺とシロで、怪人の攻撃を食い止める。2人の邪魔はさせない。


「よし! できたよ! あとは、2人が!」


来夏と融合を済ませた櫻が、こっちに向かって手を伸ばしてきている。

怪人の頭の上の球体を全て光らせるには、同時攻撃、それも、0.1秒のラグも許されない。となれば、全員で櫻と融合して、全属性の同時攻撃を加える必要があるだろう。つまり、櫻の融合には、俺とシロも加わる必要がある。


「クロ、先に…」


「……シロ、もう置いて行ったりしないよ……。一緒に、行こう」


今度はもう、離れたりはしない。今度こそ、ずっと一緒に。


「……そっか………。わかった。それじゃせーので、櫻の元まで走ろう。私は左手を掴むから、クロは右手を掴んで」


「わかった」


「いくよ? せーの!」


同時に櫻の元へ駆け寄り、それぞれ櫻の手を取り合う。


「わーモテモテだー!」

『っバカ早くしろ!!』


珍しく来夏が焦った声を出す。それもそうだろう。俺とシロが怪人の攻撃を抑えるのをやめた状態だから、今は無防備になってしまっているのだ。だけど……。


「大丈夫だよ。皆一緒だから」


間に合う。いや、間に合わせる。

俺とシロの魂が、櫻に取り込まれる。


全員の魂が、一つに……。


怪人が櫻に対して攻撃を加えようとするが、櫻の眼前で止まってしまう。


「無駄だよ、怪人さん。貴方がどんな攻撃をしようと、もう私達は倒せない」

『恨むなら、私達と出会ってしまった自分の不幸さを恨むことね!』

『茜さん、はしゃがないでください。うるさいですよ』

『そうね、ただでさえ大人数なんだから、静かにしないと櫻の鼓膜が破れてしまうわ』

『鼓膜、破れちゃうの?』

『シロ、多分大丈夫だと思うよ。流石に。茜の声、別にそんなうるさくはないから』

『……いや、そもそも私達の声って、鼓膜を破るとかそういう次元の話なのかよ……』


「あははっ! 皆一緒って感じがして、なんだか、私今、物凄く幸せな気分だなぁ……ようやく皆で一つになれたって感じがする」

『ちょ、ちょっと櫻? 流石に恥ずかしくないの?』

『茜さん、櫻さんはそういう人ですよ。こういう恥ずかしいことをさらっと言える人たらしなんですよこの人は。クロさんだってあっさり絆されましたからね』

『あっさりって、結構抵抗しちゃった気がするけど……』

『チョロさで言ったら、真白の方が上じゃなかったか? 割とあっさり落ちてた気が…』

『ちょ、チョロくなんかない! クロの前で捏造しないで!』

『私は真白のチョロいところもかわいくて好きよ』


でも、櫻の言う通りだ。

ようやく、一つになれてた気がする。


やっと、皆の輪に入れた気がする。


ああ、なんだかもう。

今までのこと、全部無かったことにはできないけど。


ようやく、シロと向き合えるような気がする。


「もう少し、このままいたいような気もするけど。地上の皆が頑張ってくれてるし、そろそろ行こっか」

『そうね、私達の絆パワー! 見せてやるわよ!』

『茜さんも大概恥ずかしいセリフを吐きますね……。まあ、そういうの、私も嫌いじゃないですよ』

『そうね、正真正銘一心同体。私達の力、ありったけをぶつけましょう』

『あー、恥ずかしいけど、私も、皆のことは大好きだし、絆パワー、見せてやりたいとは思ってる。だからやるぞ! クッソ……恥ずかしい……』

『来夏……。よ、よし……。私も……皆のこと、す、好きだから……! 付き合いは1番短いかもしれないけど、き、絆パワーを見せつけてやろう!』

『来夏もクロも、無理しなくてもいいよ。もう皆わかってる。なんとなくだけど、皆の気持ち、伝わってくるから。だから後は、全力をぶつけるだけだよ』


恥ずかしい。今は融合してるからあれだけど、実際は顔真っ赤にしてるところだっただろう。


でも、今この瞬間が、心地よくて、たまらない。


「決めるよ! 最終奥義!!」


『『『『『『「マジカルパラダイス!!」』』』』』』


目の前の怪人に、トドメを刺す。

皆の絆の力がこもった、強烈な一撃。


それは、巨大な巨大な正真正銘最強の怪人は……。


俺達の……私達の……絆の力によって、跡形もなく、消滅した。

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