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Memory159

「どうして……たたかおうとするの?」


カナは、ミルキーに対して問いかける。その問いに、意味などない。ただ純粋に、どうして争おうとするのか、気にんなっただけだ。


「楽しいから、じゃだめかな?」


「……へぇ。魔族って、そういう自分勝手な理由でしか動けないやつばっかなわけ?」


ミルキーの回答に、光は馬鹿にしたように言う。

別に光も意識してそうしているわけではない。単にそういう気質だというだけだ。


「誤解があるなぁ。別に、人間も魔族も、本質的には変わらないと思うよ。人間も魔族も、ヤバい奴はヤバいって。カナちゃんだっけ? キミを造って弄んだのだって、結局は人間だったでしょ? 魔族は関与してない。魔族がやばく見えちゃうのは、単純に、人間界にやってくる魔族は人間界に侵略しよーぜって考えの魔族が多いからそう感じるだけだよ。穏健で争いを好まない魔族は、魔界から出ることはないからね」


「どうでも良いわ。やるならはやくして」


光は興味なさそうにミルキーの言葉を流す。彼女からすれば、シロ以外の人間は正直どうでも良い。魔族がどうなろうが、人間がどうなろうが、知ったことじゃない。シロが幸せであれば、それで自分も満足。そんな人間だ。だからこそ、敵に絆されることはない。


「なるほど。キミは相手にしていて面白くなさそうだなぁ」


ミルキーは光への興味を失う。今この場で光に揺さぶりをかけることはできず、ミルキーが楽しめる要素はないと踏んだからだ。

ミルキーは全ての防御魔法を無効化する、魔封じの槍を構える。


「閃魅光。反射の魔法。でも、この槍の前では無意味だよ!」


ミルキーは全速力で光に槍を突き刺す。

が……。


「はぇ……?」


「ふーん。無意味ねぇ……。なら、どうしてるなに槍が届いてないの?」


ミルキーの攻撃は、閃魅光には通らなかった。


「な……んで……」


「その程度で、るなの“反射”を無効化できると思わないでほしいわ」


閃魅光の“反射”は、防御魔法ではない。


「それじゃあ、次はるなの番だから」


どんな攻撃も跳ね返す。カウンター型の、攻撃魔法なのだ。





☆★ ☆★ ☆★ ☆★ ☆★






おそらく、このアジトへと来ているだろう櫻と合流する。

話はそれから…‥と考えていたのだが……。


「あら意外。怪人化せずに、まだ理性を保ったままだなんて」


「ルサールカ……」


せっかく脱走したっていうのに、ルサールカに見つかってしまった。けど、櫻はもうすぐそこまで来ているはずだし、この場所に来るのも時間の問題だ。今すぐ戦闘に入らず、会話でなんとか引き延ばして、櫻が来るまでの時間を稼ぐしかない。


「残念だったな。こっちはとっくに怪人化なんて克服してる」


「もし本当にそう思ってるのだったら、哀れだと思うわ」


ルサールカは心底馬鹿にしたような目で俺のことを見てくる。

信じていないのか、いや、こいつは俺のことを、実験動物としてしか見ていない。いや、実験動物どころの話じゃない。


ルサールカにとって、俺はいつでも捨てることのできるおもちゃ。価値なんてないんだろう。


「そう思うなら勝手に思っておけばいい。不本意だけど、櫻の魂を一部奪った。だから、怪人化することなんてない」


「それは魂の話でしょ? 確かに、おかしいとは思ってたわ。怪人強化剤(ファントムグレーダー)を数回に及んで使用したのにも関わらず、魂には何のダメージもないなんて。でもね、魂は関係ないの。怪人には、必要のないものだから。どちらにしろ、貴方の体はもう怪人化一歩手前。放っておいても、もう手遅れだわ」


俺の体が、手遅れ…?

……いや、いい。考えるな。ルサールカの言うことに、耳を貸す必要はない。


俺は生きて帰る。シロに言わなきゃいけないことがある。それまでは、死ねない。


「おしゃべりに夢中になってるところ悪いけど、後ろには気をつけた方がいいよ」


それに、時間は稼げた。後は……。


「奥義!! 桜!」

『嵐!』

「斬!!!」


下方から、床を突き破るようにして、ルサールカを攻撃する、櫻の姿が現れる。


「っ!」


ルサールカは櫻の攻撃に、咄嗟に後方へ回避する。が、その額には汗が浮かんでいる。完全に予想外だったんだろう。俺との話に夢中だったのか、櫻が完全に気配を消していたのか。おそらく前者だろう。一度融合したからかもしれないが、少なくとも俺には櫻の気配を感じとることができたのだから。


「お待たせ」


「待ちくたびれた」


俺は櫻と並び立つ。ここからは、2対1だ。


「真白ちゃんに内部を探ってもらってる。だから、私達はとりあえず足止めに徹する」


「わかった」


シロも来てるのか。

なら、安心だ。


もしも、もしも俺が手遅れなんだとして。


アジトで怪人化しそうになっても、怪人化する寸前に、シロに今までのことを話すことはできるだろうから。


「行くよ、クロちゃん」


「任せて」




☆★ ☆★ ☆★ ☆★ ☆★





「よりによって、私のところに来ちゃうんだ……」


ボロボロになりながらも、そう言葉をこぼすのは、紫色の髪をツインテールにした、小柄な少女、ミリューだ。彼女の体には抵抗した後が残っているが、しかし当の彼女にはもはや抵抗する能力は残っていなかった。


「ごめんなさいね。貴女の存在を無視するわけにはいかなかったの」


ミリューをここまで追いつけた女の名は。


「ルサールカ……」


「安心して。命までは取らないでいてあげるわ。その代わり………」


ルサールカは、ミリューの胸元に触れる。ミリューの中から、ルサールカは、何かを探るようにして、魔力を這わせる。


やがて、何かを見つけたのか、ルサールカは満足したかのようにミリューから手を放す。


「そ……れは……」


「知ってるでしょ? 貴女の体を乗っ取っていた、俗に言う、貴女の偽物の魂。せっかくだし、最後まで使い潰しておこうと思ったの」


ルサールカは、いつの間にかこの場にやってきていた、いや、持ってきていたであろう、少女のような容姿の、人の形をした魂の入っていない抜け殻に、ミリューから抜き取った魂を、入れ込む。


「元々は、クロがダメになった時用の保険としてとってあった体だったの。けど、もう必要ないと思ったから、使わせてもらったわ」


続けて、ルサールカは怪人強化剤(ファントムグレーダー)を取り出し、その人形に差し込む。


「面白いものがみれると思うわ。魔法少女の……人間の怪人化の瞬間を、ね」




☆★ ☆★ ☆★ ☆★ ☆★




特別召喚(オーダーメイド)龍方鳳凰砲(ドラゴンバズーカ)


マドシュターは、敵を一網打尽にするべく、召喚魔法を用いる。少女の頭上から、射出口に龍の頭がついたバズーカが出現する。


「あら、物騒ね」


ルサールカはマドシュターのバズーカを見て、余裕そうにそうこぼす。彼女は逃げることもせず、まっすぐにマドシュターを見つめている。


「余裕ぶっこいていられるのも今のうちだ! 今に見てろ! 貴様の脳天をこのバズーカが撃ち抜いてやる! 撃つぞ! 撃つ撃つ!」


ドラゴンバズーカが、放たれる。


「バズーカバズーカ!!」


が……。


「何かしたかしら?」


ドラゴンバズーカは弾き飛ばされてしまった。少なくともマドシュター視点では、ルサールカが何かしたようには見えなかった。彼女は、直立不動で、その場から一歩も動かず、それでいて、手足どころか、その髪の毛一本に至るまで、一切微動だにしなかったのだから。


「なんだなんだぁ?」


これには流石のマドシュターも訝しむ。しかし、マドシュターは以前にも同じような経験をした覚えがあった。

それは…。


「お前、“反射”の魔法を使ったな?? 私にはわかる! 何たって私は、最強だからな! 最強最強!」


「正解よ。話がはやい子は、嫌いじゃないわ」


「“反射”の対処法は知ってるんだぞ! 知ってる知ってる!」


マドシュターは、今度は『王冥斬』という大剣を召喚し、ルサールカに急接近する。


「鬼龍術・捌きの王(サバ・キング)!!」


ルサールカは咄嗟に“反射”の力を使うが、マドシュターの捌きの王(サバ・キング)の前では、“反射”であろうと無意味。“反射”の魔法ごと切り刻み、強制的に“反射”を無効化する。


「あら?」


ルサールカが驚いたような顔をする。想定外だったのだろう。“反射”はやぶられないだろうと、そう踏んでいたのかもしれない。しかし、“反射”が破られてもなお、ルサールカの余裕な笑みは消えることはなかった。


「そう、理解したわ。貴女は、適当にあしらえるような子じゃないのね」


瞬間、マドシュターの背後から、何者かが忍び寄る気配がする。


「!? ドラゴンジャンプ!!」


マドシュターは咄嗟に上方へと高く飛ぶ。背後からの攻撃に無理に対処するより、上方へ逃げつつ、背後から忍び寄った影の正体を把握することを優先したのだ。

しかし、背後の影の正体を見たマドシュターは、驚愕した。


「お、同じ奴が……アバババ! こ、これはなんだ! ば、バグってる! バグだバグだ!!」


「あら、気づかれたのね。残念。もう少し上手くやりたかったわ」


「遅かれはやかれ気づかれていたと思うわ。それに、気づかれても支障はない、でしょう?」


そこには、同じ容姿をした、全く同じ声の、2つの影。


「知っているかしら? 組織の幹部の数は、合計で5、なのよ?」


2体のルサールカがいた。

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