Memory155
「クロちゃん、大まかな流れは、作戦通りに行くよ」
『……わかった。やれるかは分からないけど……やってみる』
当初の作戦通り、か。本来ならば今回の作戦は、櫻が茜と融合する予定だった。茜を潜めておいたのも、既にミリューが櫻と茜が融合できることを知っていたため、直前まで融合を悟られないようにするためだ。つまり、本来であれば茜がやるべきだったことを、代わりに俺がやる形にはなる。
「召喚・桜銘斬!」
途中までは、いつも通り櫻に戦闘してもらう。けど、ミリューにトドメは刺さない。手加減して、あたかも貴方を倒すつもりはないという意思表示をする。
ミリューが武器を用意する。それを櫻が『桜銘斬』で弾き飛ばす。
これを繰り返し、ミリューが逃げそうになったら、その度に止める。
『影』という少年は“ブラックホール”内に幽閉し、仮に“ブラックホール”内から干渉しようものなら、俺が“ブラックホール”内に干渉して『影』の動きを止める。
こうすることで、ミリューは櫻に勝てず、かつ逃げることもできないという状況に陥る。
ちなみに、櫻と融合したことで、“ブラックホール”を経由した移動についても、かなり強化されているため、翔上市内であれば、仮にミリューが逃げたとしても追いかけることはできる。
「クソ……攻撃が通らない…!」
加えて、俺と融合したことにより、櫻の周囲、というか、身体そのものに、簡易的な“ブラックホール”が常に展開されているようになっているため、ある程度の魔法攻撃は全て吸収し、無効化することができる。更に、“ブラックホール”内には『影』という少年を幽閉したままにしてあるので、ミリューが櫻に攻撃すれば、『影』はそれ相応の魔法の対処に追われることとなる。
ミリューにとって、完全詰みの状況を作り出す。
全て、作戦通り。
「大人しく降参して。命までは取らないから」
『櫻に融合を許した時点で、お前の負けは確定してたんだよ。勝ち筋があるとすれば、櫻と誰かを融合させないこと、くらいだよ』
実際、融合後の櫻の実力は、他とは明らかな差がある。マドシュターも中々の強さを誇るが、融合後の櫻はそれすら上回る。仮にどんな敵が現れたとしても、融合後の櫻であれば負けることはないだろう。
「確かにね…。融合を許した時点で、戦闘で私が勝利する未来はなかった。……そうだよ、融合した櫻には勝てない。でも、忘れてないかな……。魂に干渉できるのは、私も同じだってことをさ!!」
ミリューは櫻の体に触れ、唱える。
「魂融合!!」
櫻の中にいる、俺の魂に干渉するために。
櫻と俺を引き剥がし、櫻の融合をなかったことにするために。
「クロちゃん!!」
『わかってる!』
でも、それは……。
想定済み、いや、作戦通りだ。
元より、ミリューを追い詰めたのは、ミリューにこの行動を起こさせるためだった。
全てはミリューの中にある魂を救うため。
そして、本来のミリューを取り戻すための作戦だ。
『行ってくる』
「うん。気をつけて」
俺はミリューの魂に干渉するため、奴の精神世界に入り込んだ。
☆★ ☆★ ☆★ ☆★ ☆★
「……してやられたってところかな」
「上手くいってよかったよ。正直、櫻と融合するつもりなんてなかったから」
無事、ミリューも精神世入り込むことができたみたいだ。目の前には、おそらくミリューの魂と思われる存在がいた。
「この世界じゃお互い対等。腹を割って話し合わない? ね、黒沢君」
俺の前世を知っている?
なぜ……、いや、魂に干渉できるような奴だ。もしかしたら、前世の判別くらい容易にできるのかもしれない。
「リアクション薄いね。もう少し良い反応をしてくれるものだと思ったけど」
「そっちこそ、してやられたって言う割には、随分と落ち着いているように見えるけど?」
「まあね。元々保険のために進めていた計画が、上手くいきそうだったからね」
保険というのが何かは知らないが、こちらとしては、この偽物のミリューではなく、本来のミリューを主人格に据え直すことが目的だ。どうにかして、本来のミリューの人格をこの精神世界から見つけ出す必要があるのだが…。
「何から話そうかな。転生のメカニズム、から話そうかな。これは大規模侵攻にも繋がる話だし」
「………転生のメカニズム…。お前、やっぱり何か知って……」
「知ってるよ。全部ね。なんたって、私が転生者そのものなんだから」
俺や愛と同じ、転生者……。本来のミリューの体を乗っ取って今まで俺達の敵として立ちはだかってきていた相手が、まさかそんな相手だったとは。
「転生の条件はかなり厳しくてね。黒沢君や私が転生するに至ったのは、魔界と人間界が接続したその時、魔王が人間界へとやってきて、周囲の人間を巻き込んで殺害した結果だということは理解できるよね?」
「……そう、だけど」
魔王自身がそう言っていたし、俺が転生した理由はそれで間違いないはずだ。まさかこいつもそうだったとは思ってもいなかったが。
「結論から言うと、転生の条件は2つ。突然異なる世界同士が接続されることによって生じる、一時的な世界の歪みと、世界同士が接続された瞬間に、その歪みの発信源の周囲に死にたてホヤホヤの魂が存在すること、だよ」
周囲を見渡す。本来のミリューの魂らしきものは見当たらない。茜が契約とかなんとかいうものを交わしたらしい組織の元幹部のイフリートの魂も見当たらないし、この精神世界には、俺と目の前のこいつ以外にはいないのかもしれない。だとすれば、どこにいるのか……。
「でも、残念ながら、今魔界と人間界が接続されたところで、世界の歪みなんてものは生じない。魔王が最初に接続させた時点で、魔界と人間界は見事に調和してしまったからね。それに、元クラスメイトやあの時周囲にいた人間達は1人をのぞいて始末したから、転生者って存在は私と黒沢君以外には存在しないんじゃないかな」
「……まさか、殺したのか?」
「うん。殺したよ。元クラスメイトは住所を洗えば簡単に処理できるし、転生者は前世の家族を餌に釣れば、向こうから接触してくれたからね。処分は簡単だったよ。鮫島君は最初は殺すつもりだったけど、私に心酔しきってたみたいだったから、生かしておいた。けど、彼は君が殺しちゃったんだったね」
確かに、鮫島は俺が殺した。その罪は、消えはしないだろう。でも、俺は決めた。もう迷わない。それに、今会話していてはっきりした。こいつは、表に出しておくべきじゃない。なんとしてでも、止めないと。
………待て。なんでこいつは鮫島のことを始末しようとしてたんだ?
こいつが殺し回ったのは、転生者と元クラスメイト。時系列的に、鮫島は魔王が人間界に来る前から生きていた人間だったから、転生者なはずがない。つまり、こいつ……。
「お前、誰だ…?」
俺の、元クラスメイトの誰か、だ。間違いない。
「別に、誰でも良いと思うけど。君にとって、クラスメイトなんて親元愛以外はどうでも良い存在だったはずでしょ?」
「紫村か?」
人を馬鹿にしたかのような口調が、かつてのクラスメイト、紫村未来を彷彿とさせた。特に関わりがあったわけじゃない。鮫島だってそうだ。けど、俺のクラスメイトがこれだけ暴れ回ってるっていうのなら、それはある種俺が原因だと言えるだろう。俺があの時、魔王と対峙してしまったから、こいつはミリューとして、力を得てこの世界に再臨してしまった。
「だから、誰でも良いでしょ。私が誰であろうと、君にとってかつてのクラスメイトだったっていうその情報だけで、この話は完結できてるんだから。私が誰か、それはどうでもいいよ。大事なのは、組織の大規模侵攻が何をもたらすか、ということだよ」
「大規模侵攻が、今の話となんの関係があるんだ?」
「組織は今、事実上ルサールカの支配下に置かれている。順調に組織の幹部が脱落していったし、ボスって存在も、私とルサールカで一緒に始末して、形式上存在しているとしただけだからね。そして、ルサールカはもう一度起こそうとしてるんだ。異なる世界との接続、魔界でも人間界でもない、新たな第三の世界との、ね」
新たな第三の世界との接続……?
そんなことをして、一体何になるんだ。
「大規模侵攻は、実際は足止めのためのものに過ぎない。ルサールカは、人造の魔法少女を製造した記録を元に、究極の、魔法と科学の技術を合わせて造りだした生命体のエネルギーを使って、世界に歪みを生じさせることを目的として動いてる」
「まあ、ルサールカが何を為すか、なんてことはどうでも良いんだ。大事なのは、世界に歪みが生じること。つまり、私達はもう一度転生するチャンスが与えられるってことだよ」
「そう、私の目的は、もう一度生きたいって、ただそれだけだったんだ。でも、世界がそれを許してくれなかった。仕方なかったんだよ。本当は苦しかった。人なんて、殺したくなかったんだ」
「でも、無理だったんだ。私は、ルサールカに従うしかなかったんだ。性格悪そうに見えたのもさ、全部そう振る舞わないとルサールカに不審に思われて殺されちゃうかもしれなかったから、だよ。ねぇ黒沢君。ミリューって子の体は返すよ。だから、私に転生のチャンスをくれないかな?」
ミリュー、いや、俺の元クラスメイトは、辛そうな表情をしながら、俺に訴えかけてくる。
でも、駄目だ。こいつはクラスメイトを散々殺してきた奴だ。
「転生者なんて、ルサールカには関係ないはずだ。もし本当にルサールカに強要されて殺していたとしても、それはお前が転生者だってことがルサールカが知っていないと成り立たない」
「だから、それがバレていたんだよ。私は、ルサールカに目を付けられてしまったんだ。本当は、本当は抵抗したかった。ねぇ、黒沢君、私は、君と同じだよ。組織の被害者だ。勿論、罪は償うつもりだよ?」
「駄目だ……信用できない」
「…………だったら、仕方ないな。私の前世を明かすよ。黒沢君は、未来ちゃんだって予想してたみたいだけど、残念ながら外れだよ。私の本当の名前は、深丸麗華。覚えてない?」
深丸麗華。前世で、俺のクラスの委員長をやっていた人物だ。
俺の記憶では、彼女は人柄も良かったし、性格に日の打ちどころはなかったはずだ。特段仲良くもない俺にも、よく話しかけてくれていたこともあった。
もし本当に深丸麗華なら、彼女の言うことも、あながち間違いではないのか?
「自分が深丸麗華だと言う証拠は?」
「黒沢君が妹に会うために早退したりする時、口裏合わせてたでしょ?」
目の前の彼女が深丸麗華であることは確かだ。俺は確かに、深丸麗華に口裏合わせをしてもらっていた。この事実は彼女以外愛しか知らないし、愛も俺のこと好きだからな。他の人に俺が言ってほしくないことを言いふらすような奴じゃない。
彼女が深丸麗華なのであれば、ルサールカにやらされて無理矢理、というのも、人格からして、あり得なくはない、のだろうか……。
でも、そんな気がしない。
どうしても引っかかる。
よくよく考えてもみろ、俺は深丸麗華の何を知っている?
俺は前世から、クラスメイトとの関わりが濃い方ではなかった。
関わりが濃いと言えるのは、愛くらいだ。
だとすれば、仮に彼女が深丸麗華であったとしても、俺が彼女の本性を知らなかっただけではないのか?
人間も魔族も、結局は同じなんだ。それは身に染みて感じている。性格が悪いのは魔族だけだ、なんて理屈が通らないのは知っている。人間だって、十分悪意に塗れているんだ。
それに……。
「ルサールカとは、途中から対立してたんじゃなかったのか? 脅されてやったにしては、随分簡単に縁を切れるみたいじゃないか」
自分の親を殺さなければいけないほどの脅迫を受けていたのなら、抵抗することなんてできないだろう。ましてや、対立するなど、あり得ない。
「……はぁ……。今までせっかく殺さないでおいてあげてたのに、恩を仇で返すつもり? ったく使えないな……。良いじゃない、別に私が転生しようが、君達にはなんの害もないでしょ?」
「……もし、第三の異界に繋がったらどうなる?」
「…………さあ? 接続される世界にもよるんじゃないかな。科学文明の発達した世界と接続すれば、その技術を輸入して、もしかしたら科学が発展するかもしれないし、逆に圧倒的な科学力で人間界の住民が蹂躙されるかもしれないね。或いは、地獄や天界に繋がって、生も死もあやふやになって、世界が大変なことになってしまうかもしれないね。でも、それは魔界と繋がった現状だって同じでしょ? 大丈夫だよ。人間は順応できる生き物だから。黒沢君だって、転生した今の体に順応してるでしょ?」
やっぱり、協力できない。
そんなメチャクチャな世界、受け入れるわけにはいかない。
「“アブソーブトルネード”!!」
……どうやら精神世界でも、魔法は扱えるらしい。
「面倒な!」
ミリュー、いや、深丸麗華は、俺の“アブソーブトルネード“を止めようと魔法を放つが、俺の”アブソーブトルネード“はそれらを飲み込む。
……とにかく、本来のミリューと、イフリートを探し出す。できれば、他の魂も助けないと…。
精神世界をくまなく探る。さっきまでは、深丸麗華と話し続けていたせいで少しの範囲でしか探れなかったが、今はそんなことをする必要はない。
違和感のある場所を探る。精神世界内での魔法がどういう扱いなのかは知らないが、魂を収納できるということは、ある程度魔法を扱ってはいるはず。
魔力を感じる場所を探っていけば……。
「いた……」
本来のミリュー。
俺を、組織から抜け出すための手引きをしてくれた、心優しい少女。
その魂が、そこにあった。
「ミリュー! 起きて! ミリュー! 起きろ!!」
「ん……んぅ……」
意外にも、ミリューはすぐに唸り声をあげながら、ゆっくりと瞳を開いた。
「ここ、は……。そっか、私……」
「起きて早々悪いけど、この体の主導権を取り戻してほしい。今、ミリューの体を使っている奴の魂を、この精神世界に封じ込める」
「助けに来てくれたんだ。えへへ。先輩ってば優しいですね〜」
「とにかく、どうにかして主人格を変えるとか、なんかそんな感じなのできない?」
「ふわふわしててわかんな〜い。まあ、主導権を変えることなら、できるよ。この時のために、ずっと備えてたんですから」
そう言ってミリューは立ち上がり、手をパンパンと叩く。
「皆!! 時が来たよ!!! やっちゃって!!!!」
すると、おそらく深丸麗華によって捕獲されてしまったのだろう魂達が、俺達の前に現れる。その中には、イフリートの姿もあった。
「今までは、この人たちの魂を保護するのに精一杯で、まあ主導権取り返すどころじゃなくて……。でも、助けに来てくれたってことは、この人たちのこと、どうにかできるってことでいいんですよね?」
「うん。櫻に魂を取り出してもらって、元の体に戻すっていう算段」
「なら、話は早いです。この人ら、全員持ってってください。主導権は私が勝手に奪っちゃいます!」
「わかった」
仮にも組織の目を欺いて俺の組織脱却を手助けしてくれたような子だ。結局はバレてしまったとはいえ、それだけの胆力があるのなら心配するようなことはないだろう。
俺は精神世界にいた魂達を連れて、現実世界にいる櫻にコンタクトを取る。
俺と櫻の今の状態は、完全な融合ではないものの、まだ魂融合の影響が少なからずのこっているのか、半共鳴状態にあり、数秒程度なら交信可能なのだ。
「櫻、うまく行った」
『本当!? 良かった! 待ってて、今すぐ救出するから!』
俺は櫻との絆が一番感じ取れる場所へと移動する。
「待て!! そいつらを連れて行くな…!」
「残念だけど、貴方の相手は私だよ、偽物さん」
「ミリュー……!!! よくも、私の邪魔をしてくれたな……」
深丸麗華は、ミリューが止めていてくれている。
これで、ミリュー……深丸麗華との因縁も終わる。
☆★ ☆★ ☆★ ☆★ ☆★
現実世界へと戻ってきた。
イフリートが帰ってきたことに茜は歓喜し、俺も櫻と融合した状態で、作戦の成功に歓喜している。ちなみにミルキーはあっさりとベータとガンマにやられていた。というか、途中から俺のことが心配になった辰樹が、爆速で用事を終わらせて加勢に来てくれたらしく、そのおかげでミルキーの相手も容易だったそうだ。
あとは、ミリューがうまくやってくれたかどうかだが……。
「あ、ミリューちゃん、目を覚ましたみたい」
全員がミリューの様子を見る。
果たして、目の前にいるのは、本来のミリューか、それとも……。
「よくも、私の邪魔をしてくれたな………」
「ま、さか……」
「残念だけど、主導権は変わっていない。私は私のままだ。人質を持っていかれたのは痛かったけど、まあそれまでだね」
ミリューは余裕の笑みを浮かべてそういう。
「そんな………それじゃ……ミリューちゃんは……」
『はぁ………櫻、流石に純粋すぎるよ』
「えへへ………やっぱり先輩にはバレちゃいましたか」
それはそうだろう。もし本来のミリューではなく、深丸麗華のままなら、ここで正体を明かす意味なんてない。櫻に勝てないことなんてわかりきっているし、本来のミリューであるかのように振る舞ってこの場を切り抜けるのが吉だろう。それに、仮に深丸麗華なのだとすれば、目の前のミリューにはあまりにも焦りが感じられなさすぎるからだ。
「うぅ。結構良い演技だと思ったのに……」
「と、とにかく! 作戦がうまく行ったみたいでよかった……」
「あ、ちなみに、偽物の私と会話できるけど、する? こんな感じなんだけど」
『転生だけでもさせてくれない? もしかしたら第三の異界が開いたって案外どうにかなるかもしれないし……』
「はいお口チャック」
作戦は成功、と見ていいだろう。
後は、ルサールカと、大規模侵攻さえ止めれば、長い戦いに終止符を打てる。
「先輩、実は私、先輩の秘密、知っちゃいました。いや、知るつもりじゃなかったんだけど、不可抗力っていうか……」
前世のこと、だろうか。まあ、こればっかりは仕方ない。ミリューには世話になったし、秘密を言いふらすような人じゃないだろう。
「秘密って…?」
「秘密は秘密、です。あとちなみに、もう一つ言うことがあります」
『……?』
「私も先輩と同じってことです。お互い様ですね」
つまり、ミリューも転生者ってことだろうか。
……転生者は全部始末したって深丸麗華は言ってたけど、ミリューは身近過ぎて気づかなかったんだろうな。そういえば、俺との会話で転生者は1人を除いて始末したって言ってたけど、それは俺のことじゃなく、ミリューのことだったのかもしれない。
「とりあえず、戦闘も終わったし、櫻とクロは融合をといた方がいいんじゃない?」
イフリートを取り戻してウキウキな状態の茜が、俺達に向けてそう言ってくる。
「うん、そうだね。ちょっと名残惜しいけど……」
瞬間、俺の意識が櫻の体内から、別の、自分自身の体内へと移る。
魂融合が解除されたんだろう。
俺は、そろそろと起き、櫻の方を見る。
「櫻!」
「あ、あ……」
叫ぶ茜と、狼狽えるアルファ。
俺と融合解除した櫻は………。
「櫻…?」
気絶したように、その場に倒れ伏していた。
その場の誰もが、現状を理解していなかった。
「まあ、そうなるよね……」
ただ1人、魂の構造を深く知るミリューを除いて。
ちょっと大変なことになってたみたいなので、遅れての投稿となります。