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Memory154

主に前衛はカナ。補助として櫻。俺は“ブラックホール”を用いて奇襲をかける役に徹する。


「影」


が、俺が奇襲を仕掛ける場面で、影から、『影』と呼ばれる少年が出現し、攻撃を妨害してくる。


「3対1は不公平じゃないかなってね。だからこそ平等に、3対3で行こうじゃないってわけ」


ミリューは3対3と言った。つまり、ミリューと『影』に加えて、もう1人、誰かがいるということになる。

俺は即座に周囲を警戒し、ミリューの仲間が潜んでいないかを探る。


が、特にそれらしいものは感じられない。


「クロちゃん、後ろ!!」


だが、気配を感じ取ることができなかったのはどうやら俺だけだったらしい。いつの間にか、カナも櫻も、俺の背後に視線を向けていた。


足元に“ブラックホール”を展開し、すぐにその場から離れる。背後に回られていたのなら、これが一番賢い回避方法だろうと考えたからだ。


「やっぱ難しいなぁ。1人にしか発動しないっていうのが、何とも使いにくいよね〜」


「お前は、確か……」


つい先日、シロ達と戦闘していた、ミルキーという名の魔族だったはずだ。けど、彼女はシロ達に一度撃破されているはず、それに……。


「ミリューは、そしきとはくんでいないんじゃ……」


「んー? 組織? 別に私はどこにも属してないよー。ルールーとは、個人的に交流があったってだけ。私は面白そうだったら、何でも首突っ込む主義者だからね」


つまりは、野次馬根性極まれり、ってやつか。一番面倒臭いタイプだ。強い信念があるわけでもないし、説得しようにも本人は遊び感覚で振る舞っているせいか、言葉は全く届くことはない。


まあ、それならそれだ。こういう類のやつの対処法は一つ。

全力で潰すしかない。


部分解放(リリース)……」


「おっと。させないよ」


ミルキーが、何かスイッチのようなものを取り出す。何だあれ? ボタン……?


「哀れだなぁ、ほんと」


ミルキーはそう口にしながら、スイッチを押す。瞬間。


「あぐっ……!」


「クロ!!」


「クロちゃん!?」


俺の体に、衝撃が走る。

心臓が締め付けられるような、息苦しさを感じる。


武器として用意した大鎌を持つ手は緩み、両の足で地面を踏みしめていたはずが、いつの間にか地に膝と手をついてしまっていた。


「な、に……を……」


苦しい……。思うように体が動かない。

全身が、何かに制御されたような感覚だ。


「キミはさ、強くなるために、何を使ってたと思う?」


「は…? なんの……こ……とか……」


強くなるために、何を使ったかって?

それは………。


まさか…。


「ふぁんとむ………ぐれーだー……」


「そう。怪人強化剤(ファントムグレーダー)を使って、キミは今の実力を手に入れた。けど、その怪人強化剤(ファントムグレーダー)は、誰が用意したものなのか。ここまで言えば、流石にわかるかな? ルールーはね、仕込んでおいたんだよ。キミが使う怪人強化剤(ファントムグレーダー)に、キミの体の動きを制限する、ナノデバイスをね。ちなみに、私がそれの起動スイッチを持ってるのは、ルールーに貰ったから。って言っても、起動スイッチは複数あるからね。仮に私からこのスイッチを取ったところで、クロの身体制御なんて、やろうと思えばいつでもできるってわけ」


俺が、あの怪人強化剤(ファントムグレーダー)に手を出した時点で、俺が組織に逆らえないことは、確定してたって、そういう、オチなのか…。


クソ……。


「腕くらい千切っても、ルールー怒らないかなぁ? 流石にダメ? うーん。ちょっと痛めつけてから、お持ち帰りぐらいが安牌かな」


「…はな……せ……!」


ミルキーが俺の体を掴んで、持ち上げる。抵抗したいのに、体が動かない…!

櫻とカナは、ミリューの相手をしていて、ミルキーの相手ができない。俺が、俺がこいつの相手をしなきゃいけないのに…!


「結局キミはさ、組織には逆らえないんだよ。大人しくしたがって、その顔を絶望に染め上げて?」


やっと、全部終わらせられると思ったのに……。ここまで来て、ここまで来て……これかよ…‥。クソ………クソ…!


「アクセルバーニング!!」


ミルキーに向けて、火球が放たれる。

ああ。俺のせいで、作戦が台無しだ。


「クロから、手を放しなさい」


「あ……かね……」


茜が、俺を助けるために、出てきてしまった。当初の予定では、隙を見て、櫻と融合してもらうために控えていてもらったのに…。


茜の位置がバレてしまっては、向こうも櫻と融合させないように立ち回るに決まってる。……俺のせいで、全部…。







「その汚ねぇ手、さっさと放しやがれ!」


一瞬だった。地面から突然生えてきたかのように現れたそれは、一瞬のうちにミルキーの腕を切り落とす。

ミリューの相手をするのは、最初から茜を含めた俺達4人だけだったはずだった。けど……。


「ガン、マ……」


「あんたはワタシの親みたいなもんなんだ。簡単には死なせない」


「私達は特に役目を与えられていませんでしたからね。こちらとしても、ミリューは因縁の相手です。加勢しないわけにもいかないでしょう」


メイド服を着こなしながらそういうのは、ベータだ。


「4人だけでミリューの相手をすると言っていたから、心配で見に来た。櫻に万が一のことがあったら……私は……」


そして、アルファ。どうやら3人とも、俺達の加勢に来てくれていたらしい。


頼もしい。けど、だからこそ余計に、俺が役立たずになってしまったという事実は、俺に重くのしかかる。


「ミルキー! 茜と櫻を近づけさせるな! 最悪そこの人造魔法少女(親不孝者)供は私が相手してやる!! だが、絶対に!!! 櫻と茜の接近を許すな!!!!!」


ミリューがものすごい剣幕でそうミルキーに捲し立てる。

これじゃ、櫻と茜の魂融合は叶いそうにない。


俺が、足を引っ張ったばかりに……。


「アルファ、ベータ、ガンマ。頼みがあるわ」


「何でも言ってくれ」


「ベータとアルファ、そして私で、ミルキーの相手をする。だから、ガンマは、クロを……………につれていって」


茜はミルキーに伝わらないようにするためか、小声で話す。俺の耳には届かないくらい小さな声で話していたので、確実にミルキーには伝わっていないだろう。


にしても、結局これじゃ、櫻と茜の融合はできないままだ。ミリューに勝つためには、櫻と茜の融合は不可欠。来夏や束も融合は可能らしいが、来夏と束らは、別件で今は合流できない。別件というより、現在進行形で続いている大規模侵攻の対応に追われている、というのが正しいだろう。大量の怪人は他の魔法少女達でも対応可能だが、ルサールカに協力している魔族の対応は、来夏達でないと不可能だからだ。


「クロ、今からワタシの“ブラックホール”で移動する。しっかり掴まっとけって言っても、体動かせないんだっけか」


言いながら、ガンマは俺を“ブラックホール”内に連れ込む。

戦力外通告ってやつだろうか。あの場にいても、俺ができることは何もない。だから、茜は俺を戦場から遠ざける決断をした。といったところだろうか。


情けない、な。ここまで来て、結局役立たずに成り下がるなんて。恥ずかしい。


「よし、ここで」


ガンマは“ホワイトホール”を出現させ、“ブラックホール”内から脱出する。

出た場所は…‥。


「……え…?」


「櫻! ワタシと交代だ! さっさとやること済ませろ!!」


移動先は、櫻のすぐ側。戦場から離脱するわけではなく、何ならミルキーよりも危険度の高いミリューの方に連れ込まれる始末。


戦力外通告じゃなかったのか? 何で俺をわざわざここに……。


ガンマと入れ替わるようにして、櫻が俺の元へやってくる。と同時、俺の手を握り締め、顔を見つめてくる。


……これ、恋人繋ぎ……、いや、本当にこの子、距離感おかしい……。


「お願い…! 私と、交わって!」


「へ?」


ガバっと、櫻は俺と繋いでいた手を離すと同時、手を大きく広げた後、俺に思いっきり抱きついてきた。


「クロちゃんが、一緒に戦ってくれるってなった時、私、すごく嬉しくて……」


「へ? へ?」


「やっと、仲良くなれるって。そう思ったの。皆が支配された時、言ってくれたよね。『そうはさせない』って。本当は、あの時、凄く不安だったんだ。でも、クロちゃんが隣にいるって、そう思ったら、元気、貰えたんだ」


そうか、もしかして、櫻は、最初から…。


「私は、クロちゃんとなら、融合できる。私の一方通行な思いかもしれない。クロちゃんからしたら、私のことなんて、どうでもいいのかもしれない。でも、お願い。今だけでも、いいから。だから、私を………受け入れて」


あの時、俺と櫻が魂融合できなかったのは、俺と櫻が仲良くないからだとか、そんな話じゃなかったんだ。


櫻はとっくに、俺との融合を受け入れてた。


拒絶していたのは………俺の方だったんだ。


「一方通行なんかじゃ、ない。今、ここに私がいるのは、櫻のおかげだから。櫻がいなかったら、今頃、組織に使い潰されてたし、シロだって、どうなってたかわからない。櫻には本当に感謝してる。拒絶してしまっていたのは、多分、無意識に壁を作ってたんだと思う」


前世のこととか、ちょっと後ろめたいことはあったし。


櫻にも、話してみてもいいのかな。前世のこととか。彼女なら、そんな俺でも受け入れてくれそうな、そんな気がするから。


「私も……櫻のことは、好きだから。だから、準備は、できてる」


俺の言葉を受けて、櫻は心底安心したかのような顔をして、俺の手を握り直す。


ずっと、不安だったんだろう。俺が、櫻のことどう考えてるかなんて、多分、そんなに表に出すことはなかっただろうから。敵対していたってこともあって、どうしても、踏み込めずにいた部分はあるのかもしれない。


だからこそ、こうした対話が必要だったんだろう。

茜や来夏みたく、本当の意味で信頼しきれてはいなかったのかもしれない。


でも、今は違う。


「それじゃ、行くよ」


「うん。準備はできてる」


魂融合(ソウル・リ・ユナイト)!!」


俺と櫻の体が、光に包まれる。


今度はもう、失敗しない。


「行くよ、クロちゃん」

『サポートは任せて』


第二ラウンドの開幕だ。

・『ブラックブロッサム』


櫻とクロが融合した姿。相性は最悪だが、絆パワーでフル無視して融合した。櫻の桃色の髪に、ところどころ黒色のメッシュが入っている。衣装はいつも通りフリフリの魔法少女ドレスだが、桃色のドレスには、要所要所に黒の刺繍が入っており、たまに隠れ髑髏もいる。武器として使う『桜銘斬』は特別仕様になっており、黒色メインに桜の花びらの刺繍が申し訳程度にされている。また、もう一つの武器である『桜黒の大鎌』は、逆に桃色の可愛らしい見た目のものとなっており、ちゃっかり隠れ髑髏ちゃんもいる。

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