Memory152
お先に謝罪を。
前回の投稿からかなり時間が空いてしまい、全く更新されない状態が続きましたことを、深くお詫びいたします。
連続で投稿、とはいきませんが、今週以降終盤まで週一投稿を心がけて投稿していきますので、よろしければ最後までお付き合い頂けたら幸いです。
ミルキーとシロの戦闘が開始する。
が、しかし、戦況はシロの不利に進んでいた。
「右!!」
「ハズレ。正解は左でぇええっす!」
先程から、ことごとくシロに“思考誘導”または“視線誘導”がかけられてしまっているのだ。別に、ミルキーは櫻とシロ、どちらかを選んで魔法をかけているわけではない。どちらか一方にかかっていれば、それだけで撹乱できるのだから、わざわざ選ぶ必要がないというのも理由としてあるし、そもそも心属性はそこまで正確性のある魔法ではない。
心属性は、ある一定の範囲内においてかかる魔法であり、個人に対して発動しているような類の魔法ではないのだ。つまり……。
「にしても、連続でシロの方にかかるなんて、ついてないねぇ〜」
「…うるさい」
つまり、どちらに“思考誘導”又は“視線誘導”がかかるかは完全ランダムで、ミルキーにそれを操作する余地はないし、どちらにかかったかをミルキーが認識する必要もないということだ。
「次は……上!」
「後ろだよ」
シロは翻弄され続ける。戦況はミルキー優位。結局、主導権を交代しようと、ミルキーに対抗する術などないように思えた。
だが……。
☆★ ☆★ ☆★ ☆★ ☆★
「私の、独壇場だったはずなのに…!」
今この瞬間だけは、私がこの場を支配していたはずだった。間違いなくそうだ。私は“覚醒”した。
このミリューという少女の肉体に、魂に秘められた才能を開花させた。
魔法少女達の魂を掌握し、そのまま支配するまでもを可能にした。なのに……。
「何が、怪人だ。魔族にすらなれない、不完全な人形如きで……」
私が魔法少女達を支配して悦に浸っているその光景を嘲笑うかのように、ルサールカは怪人による大規模侵攻を開始した。私が支配していたはずの場所なのに。まるで自分の手柄かのように、余裕綽々とでも言いたげな態度で、空中から優雅に舞い降りましたとでも言いたげな登場をかましたのだ。
心底腹が立ってしょうがない。
……今回に関しては、私の粘り負けだろう。素直にルサールカと魔法少女達がぶつかるのを待てばよかったのかもしれない。
が、まあいい。私には、ルサールカにはない情報アドバンテージがある。
転生について、知っているからだ。
転生のメカニズムさえわかれば、私が恐れるものなんて何もない。
私の仮説が正しければ、再転生は可能だ。尤も、そのために多くの犠牲を払う必要はあるだろう。
あの時のように。
まあ、無駄に命を散らすよりはいいだろう。私の転生のために散るのならば、等しく私よりも低い価値しかない魂も報われるというものだ。
その結果、世界がどうなるとしても。
人間どころか、魔族すら滅ぼす結果をもたらすとしても。
最終的に私が天下を取れるのなら、問題はない。
☆★ ☆★ ☆★ ☆★ ☆★
「櫻!」
ミルキーの後ろに、1人の少女の影があった。
クロは負傷して倒れているし、光は支配された魔法少女達の相手で手一杯。辰樹達も同様だ。
では、一体誰が、ミルキーの背後に回れるのか。
「ホーリーライトスピア!!」
放たれるのは、光属性の魔法。
光属性を扱うのは、この場ではシロ以外に存在し得ない。
そう、光属性の魔法を放ったのは、双山真白だ。
ミルキーの背後にいる、白髪の髪を持った、クロとよく似た少女だ。
「どういう、こと…?」
ミルキーは困惑する。それもそのはず。双山真白は、今百山櫻と融合したことにより、自身の体を動かせないはずだ。何なら、主導権を後退までしているのだから、櫻の体を動かしているのは、シロのはずなのだ。
「まさか……」
「そのまさか、だよ」
つまり、ミルキーの背後に回ったのは、シロの代わりにシロの体に入った、櫻だ。
シロは櫻の体の主導権を自信に移したタイミングで、櫻の魂を双山真白の肉体へと移していたのだ。
だからこそ、“思考誘導”や“視線誘導”はシロにばかりかかったのだ。
櫻という存在は既に、双山真白への体へと移動していたのだから。
「やっぱ相性抜群、か」
ミルキーの魔法の範囲に含まれていないシロの肉体は、“思考誘導”や視線誘導“に引っかかることなく、ミルキーに攻撃を加えることができた。それを可能としたのは、櫻とシロの魂の相性が抜群だったからだ。
「結構本気でやったから、しばらくは休んでおいた方がいいと思います。これ以上、争いたくはないから」
「……みたいだねぇ……」
櫻による不意打ちは、思いの外ミルキーに効いたらしく、ミルキーは攻撃された箇所を押さえてその場で佇んでいる。
「櫻。そいつは放っておいて、とりあえずこの状況をどうするか考えないと」
「何だか、目の前に自分がいるって変な感覚だね」
「……別に何とも思わないけど……」
今、櫻とシロの2人は互いの体を交換している状態だ。それゆえに櫻は目の前に自分がいるという奇妙な状況に何とも言えない感覚を覚える。が、シロの方は普段から自分と瓜二つなクロの存在を視認しているからか、そこまで違和感を感じることはなかったようだ。
「とりあえず、辰樹君の方に加勢に…」
「……このミルキーって魔族。心属性の魔法は厄介だったけど、それだけだった。組織の幹部の方が、実力は上だと思う。そんな奴だけで、ルサールカが私達を始末できると考えているはずがない」
「それって……」
「うん。多分、ルサールカには他にも魔族の仲間がいると思う。でも流石に今の状態じゃ、戦力的に勝てない」
「せめて来夏ちゃん達がいれば……」
「そう。来夏達さえいれば、私達にも反撃のチャンスはある。だから、今、ここで、取り返そう」
シロは櫻の姿形のまま、シロの容姿をしている櫻に向けて手を差し出す。
「もう一度、私と櫻で融合して、ミリューの支配下にある魔法少女達を、全員正気に戻す」
「……そんなこと、できるの?」
櫻は疑問をこぼしながらも、自身の肉体の手を、シロの手をとる。
「ミリューによる支配は、魂への干渉によるもの。多分魔法も使ってるはず……とすれば、属性は闇。魂に干渉できるのは、多分櫻も同じだから、あとは闇属性と相反する光属性の魔法で、直接支配された魔法少女達の魂に干渉すれば、理論上は可能だと思う」
光属性による、浄化の魔法。それこそが、シロが導く、現状の打開策だった。
大規模侵攻が実行され、大量の怪人が野に放たれた現状では、間違いなく全国の魔法少女達の力は必須になるだろう。だが、そもそも魔法少女達が支配されてしまっている状態では、協力以前の問題だ。
まずは魔法少女達の支配を解く。そこでやっとスタート地点だ。
「こうしてる間にも、空からどんどん怪人が降ってきてる……一か八かだけど、やってみる!」
空中に存在する組織のアジトから、次々と怪人がやってきている。中には翼が生えているものもおり、空中を埋め尽くし、空の支配者と化している。
怪人の供給は、一向に止む気配がない。
「はやくしないと、このままだと、翔上市どころの騒ぎじゃない。急がないと」
「わかった。真白ちゃん。魂融合!!」
櫻とシロの魂が、再び融合する。
『縛りで、詠唱による魔法強化をして、効果範囲を広げる。それで、支配されてる魔法少女全般に浄化魔法をかけることができると思う。ただ、魔力消費量は通常の比じゃないから、そこだけ気をつけて』
「わかった!」
☆★ ☆★ ☆★ ☆★ ☆★
「私が成すのは希望の象徴」
『私が魅せるは浄化の光』
「絶望に塗れた世界に、」
『一筋の希望の光を』
「完全」
『詠唱』
「全てを」
『無に帰す』
「友情魔法!!」
『浄化!!』
全てを、光が覆い尽くす。
少女が放ったのは、全ての魔法を無効化する、完全浄化魔法。
絶大な魔力を要求するそれは、本来ならば誰にも為せない、机上の空論の魔法。
しかし、希望の少女はそれを可能にする。
支配された者たちは、解放される。
ただ1人の例外なく。
そこに立つのは。
どんな絶望も希望に変える。
最強の魔法少女だった。
クロと相性抜群な存在はいないです。