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Memory149

「ん……あれ、ここ……は……」


確か、束への不意打ちが成功して、それで……。


そうか、来夏に、やられたんだ。


「クロ、良かった。目が覚めたんだな」


「辰樹………これ、どういう状況…?」


「……多分、かなりまずい。ここにいる俺達以外は、皆ぼーっとした状態で…」


「みんな、おかしくされた。おかしくなってないのは、ここにいるわたしたちだけ」


「カナ、いつのまに…」


束もガンマも来夏も、様子がおかしかった。束がミリューに何かされたのと同様に、2人もミリューに何かしら施された結果ああなったと考えるのが自然だろう。魔法省の大臣に会いに行った時、ミリューだけ何故か俺達と戦おうとしなかったのは、来夏達に何かしに行ってたからなのかもしれない。


「ミリューってやつのせいですよ! ミリューってやつが皆に命令したら、皆一斉に私とメナちゃんのことを襲ってきて……」


「一斉に一斉に。怖かった……」


「何かされる前に助けられて良かった。もしちょっとでも遅れてたら……」


「たらればの話をしてもしょうがないですよ! 先輩のおかげで私達は今ここにいるんですから!」


どうやら真野尾美鈴と龍宮メナも櫻によって助けられてここにいるらしい。他にも先ほど『色欲』の相手をしていた光もいるらしい。そして、一番気になるのは…。


「シロ……」


シロが、この場にいることだ。結局俺は、シロと向き合うことができないまま、今この場にいる。

全部終わらせてから、話すって。結局、今この状況を打開できない時点で、そんなこと誓う資格なんて、なかったのかもしれない。でも、全部終わらせてからじゃないと、やっぱり俺は、シロと本当の意味で向き合うことができる気がしない。だから結局、俺とシロの関係は、特に進展しないままだ。


「クロ、私がいるのがそんなに変?」


「別にそんなことないけど」


「私はアストリッドを囮にして逃げてきた。カナって子はついでに拾ってきただけ。それで、ミリューが言うには、櫻とクロだけは、魂の性質上弄れないらしくて、来夏達みたいにはならないって。それが今の状況」


「……てことは、来夏達はミリューに魂をイジられたことで、あんな状態になったってこと?」


「……そうだけど」


……受け答えをしてくれるのはありがたいんだけど、なんだかシロ、怒ってるような気がする。どこかぶっきらぼうというか……。やっぱり、ちゃんと向き合ってないから、拗ねられてるんだろうか。


「ちょっとクロ。あんたしろに言うことあるんじゃない? ほら、謝んなさいよ!」


「るな、黙ってて」


「でも……」


「るなが話に入ってくると面倒くさくなるから」


……やっぱり怒ってるのかな。


「シロ、怒ってる?」


「別に。ただ、もういい。別に、クロが隠したいなら、好きにすればいい。魂の性質がどうこうとか、そんなこと、知らなかった。ずっと一緒にいても、隠し事ばっかりだったし。でも、クロが隠したいことだったんなら、仕方ない。別に、気にしてない。どうでもいいから」


めっちゃ気にしてそう……。というかやっぱり拗ねてるよね?


「と、とにかく作戦会議だ。来夏達が敵に回るとなったら、今の俺達の戦力だと心許ない。だから、どうするか話し合う」


「さくらとクロは、ミリューのあいてをしてほしいかも。わたしもラカやナヤたちのかたきをうちたい。でも、らいかたちみたいになってもこまるから」


「多分だけど、主戦力は、美鈴ちゃん達になると思う。美鈴ちゃんとメナちゃんが融合して戦えば、多分、一騎打ちでは誰にも負けないと思うから。それに、魂の性質上私やクロちゃんに手を出せないって言う話なら、きっと融合した美鈴ちゃん達にも干渉できないと思う」


「確かに。マドシュターになっちゃえばミリュー相手でも戦えるし、なんなら複数相手でも戦えそう……」


「ちょっと待ってください! マドシュターって何ですか?」


………ってそっか。マドシュターって俺が長いから勝手にまとめとけってやってただけだった。


「魔法少女マジカルドラフトシュールスターの略称というか」


「「魔法少女マジカルドラゴンシュートスターです!!(だ!!) 2度と間違わないで!!(間違うな間違うな!!)」」


「あはは、息ぴったりだね」


「それならとりあえず、マドシュターにミリューの相手をしてもらって、俺達は来夏達の相手を。様子を見ながら、櫻かクロがマドシュターのカバーに入るって感じでいいんじゃないか?」


「ちょっとちょっと! マドシュターって何ですか!? 魔法少女マジカルドラゴンシュートスターです!」


「だって長いし……。それに、クロがマドシュターって言ってるんだからそれでいいだろ」


「バカップルめ…!」


「いやいや付き合ってないからね?」


いつの間にかカップリングされててびっくりしたんだけど……。いや、ちゃんと告白は断ったし、そのつもりなんて微塵もないんで。はい。辰樹のこと嫌いってわけではないんだけどね…。


「俺とクロって、やっぱりカップルに見えるのか…? そ、そっか……」


「見えません!!」


やっぱりってなんだやっぱりって! 普段から思ってたのか? というか、魔王もアレだったけど、辰樹も大概な気がしてきた。


「そんなどうでもいい茶番をするために集まったわけじゃないでしょ。話がまとまったなら、私はもう行きたい」


シロがそう言葉を発したことにより、とりあえず俺と辰樹を謎にカップリングするノリを回避することができた。まあ実際、どうでもいい雑談をしているうちに、今の間にもミリューが他の人間を来夏達のようにしている可能性がないとは言い切れない。それを考慮すれば、行動は早い方がいいかもしれない。


「よし、それじゃ早速…」


俺が言葉を発した瞬間、ドスンッと、ものすごい衝撃と共に、俺たちのいる部屋の壁が破壊される音がする。


「誰だ!?」


「皆構えて!」


壁に大穴が開き、外から誰かが入ってくる。壁に穴を開けたのは……。


「朝霧……去夏……」


来夏の姉、朝霧去夏だ。彼女の後方には、ミリューの姿もあった。


「感謝してるよ。敗北をきっかけに、色々と自分を見つめ直すことができてさ。そしたら、こんなことができるって気付いたんだ。他人の魂の掌握ってやつ。最初っからこうすれば良かったんだよ。こうしてしまえば、あとは私の干渉が効かない人間を始末していけばいいだけ。だからさ、殺しにきたよ。だから、大人しく死んでね。百山櫻。そして、クロ」


ミリューの襲撃を受け、各々が武器を構え、戦闘体制を整える。


「おらおらおらー!! 突撃!!!!!!」


約1名、いや、厳密には2名。先走ってミリューに攻撃するも、朝霧去夏によって止められる。


突っ走ったのは、いつの間にか融合していた美鈴とメナ、すなわちマドシュターちゃんだ。


「今の一撃を防ぐとは、中々やる…! しかし、最強はこの私!! 魔法少女マジカルドラゴンシュートスターだ!! 最強最強!!!!」


「うるさい子が来たね。でも、人数を減らしちゃっていいのかな? こっちの数は、1や2じゃないんだから、さ」


ミリューの後方から、茜や束、来夏達がゾロゾロとやってくる。

皆、今やミリューに魂を掌握されて、操られてしまっているようだ。


かなりの数の人達が、ミリューに掌握されてしまっている。

顔馴染みのある魔法少女から、何の戦闘能力のない一般人までもが、全てミリューによって。


「こんな………ひどい……」


「この状況を作りたくないなら、私を殺しとくべきだったと思うよ、櫻」


「そんなの……」


ああ、そうだな。俺も、ちょっと前までだったら、そう考えてただろう。けど……。


「櫻、そうはさせない、でしょ?」


その選択が間違ってたなんて、言わせない。絶対に。


「うん。そうだね。私達で………この状況を、止める」



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