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Memory143

呑気に行動しすぎたかな……。もっと徹底しておくべきだった。

どうにも、私の計画には粗が目立つ。私のスペック自体は完璧なはずなのに、どうしてこうもうまく行かないのか。


…イライラするな。全て壊してしまいたい。

前までは、転生はサブプラン、保険のようなものだと考えていたが、そろそろ転生の方法については調べておく必要があるかもしれない。


おそらく必要な条件は、強大な魔力の衝突、だろうね。“前回”もそうだった。でも、それだと条件が簡単すぎるような気もする。


だとすれば、『魔界』と『人間界』を行き来する際の歪み、そこに莫大な魔力をぶつけることによって、魂に歪みが生じる、というのが有力説だけど……。


「この状況じゃそれも無理そうか…」


「大人しくしてて。命まで取るつもりはないから」

『とりあえず、イフリートの魂は返してもらうわよ。櫻、いけそう?』


「多分、できると思う」


できるわけがない。魂の複数所持は、得意な体質を持つこの体(ミリューの体)だからこそ成し得たものだ。それすらできるなら、こいつは本当に……。


魂融合(ソウル・リ・ユナイト)…………あれ、やっぱりできない…?」

『私が既に櫻と融合してるからかしら? 何にしても、とりあえず一旦私の魂を私の体に帰してから、イフリート達の魂を取り出してあげたほうがいいかもしれないわ』


「無理だよ。君には」


「……どういうこと?」


「君が茜と融合できているのは、君達の間に絆が存在するからだ。お互いに信頼し合っているからこそ、互いの魂もまた信頼し合い、惹かれ合っている。でも、他人だとそうはいかない。他人のことなんて、そう簡単に信じられるわけがないんだよ。魂の融合というのはね、いわば裸で密着し合うことよりも密接な関わりなんだよ。もうほとんどセック」


『それ以上言ったら消し飛ばすわよ』


怖っ。今の私は無抵抗でか弱い美少女なんだからさー。もっと丁寧に扱うべきじゃない?


「失礼。まあ、言わんとしてることは伝わったかな。私の体は特異な体質だから、魂との融合も可能なんだけれどね。本来3つまで魂を所持できるんだけど。私の魂が特異なのも相まって、今は6つまで魂を所有できる」


「魂の融合には絆が必要なんだよね? だったら、どうして貴方はほかの魂と融合できているの?」


「簡単よ。さっき魂の融合を私はセック………ん“ん”っ。体を重ね合わせる行為だと表現したよね? なら、私が他の魂と融合しているのは、私の魂が、他の魂をレイp」


『櫻、やっぱりこいつ、生かしておけないわ。今ここで始末よ!!』

「茜ちゃん、気持ちはわかるけど、落ち着いて」


「せっかく分かりやすく説明してあげようとしているのに、人の親切は素直に受け取るものだと思うけどなぁ」


『あんたが変なこと言うから!!』


「……で、私をどうするつもりなのかな?」


まあ、私のことを倒したのが、クロじゃなくて助かった。アレにやられちゃ殺されててもおかしくないからね。一応人質作戦はできなくはないだろうけど、どこまで通用するんだか。


「とりあえず、皆と合流しよう。話は、それから」





☆★ ☆★ ☆★ ☆★ ☆★





魔法省に着いた。職員達にバレないように、定期的に“ブラックホール”を経由して、姿を消す。そうすれば、大抵見つからずに、内部に潜入することができる。標的は、魔法省大臣、正井 羽留利(まさい わるとし)だ。彼を脅し、全国の魔法少女達の協力を取り付けさせる。


……ここ、か。


俺は扉を勢いよく開ける。流石に、扉付近の警備は固かったため、その付近の警備員だけ、気絶させておいた。大臣の異常に気付き、駆けつける人材は、周辺には存在しないだろう。


「正井 羽留利だな?」


「なんだ、貴様は?」


「“死神”。お前の命を、刈り取りに来た」


恐怖を感じるよう、演出をする。できるだけ、不気味に、できるだけ、低い声で。


「大臣に何か御用ですか?」


秘書か何か、だろうか。そうか、部屋の中にいる人間は、気絶させていなかったんだった。


「大臣の命は、もうない。今日、この私に、その心臓を刈り取られるのだから」


大鎌を取り出す。我ながら名演技だ。かつてユカリとやっていた死神ごっこの成果が出ているかもしれない。


「ま、待て!! な、何が欲しい? 金か? それともなんだ……恨みでもあるのか? な、何が目的なんだ!?」


「……ある条件を飲めば、命は取らない」


「な、なんだその条件とは? さ、さっさと言わんか!!」


「近いうちに、翔上市に、大量の怪人による大規模な侵攻が行われる。その際に、全国の魔法少女への協力の取り付けを要請してもらいたい」


勿論、要求を呑まなくても殺すつもりはない。カナ達のことで、言いたいことはあるし、正直言って、恨みがないわけじゃない。でも、命を取る必要はない。だから、ただ、拷問して無理矢理にでも従わせる。

絶対に、従わせる。今の俺はもう、止まれない。止まっちゃいけない。やれることを、やるしかない。


「やはり、ミリュー様の言った通り、大臣の側についておいて正解でしたね」


大臣の側にいた、秘書らしき男が、何かを呟く。俺が脅しているにも関わらず、こいつはさっきから、怯える様子がなかった。不気味だ。


「自己紹介から致しましょうか。今の私は、『憤怒』。ミリュー様の忠実なる僕。そして、貴方を墓場へとお送りする者です」






☆★ ☆★ ☆★ ☆★ ☆★






窓から外へと投げ出される。……何も見えなかった。だが、確かに“何か”を食らった。

不可視の攻撃、か。威力はそこそこ。しかし、相手はあのミリューの手下。アンプタのこともある。どんな規格外な能力を有していたって、おかしくはない。


「困るんですよ。余計な手出しをされると、こちらの計画が狂う」


「関係ない。お前らの計画は、潰されて当然だ」


「貴方のように、どっちつかずで中途半端な人間に、誰かの計画を否定できる権利はありませんよ」


『憤怒』は銃を取り出し、その先を俺へと向ける。

ただの銃ではないだろう。『魔銃』と呼ばれる、魔力を込めて放つことのできる特殊な銃だ。


だけど、そんなもの、俺には通用しない。


「“ブラックホール”」


魔力による攻撃は、全て俺の“ブラックホール”で無力化できる。

そうか、こいつ、戦闘能力自体は大したことない。


そもそも、魔力自体が存在しないんだろう。おそらくは、ミリューから託された道具で、俺とやり合うつもりだったんだろう。


そんな程度で、魔法少女達とやり合っていけるわけがないだろうに。


「なっ……」


魔法省の大臣の防衛も、ミリューにとってはそこまで重要な者ではなかったのかもしれない。


「お前、多分ミリューに信頼されてないよ」


「っ……そんなはずは…!」


「使える人間は、考えた方がいいと思うよ」


こいつは、別にわざわざ殺す必要はない。そこまでの脅威は感じない。もしまた何か悪事をやろうとしたら、その時はその時だ。俺じゃなくても、どうとでもなる。


俺は軽く叩いて『憤怒』を気絶させておく。最初に吹き飛ばされたのは驚いたが、結局それもミリューの魔道具によるものだったんだろう。


本当に、大したことはなかった。


「とりあえず、もう一回大臣のところに行くか」


今の騒ぎで、少し周囲に気づかれたかもしれない。もう一度“ブラックホール”を使いながら、隠密に立ち回る必要があるな。


「止まれ」


「………これは必要なことなんだ。悪いけど、止まれない」


「そうか、なら、力ずくでも止めてやる」


背後から魔力を行使する気配を感じる。

瞬時に避けて、大鎌で魔法を弾きつつ、声の主の顔を拝む。


「やっぱり、千夏か」


「相談もしないで勝手に突っ走ってるみたいだからな。悪いけど止めさせてもらう」


俺の足を止めたのは、朝霧来夏の妹、朝霧千夏だった。





☆★ ☆★ ☆★ ☆★ ☆★





「ねぇルールー。そろそろいいんじゃない? もう待ちくたびれたよ〜」


「もう少し待つことを覚えた方がいいと思うわよ、ミルキー。心配しなくとも、その時は来るわ」


ルサールカは、大きなハンマーを持った、小柄な体格の魔族の少女、ミルキーにそう話しかける。


「えーん。もう勝手に動いちゃってもよくなーい? ねぇねぇ〜」


「ミリューが頑張ってるのに、それに水を差しちゃ悪いとは思わないかしら?」


「んー? でもミリューはもう失敗してるんでしょ? じゃあいいじゃん。馬鹿だよねー。もうとっくにルールーに計画全部ばれてるのに、裏でコソコソやってるつもりでさ」


「どうせ今行っても面白くはならないわよ? もう少し、待った方がいいと思うけれど」


「んーわかったよ。もうちょっとだけ待つ。でも、クロ、頑張ってるねー。ま、こんだけ頑張っても、どうせ組織には逆らえないんだけどねー」


ミルキーと呼ばれる少女は、スカートのポケットから一つのボタンを取り出す。


「あら、もう使うの?」


「うーん。そうだなぁ。今のクロは、櫻達との仲があーんまりっぽいからなぁ……。ちゃんと仲直りするまでは待つよ。面白くないからね」


「そう。おもちゃに逆に遊ばれないようには気をつけなさいね」


「わかってるよー。それに、このボタンがあれば、クロは絶対私に逆らえないんだからさ」

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