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Memory13

「ここがこれから住むアパート………」


クロは現在、組織から用意されたアパートへやって来ていた。

アパートは2階建てになっていて、クロの部屋は2階の一番奥の部屋だ。


(ここからでも学校は通えるし、治安も悪くなさそうだ。無駄にそういうところは配慮してあるんだな……)


意外と住み心地は悪くなさそうだなと、そう思いながらクロは部屋に入ると、すでに部屋の中には荷物が運び込まれていた。

冷蔵庫もあるし、衣類も既にクローゼットの中に入ってある。

全部組織から支給されたものだ。

金銭面に関しても組織から支給されるため心配はない。


(意外と住み心地は良さそうだな……)


「とりあえず、近所の人に挨拶でもしに行くか」




☆★ ☆★ ☆★ ☆★ ☆★




「君が新しく引っ越してきたお隣さん? 私は黒沢雪! よろしくね」


早速近所の人への挨拶周りをはじめたクロは、まず隣の部屋に住んでいる二十代前半くらいの女性から挨拶を進めることにした。


「影山クロです。これからお世話になります」


「黒沢にクロ……黒被りだね!」


「あ……はい……あ、これ……つまらないものですが……」


結構快活な女性なんだな、とクロは感じる。

どことなくユカリと雰囲気も似ている気がするが、クロの周りには明るい人間が集まってくるのだろうか。いや、そんなことはないだろう。クロ自身そんなに明るい性格ではないし、シロなども明るい性格な訳ではない。ちなみに彼女に渡した菓子折りに関しては組織側から用意されたものだ。



「あ、ありがとう! 律儀に菓子折りまで持ってきてくれるなんて、良い子なんだね。今度お返しするね。ところで親御さんは?」


「あーちょっと事情がありまして、1人暮らしになります。菓子折りに関しては挨拶として持ってきただけなので、お返しはわざわざしなくても大丈夫ですよ」


「その歳で1人暮らし!? 大丈夫? 寂しくない? 何かあったらお姉さんに相談してもいいからね!」


そういえばクロの年齢は14くらいだった。14で1人暮らしを始めるなんて普通はないだろう。大抵の子供は誰かしら保護者がいる。

クロは正直今まで自分の年齢を気にしたことはなかったが、ここに来て自分の年齢を改めて再認識した。


(そういえば俺ってまだ子供なんだな……前世を合わせたら……って前世でもどれくらい生きてたかわからないけど、多分成人はしてるような気がするけど)


クロは自分がどのような前世を歩んできたのかを知らないため、前世でどのくらいの年齢だったのかがわからない。ただ、性自認が男であるあたりを見ると、今世よりも前世の方が長い人生だったのではないかと勝手に推測している。


「それじゃ、私は他の人に挨拶周りに行くので……」


「1人で大丈夫? このアパートには優しい人しかいないけど、やっぱり子供だし私が……」


「1人で大丈夫です。気にかけてくれてありがとうございます」


黒沢が物凄く心配したような顔で伺ってくるが、流石にそこまで迷惑をかけるわけにはいかないだろう。

クロは丁寧にお断りした。




☆★ ☆★ ☆★ ☆★ ☆★




「先日越してきた影山クロです。これ、つまらないものですが」


「あら、わざわざありがとう。まだ小さいのに、偉いわね。わたしは蒼井冬子よ。ちょうどわたしにも貴方くらいの娘がいるの。今は出かけてるけど、帰ってきたら紹介するわね」


下の階には蒼井冬子(アオイ トウコ)という女性が住んでいた。

髪は青色で身だしなみはきちんとしており、教育の良さが伺える反面、よく見ると少し顔色が悪いというか、無理して笑顔を作っている感じがする。普段は化粧で誤魔化しているのだろうか、目の下にはくっきりとクマが浮かんでいる。

クロと同い年の娘が1人いるらしいが、この人は本当に大丈夫なのだろうか。


「そうだわ。娘が帰ってくるまで家でお茶しない? おつかいを頼んでるんだけど、もう少しで帰ってくるから」


「じゃあ少し、お邪魔させていただきます」





☆★ ☆★ ☆★ ☆★ ☆★




ということで、クロは少し部屋にお邪魔することになり、冬子の娘が帰ってくるまで雑談をすることになった。


「あの、部屋に置いてあるのって……水鉄砲ですか?」


「えぇそうよ。わたしの娘のモノなんだけど、あの子、たまに水鉄砲を買ってくるのよね。外に持って行ってる時もあるけれど、水遊びが好きなのかしら?」


「夏休みとかでですか?」


「夏休みに限らずって感じねぇ…。学校から帰ってきたらすぐに水鉄砲を持って出ていくこともあるし、お金は使っていないはずだから施設で遊んでるって感じもしないのよね」


「それ、大丈夫なんですか…?」


中学生ならまあ水鉄砲で遊ぶこともあるのだろうが、親の目もなしに平日の外に水鉄砲を持っていく中学生というのはどうなのだろう。水鉄砲で通行人に悪戯したりとかしてなければいいが。


「そういえばクロちゃんはどこの中学校に通ってたの?」


「翔上中学校です。通ってたっていうか、これからも通い続けますけど」


「翔上中学校ってことは、わたしの娘と一緒ね。前からこの近辺には住んでたの?」


「そうですね。事情があって最近引っ越した感じです」


「そうよね。そういえば、親御さんは………」


「あー…………。1人なので………えっと……」


「あっ……。そうなのね…………引っ越ししてきたってことは……やっぱりこの間ので……」


冬子はそうやってぶつぶつと独り言を言っている。

多分、親のいない可哀想な子だと思われてるのだろうか。

あながち間違いでもないのかもしれないが、クロ自身親が存在しないことに寂しいと言った感情はない。元々一緒に暮らしていたなら話は別だが、そもそもクロはクローン人間だ。親と言える存在は、シロか、組織の人間になるのだろう。もっとも、クロにとってはどちらも親とは認識していないのだが。


「あの……この間のって何ですか?」


「この間街が破壊されたじゃない? その影響でこちらに引っ越してきたんじゃないの?」


この間の街の破壊とはクロが怪人を引き連れて街を襲撃したことだ。

冬子はクロのことを、あの襲撃によって家と親を失った可哀想な子だと認識しているらしい。


逆だ。

あの惨劇を起こしたのは他でもないクロ自身だ。

だから冬子の考えているようなことはない。


ただ、


(本当に家族を失った人も……もしかしたら……)


いるのかもしれない。クロはあの襲撃で死者を出さないように、気をつけながら破壊していた。だからおそらく死者は出ていないだろう。だが、


(誰も死んでなかったとして……家を失った人は……)


だめだ。


考えるな。


考えちゃダメだ。


かんがえるな。


かんがえるなーーー







「クロちゃん?」


「あっ、はい!?」


「そ、そんなに大きな声で返事しなくても良いわよ…?」


何も考えないようにしていたから、急に声をかけられた時つい大声を出してしまった。


「すみません。考え事してました。後、街の破壊は関係ないです」


むしろ考えないようにしていたのだが、そんなことを言う必要はないだろう。後、変な誤解を招いておくと厄介なので、訂正しておく。


「そうなのね。よかったわ。あの時の被害を受けてたわけじゃないのね」


「まあ……そうですね…」


(俺って、ずるいやつだな……)


(受け入れなければいけないのに、現実から目を背けて………)


(たくさんの人の人生をめちゃくちゃにしてるのに、平然と生きて………)


(そのくせ心の底で誰かに……………)


「クロちゃん? 本当に大丈夫? ボーッとしてるけど……」


「あー。大丈夫です。心配かけてすみません」


人と会話してるのだ。物思いに耽るのは後にしよう。


ガチャっ


「ただいまー!」


玄関が開く音がする。どうやら娘さんが帰ってきたみたいだ。


「おかえり八重。お客さんが来てるわ。貴方と同い年で、今日からこのアパートに住むことになったんですって」


(ん? 八重? どこかで聞いたことがある気が……)


「へー。はじめまして。私の名前は蒼井や………え………」


「あっ…………………」


どうやら冬子の言っていた娘というのは、真白と同じく魔法少女をやっている、マジカレイドブルーこと蒼井八重らしい。




☆★ ☆★ ☆★ ☆★ ☆★





「まさかクロちゃんと八重が同じ学校で、しかも知り合いだなんて知らなかったわ」


「ここに引っ越してくるなんてね………流石に予想できなかったわ」


「そうだわ。わたし買い出しに行かなきゃいけないの。貴方達は2人でゆっくり話すと良いわ」


そう言って冬子は部屋を出て行ってしまった。


「娘におつかい頼んだって言ってなかったっけ? 別で買いに行くってこと?」


「私達に気を使ったんでしょ」


八重がそう言った後、暫く部屋が静寂に包まれる。

沈黙に耐えきれなかったクロは、八重に質問を投げかける。


「何も聞かないの?」


「………何? 聞いてほしいの?」


「別にそういうわけじゃないけど………」


「まあ、お母さんがせっかく気をつかってくれたわけだし、何か話しましょうか。どうして急にこのアパートに引っ越してきたの?」


「私もよくわからないけど、厄介な組織が出てきたから出会ったらそいつらの処理を頼むっていうのと、魔法少女と友好関係を築けって言ってた気がする。何でこのアパートに引っ越すことになったのかは正直わからないけど………」


一応ユカリとクロを引き離すためなのではないかという推測は立てているが、八重はユカリのことなど知らないだろう。それに推測はあくまで推測であるのもあって、わざわざ伝える必要がないというのもある。


「厄介な組織ねぇ……。それより、魔法少女と友好関係を築けっていうのは気になるわね。前までは完全に敵って感じだったじゃない?」


「それも正直わからない。最初は厄介な組織を潰すために他の魔法少女達と協力してほしいって意味だと思ってたんだけど、それと関係なく魔法少女とは仲良くして欲しそうな感じはした」


「実は貴方愛されてるんじゃない? 貴方のこと、実の子供のように思ってるから、友達作りに励んでほしいって思ってたりしてね」


「それはない」


流石にありえない。幹部の男はクロを使い捨ての道具としてしか見ていない。


「ま、貴方の体の中に爆弾仕掛けてるわけだし、大方魔法少女と仲良くさせといて、時が来たら魔法少女もろとも貴方を爆破させるつもりだったんじゃない? そうだとすると、最初に敵対させていたのが謎だけど」


「その可能性はあるかも。でも………え…?」


八重は、クロの体の中に爆弾が仕掛けられていることを知っている……?


「どうして……爆弾のこと……」


「触れられたくなかったかしら? 安心して、盗聴器の類は貴方には仕掛けられてないから、私にバレても起爆はしない。後、真白達にも言うつもりはないから」


いつから? どのタイミングで知られた?

もしかして組織のスパイなのか?

わからない。どうすればーーー


「ただいまぁ。今日の晩御飯の食材、買ってきたわ」


「おかえりなさい、お母さん。って今日の晩御飯の食材って、私がおつかいで今日買ったやつじゃない!」


「あら、うっかりしてたわ。これだと量が多すぎるわね……。あっ、そうだわ。せっかくだしクロちゃんも晩御飯一緒に食べない?」


「えと、じゃあ、せっかくなので、ご一緒させていただきます」


結局どうして八重がクロの爆弾のことについて知っていたのかは聞きそびれた。

だが、今のところ八重はクロのことが嫌いなわけではなさそうだし、悪いようにはしないだろう。


(どこから情報が漏れ出たのかだけは探る必要があるな……)


そう思うが、今は探れる状況ではない。クロはとりあえずは蒼井家の夕食にお邪魔させていただくことにした。

【魔法少女】


クロ


組織に属する魔法少女。主人公。


使う属性は光→闇→闇×光


・黒い弾


普通の攻撃では分裂してしまい、また自動追尾の機能も搭載されている魔力の塊。


・ブラックホール


相手が大規模な魔法を形成してきた際に、その全てを吸収して自身の魔力に変換することができる魔法。

ただし、容量を超えると身体に多大な負担がかかり、場合によっては死に至る可能性も持ち合わせている為、慎重に使用しなければならない。


・還元の大鎌


真っ黒色の大きな鎌。イメージでいうと死神の鎌的なもの。攻撃力が高いわけではないが、攻撃した相手の魔力を奪うことができる。


・『ルミナス』


闇属性の魔法と光属性の魔法の複合魔法。相手の魔法によって拘束された場合に、それを解除する効果を持つ。ただし、友情魔法(マジカルパラノイア)などの特殊な魔法には効果がない。


・『魔眼・無効魔法』


闇属性の魔法と光属性の魔法の複合魔法。相手の目と自身の目を合わせることで発動できる。相手の魔法を全て無効化することができる。




シロ/双山(フタヤマ) 真白(マシロ)


クロの双子の妹。たった1人の大切な家族であるクロを組織から助け出したいと考えている。


使う属性は光。




百山(モモヤマ) (サクラ)


ある日突然魔法少女の力に目覚めた普通の女の子。皆が手を取って仲良くなれる平和な世界を目指している。


使う属性は無属性。


・『桜銘斬(おうめいざん)』 


桜の模様が入った日本刀。魔力で強化されているため、普通の日本刀よりも強い。櫻がメインで使っている武器。


・『大剣桜木(たいけんさくらぎ)』 


桜の模様が入った黒い大剣。体の大きい敵や、敵に対して大ダメージを与えたい際に用いる。


友情魔法(マジカルパラノイア)


櫻と他の魔法少女のうち誰か一人が揃った時に使える必殺魔法。


『春雨』 櫻×八重

敵に対して局所的な魔力の雨を降らせる魔法。食らった敵は無属性魔法の特性によって体を無に返される。さらに水属性の特性の闇属性の魔法を浄化する効果も備えている。


『春風』 櫻×束

風の弓で無数の矢を放って攻撃する。全ての矢は風に乗って相手を追尾し、迎撃されない限り必ず命中する。さらに、一つでも命中すれば相手の動きを封じることができる。





津井羽(ツイバネ) (アカネ)


最初に魔法少女として活動し始めた赤髪ツインテの少女。

面倒見のいい性格をしており、束や八重からはよくいじられている。


使う属性は火。





蒼井(アオイ) 八重(ヤエ)


茜の次に魔法少女になった少女。常に冷静で、仲間に的確な指示を出す。

学校では委員長をしており、成績は優秀である。


使う属性は水。


・『結界・アクアリウム』


特定の形を地面に描くなど、何かしらで表現した際に魔法陣を発動させ、簡易的な結界を施す魔法。結界内には水魔法で生成された雨が降っており、その結界内の闇魔法を浄化する作用を持っている。自身の魔法力ではなく、地脈の魔力を利用するため、魔力が少ない時でも条件さえ満たせば発動可能である。





深緑(ミロク) (タバネ)


一番最後に魔法少女になった少女で6人の中で最年少である。

怪人を前にして放心状態になっていたところを櫻達に助けられ、以降共に戦うようになった。


使う属性は風。


・ウインドバインド


風魔法の力で相手を拘束する技。拘束している間、他の魔法を行使することができないので注意が必要。


・風薙ぎ


風魔法の力で相手を斬りつける技。視認できず、音もないため、敵に気づかれずに攻撃することができるところが強み。威力もかなり高く、くらえばただでは済まない。





朝霧(アサギリ) 来夏(ライカ)


金髪の髪をローテールにした活発な少女。


使う属性は雷。


・『雷槌ミョルニル』


体中に電気を纏わせ増幅させた後、手のひらにいっぺんに電気を集中させて一つの槌を作り、そこから高圧の電撃を浴びせる技。





ユカリ


クロのデータを基にして造られた魔法少女。


使う属性は闇。





朝霧(アサギリ) 千夏(チカ)


Dr.白川の研究に協力している魔法少女。


使う属性は地。





???


使う属性は◻︎





???


使う属性は◻︎





???


使う属性は◻︎





???


使う属性は◻︎







【その他】


風元(カザモト) (ヤスシ)


シロとクロの担任の先生。目の下にクマができていて、いつも怠そうに授業をしている。





双山(フタヤマ) 魔衣(マイ)


保健の先生で、魔法について詳しい謎の人物。





幹部の男


クロを見張っている組織の幹部。






幹部の女


5人いる組織の幹部の内の1人





Dr.白川


組織に属している科学者。自分の娘ですら実験体にする根っからの科学者。





散麗(ちぢれ)


束と一緒に魔法少女として活動していた少女。怪人との戦闘で死亡した。






黒沢(クロサワ) (ユキ)


クロの住んでいるアパートの隣の住人。明るく元気な20代。





蒼井(アオイ) 冬子(トウコ)


八重の母親。クロの住んでいるアパートと同じアパートに住んでいる。

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― 新着の感想 ―
[良い点] クロ救済の最低条件が達成された事 [一言] 体内に爆弾&監視って事情を把握してる外部協力者がいないとどうにもならんからなぁ・・・ まあまだ把握してるだけで協力者になれるかどうかは今後次第な…
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