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Memory132

うん。ここら辺でいいだろう。近くに櫻がいるのは確認できた。ここらでカナを”ホワイトホール”によって“ブラックホール”から出せば、勝手に櫻がカナのことを保護してくれるはずだ。多分、櫻はまだ俺のことを探してるんだろうけど。


「カナ、ここらへんで桃色の髪を持った、櫻って魔法少女がいるはずだから、その子に助けを求めて。クロに言われたって言えば、話は通じると思う」


カナ達のことは多分、櫻達には共有されてない。もしかしたら魔衣さんが話していたのかも知れないが、多分ないだろう。でも、櫻なら大丈夫だ。櫻は人を無闇矢鱈に疑ったりしない。カナのことも、きっと受け入れてくれる。


「クロはどうするの?」


「他の仲間を探してくる。大丈夫。あとで合流するから」


「うん。わかった」


ごめんカナ。合流するつもりはないんだ。

でも、櫻といれば、カナはもう安心だから。


だから。


「じゃあ、また」


「うん。またね」


多分もう、会うことはないだろう。





☆★ ☆★ ☆★ ☆★ ☆★





鮫島刻と吸血鬼の男は、クロ、カナとの戦闘を切り上げ、とある場所へと向かう。


「昔っからシスコンだった。あいつの大切な人間なんて限られてる。だから、探っておいて正解だった」


「それは?」


「元クラスメイトの現在の動向。最近あの人が気になったことあって探ってるみたいでさ。ま、端的にいうと全員殺してみてってお願いされたんだよ。最初は抵抗あったけど、やってみると案外慣れるもんなんだな」


「俺は聞いてないぞ」


「お前と会う前の話だからな。って、お前は俺があの人とお前と会う前から交流あるの知らないんだっけか?」


「そうだな。というか、その行動に何か意味があるのか?」


「さぁな。転生の条件を調べるのどうのこうの言ってたが。まあ詳しくは分からん。どうも全員失敗に終わったってことだけは聞いたけどな」


『で、これがその副産物』と言いながら、鮫島は一つのメモを取り出す。


「そのメモはさっきのとは何か違うのか?」


「これはその元クラスメイトの親族の情報だよ。で、これの………ええとここだな。この黒沢雪ってやつ、いるだろ? これが俺達が人質にとる人間の名だ」





☆★ ☆★ ☆★ ☆★ ☆★





「ほう、お前がクロと仲良くしているとかいう輩か」


辰樹君、ではない? いや、彼のことはよく知らないけど、でも雰囲気が明らかに違う。こう、オーラ? 的な。いやまあ、僕にはあんまりよく分からないけど。


「えーと、どちら様?」


「ああ、魔王だ」


Oh…MAO……。マオー…。魔王!?


………え、魔王って何?


「魔王、とは何ですか?」


「魔の王だ」


「すぅー………」


なんか凄い面倒くさそうな奴だ。


「魔の王、といいますと?」


「魔界で王をやっていた。そのまんまの意味だ。魔族の王。それ以外に説明のしようがない」


「そんな魔王様が僕に何のようで?」


「少し見に来ただけだ。だが、そうだな。杞憂だったらしい。お前には死相が出ている」


会って早々失礼な奴だな。それに、杞憂だったっていったよな。死相が出ているのに、杞憂だっただって?

じゃあ、魔王(こいつ)は、一体何に対して心配してたっていうんだ。もしかして、僕に死んで欲しいのか? いやでもそれなら直接殺せば……。ああ。なるほど。そういうことか。


こいつの目、僕に似ているな。


「悪いけど、僕は死ぬつもりはないよ。あんたは死んで欲しいって思ってるのかもしれないけどね。邪魔なんだろう? 僕のことが」


「ほう?」


こいつは僕のことを、“クロと仲良くしている輩”と表現した。そして、僕と似たような目。

彼の中には、傲慢な独占欲のようなものがあるように見える。そして多分その対象は……。


「魔王ともあろうものが、1人の魔法少女に執着するなんてね。驚いたよ。でも知ってるかい? 彼女の秘密」


「なんだ? 前世のことか? それとも何かまた別の秘密でもあるのか? それなら教えてもらいたいな」


そこまで調査済みってわけですか。こいつは中々根深いな。しかし、分からないな。何で魔王なんて大層な奴が、あいつに執着するんだか。


「しかし、そこまで知られてしまっていてはますます邪魔になるな。まあ、構わん。どちらにせよお前は、そう遠くないうちに死ぬ」


「直接手は下さない、いや、下せないか。そうだろう?」


「くだらんな」


こいつの目的は、クロに好かれ、独占することそのものだ。ここで僕に直接危害を加えれば、間違いなくクロからの評価は最悪になるだろう。だから下手に手を出せない。


あと、多分だけど、あいつに敵を殺させるように誘導したのも、多分魔王(こいつ)だ。僕もこいつと似たような思考回路をしているから分かる。あいつに一線を越えさせて、罪悪感から櫻達と共に歩むことを拒否するように誘導し、孤立してしまったところで、あいつの心の隙間に入り込むつもりなんだろう。


何よりタチが悪いのは、あいつが多分、魔王(こいつ)に誘導されたっていう風に思えないように思考を誘導されてるってことだろう。この前あいつと話していて、魔王にそう言われただとか、魔王が言ってたからなど、魔王が起点となって殺しを行ったなんて話は1ミリも言ってなかった。つまり、無意識の内に、自覚もないまま思考を誘導されている可能性が高いってことだろう。


まあでも残念だ。僕はあいつの親友だ。魔王の危険性も、計画も、全部洗いざらい話してやる。仮にあいつと魔王の仲がそれなりに良かったのだとしても、親友の僕と、会って間もない魔王(こいつ)。どちらの言うことを聞くかなんてのは明白だ。


「ま、精々頑張りなよ。僕は親友として、お前の望みを叶えさせるようなことは絶対にさせないけどね」


「そうか。別に構わん。ああ、そうだ。言い忘れていたことがあったんだった」


「何かな?」


「おあしすアパートだとかいう場所に忘れ物をしてしまってな。魔界の虫なんだが、奴は危険でな。多少魔力のあるものならば何の害も与えられないが、魔力を一切持たないような人間ならば噛まれればたちまち致死量の魔力を供給され、死に至ってしまう虫なんだ。回収しておかねばな。しかし、今日はもう歩き疲れた。回収は明日にするか」


おあしすアパート? 確か、雪ちゃんが住んでいるアパートがそんな名前だった気が……。


待てよ……? こいつはクロの前世のことを知っている。つまり、クロの妹が黒沢雪であることも、おそらく知っている可能性が高い。ということはつまり…………こいつの狙いは…。


「クソっ、やり方が汚いなっ」


「何のことだか」


クロは今は戦いにいってるはず。だから助けを求めることはできない。櫻達とコンタクトを取るには、時間が足りないかもしれない。僕は通信機器を何も持ってないのだから。つまり、今すぐにでも助けに行かなければ、雪ちゃんが危ない。


あーもう!

僕が動くしかないじゃないか!


「絶対に全部話してやる。お前の本性も、このやり口も、全部だ。覚悟してろっ!」


「その前に死体にならなければ、の話だがな」


やかましいな。くそっ、何でこんなタチの悪いやつに好かれるのかなぁ。あいつは…。





☆★ ☆★ ☆★ ☆★ ☆★





来夏は、姉である去夏のピンチを察知して、急いで姉の元へと向かっている最中であったが、突然自身が所持していた携帯電話の音が鳴り響く。どうやら、誰かが来夏に電話をかけてきたらしい。


『もしもし、来夏ちゃん』


「櫻か? 今までどこで何して……」


そして、その電話の相手は櫻だったようだ。来夏は足を止めることなく、そのまま走りながら電話対応を行う。


『今さっき、カナちゃんって子と会ったんだけど、クロちゃんと知り合いみたいで、どうもクロちゃん、敵と戦うために仲間を探すって言ってどこかに行ったらしくて……』


「ああ、それで?」


来夏は少し苛立ちながら話す。去夏(あね)の大ピンチを感じ取った今の来夏は、少々焦っているためだ。


『これは、私の直感なんだけど…‥。多分、クロちゃんは1人で敵と戦うつもりなんだと思う』


「はぁ?」


『だからお願い。来夏ちゃんのお姉さんの方へは、私が行くから』


「………そこまでお見通しなのかよ」


櫻は去夏と一緒に行動しているわけではないため、彼女のピンチを知る由もないと来夏は思っていたのだが、どうやらそこも把握済みらしい。


「分かった。クロの方は任せろ。その代わり、猿姉のこと頼む」


『うん。来夏ちゃんも気をつけて』

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