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Memory125

「行くのかい?」


大人びた魔法少女、古鐘は、この場から去ろうとしている人造の魔法少女、ラカに対して問いかける。


「貴女に任せておけば、カナは大丈夫だと思うから」


「単独で行動するのは良くない。しばらくはここに残って…」


「悪いけど、私は縛られるのが一番嫌な性分でさ。安心しなよ、1人で突っ走ったりはしない。必ず生きて、もう一度ここに戻ってくる。全部終わらせてから、ね」


ひらひらと手を振りながら、ラカは去っていく。


「そうか……。くれぐれも気をつけて」





☆★ ☆★ ☆★ ☆★ ☆★



「やめておけ。死ぬぞ」


目の前にいる魔法少女、奴に、ユカリ達を殺した奴に、報いを、死を与えてやろうと、大鎌を構え、戦闘体制を整えていた俺だったが、突然肩を引っ張られ、止められる。

振り返ると、そこには辰樹の見た目をした魔王がいた。


「邪魔するな。こいつはユカリ達のことを!!」


たとえ相打ちになったとしても、あいつだけは許せない……。絶対に殺す。だから、邪魔はされたくない。これは俺のケジメでもある。ユカリ達を守りきれなかった、俺へのケジメだ。俺がもっと早く、命を奪う覚悟を決めることができていれば……。俺がもっと、保身に走らずに、他人のために動けていれば……。後悔せずにはいられない。俺は結局、自分のために、自分の好きなように動いてしまっていた。そのせいで、結局ユカリ達を失うことになってしまった。保身に走ったせいで、自分が綺麗なままでいようとしたせいで、大切な存在が、帰らぬ人となってしまったのだ。


「無駄死にするだけだ。やめておけ。お前じゃ敵わん。俺でも、奴の相手はしたくないと思うくらいだからな」


「だからって引き下がれるか。こいつは放置しちゃいけない奴だ。生かしちゃダメなんだ。今ここで殺さないと、後悔する。今までもそうだった! 俺は、いつも、ためらって……結局……」


「魔族の女は、まだ脈があるな……。俺の力があれば、助けることは可能だろう。他は死体だからな。助けようもない」


「ああそうだよ。あいつが、皆殺しにしたんだ。だから……!」


「……仕方ない。一旦冷静にさせるか」


魔王は、俺のことを掴んでいる手をはなし、俺の背後に立つ。


「しばらく寝て頭を冷やせ」


魔王がそう言った瞬間。俺の意識は途絶えた。





☆★ ☆★ ☆★ ☆★ ☆★





「はぁ………あいつ、どこほっつき歩いてるんだよ……」


櫻からクロの様子がおかしいと聞かされ、愛もまた、櫻と同様にクロのことを探していた。

適当にぶらぶらと、あてもなく歩き回るが、当然それで見つかるはずもなく……。


「てかそもそも、何でスマホも携帯も持ってないんだよ…。いやまあ僕も持っていないんだけどさ。どうかと思うよ? 今の時代、報連相は大事でしょうに」


愛もクロも携帯やスマホを所持していない。当然、櫻達は持っているのだが、クロは最近まで組織で過ごしてきたためか、携帯を必要としてこなかったし、愛も同様に最近まで組織にいたというのと、そもそも2年前に生まれ直したばかりだったという理由で携帯やスマホの所持をしていなかったのだ。


「1人見っけ」


そんなわけで、街中をぶらぶらと歩いていた愛だったが、突然、見知らぬ1人の少女に指をさされる。


(誰この子? もしかして魔法少女?)


「えーと、名前なんだったっけ? 櫻? 来夏?」


一回顔見知ったけど名前覚えてないわくらいのテンションでそう聞いてくる少女に、人違いでもしているのだろうかと、もしそうなら多分櫻や来夏の知り合いなんだろうなと、愛はそう思いながら、自身の名を答える。


「愛だよ。親元愛」


「あーそうだそうだ。じゃあ殺していいね」


「は…?」


しかし、少女は愛の名前を聞いた瞬間、背後から複数の触手を生み出し、それらの触手一本一本に魔力を込めて行く。

先程の発言に加えて、明確な殺意を持って魔力を込め、攻撃の姿勢をとってきている姿を見るに、愛のことを本気で殺しに来ているということは明白だ。


「無能は与えられた仕事しかこなせない。でもね、有能な奴は、言われなくても上が必要としていることを汲み取って働くことができるの。何が言いたいかっていうと、与えられた仕事をただこなすだけの馬鹿どもと違って、私は有能だということ。貴方は私の有能さを恨んでね。私が無能だったら、貴方は死ななかっただろうから。あ、でもあり得ないか。だって私は有能だから」


少女の触手が、愛に牙を向く。


しかし、愛は戦闘をこなせるほどの魔力を持っていない。

つまり、これから先待っているのは。


強者による、弱者の蹂躙だ。




☆★ ☆★ ☆★ ☆★ ☆★




来夏は、『影』を倒し、相手の戦力を削ったことによって、多少は動きやすくなるかのように思っていたが、実際にはそうではなかった。


(さっきより動きが洗練されてきていないか?)


影を使ったワープこそしてこないものの、人間の男の動きは『影』が戦闘に加わっている時よりも数段キレの良いものとなっており、なんなら『影』を倒さない方が良かったのではないかと思うほどのものだった。


「前より動き良くて不思議か? 残念ながら、『(あいつ)』はお目付け役として加わってただけだし、連携が上手く取れてなかったから、むしろお邪魔虫だったんだよ。動きが良いのは、そのお邪魔虫がいなくなったからってわけだ」


よくよく考えれば、ワープ先も自分で決定しているわけじゃないし、戦闘中に別の場所に飛ばされてすぐに対応しろというのは中々厳しいものがある。そう考えると、人間の男と『影』の相性はあまり良くなかったのかもしれない。


(1人持って行って崩すプランが台無しだな)


来夏の額に少しの汗が垂れる。が、来夏は余裕の笑みは崩さない。この状況でも、彼女は負けるつもりは一切ない。


だが……。


「攻撃が飛んでくるのは正面だけじゃないぜ」


背後からの攻撃…。

そう、敵は2人。何も真正面から向かってくる人間の男だけが来夏の敵というわけではない。


後ろでただひたすらに出血を繰り返す吸血鬼の男。彼もまた、血液を操作し、来夏の背後に忍ばせることで不意打ちを狙った攻撃を仕掛けているのだ。


いつどこから攻撃が飛んでくるかわからない状況で、正面の敵にも集中しなければいけない。当然、来夏といえど、そこまでの戦闘を強いられれば消耗する。


(仮にここで勝てたとして、束達の方へ向かうのは無理そうだな)


別に勝ちが見えないというわけではない。だが、できればここで全てを出し切ってしまいたくはないのだ。できるだけ体力を温存して、束達が戦っているアンプタという少女との戦闘で本領を発揮したい。だが、この状況だとそうさせてくれそうもないのだ。


「『乱泉(みだれいずみ)』」


「んなっ」


と、そんな風に頭を巡らせる来夏だったが、吸血鬼の男による不意の攻撃に体のバランスを崩してしまう。

それにより、正面の人間の男からの攻撃を避けられない状況に落とし込まれてしまう。


(まずい……死にはしないが、このままだとモロ一発いれられる……)


ダメージを最小限に抑えるため、両手を前に出し、防御の姿勢を取る。

男の拳が、いよいよ来夏へあたるかと思われた時。





風を切る音が、聞こえた。



人間の男は、風の音を契機に一気に後ろへ退避する。


一瞬束が風魔法によって援護したのかと、来夏はそう思ったが、体勢を整え、周囲を見てみると、まず、自身が先程いた場所の少し前の地面には、一本の矢が刺さっており、その矢が放たれたであろう場所を見てみると…。


「2対1なんて卑怯だと思わない? よくないよねぇ。子供相手に、大人が本気出したらダメでしょ。ねぇ、鮫島君」


「誰だお前?」


人間の男は、怪訝な顔をしながらそう聞く。


「私はラカ。ただのラカだよ。えーと、来夏、でいいんだっけ? 加勢するよ」



ふと思った。ラカと来夏って名前似てるね

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