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Memory123

とりあえず、しばらく櫻達とは距離を取ることにした。今の精神状態では、櫻達と普通に接することもできそうにないからだ。それに、俺自身が、純粋な彼女達と関わるのが、苦しいというのもある。


魔王はまたどこかへフラフラしているのだろう。あいつの考えていることはよくわからない。一応辰樹の体を使っているわけなので、辰樹の家族が心配したりしていないかなどと聞いては見たが、そこのところは大丈夫だと言っていた。上手いことやってくれてるといいのだが……。


「…………」


ところで。

目の前に体育座りをして不貞腐れてる少女がいたら、どうすればいいんだろうか。


A.とりあえず声をかけてみる。



「何?」


「えっと………。そんなとこで何してるのかなって」


「はぁ? 見てわからない? 座ってるのよ。皆るなのこと無視するんだから」


彼女の名は閃魅光。シロの友人で、反射の魔法を持つ魔法少女だ。

そういえば、アストリッドに見捨てられた後、どうしてるのか分からなかったな。


「はぁ……。お腹すいた」


「え、何も食べてないの?」


「普通に食べたわ。でもまたお腹減ったの」


「えぇ……」


てっきり身寄りがないのかと思ったら、どうやらそういうわけでもないらしい。かといってなんでこんなとこで座り込んでたのか。

もしかして、普通に構ってちゃんなだけか?


「そういうわけだから、奢って」


「え?」


「ありがとう! 優しいんだ」








というわけで、光にご飯を奢ることになりました。今現在、俺は適当に近くにあったファミレスで食事をしています。

お前金あるのかって? 一応持ってるよ。組織にいた時は持ってなかったけども。


まあ、自分で稼いだお金とかではなく、魔衣さんから支給してもらってただけなんですけどもね。まあ、お金がないと食事も碌にできないし、世話になりっぱなしなのはたまに申し訳なくなるが、仕方がない部分もある。


組織にいた頃は、誰かの食べかけだろみたいな食事だったりとかで、碌なもの食べさせてもらえなかったから、正直食事のありがたみっていうのはひしひしと感じているところはある。といっても、最近は食欲がなくて、1日1食なんてことも当たり前みたいになってきているところはあるんだが……。


「ありがとう…。本当に奢ってくれるとは思わなかったわ」


「そりゃああいう頼まれ方したら、断りにくいし…」


「しろはどうなったの?」


「どうって」


「洗脳されてたんでしょ。どうなったのよ」


「それは……」


シロの洗脳については、多分まだ解けてない。

アストリッドは既に捕えてあるから、無理矢理聞き出すことは不可能ではない。でも、最近は他のことで手一杯で、シロのことは後回しにしていた節はある。


そんな俺の心情を読み取ったのか、光は明らかに不機嫌そうな顔になる。


「はやくなんとかしなさいよ。じゃないと、しろはいつまでも眠ったままかもしれないわよ」


そういえば、アストリッドを捕えて以降、シロは一度も目を開けていない。流石に死んではいないだろうし、食事が取れない分の栄養分なんかは魔衣さんあたりがカバーしてくれてはいるだろうが、いつまでもそのままというわけにはいかない。


でも、多分今アストリッドのところへ行ったら、多分俺は、アストリッドのことを殺してしまうだろう。

シロの洗脳を解きたいという気持ちはある。が、その時の感情の昂りで、うっかりアストリッドを殺してしまわないとも限らない。だから、俺が直接行って聞くというのは、どうなんだろうか。


「ま、とりあえず奢ってくれてありがと。正直皆るなのこと無視するから、ムカついてたところだったの。ま、貸し1ということにしといてあげるわ」


そう言って光は手をひらひらとしながら、店から出ていった。


シロのことも、そろそろどうにかしなきゃいけない。

もう俺は殺しを行ったんだ。


ブレーキなんて存在しない。


「ごちそうさまでした」


後はただ、突っ走るだけだ。




☆★ ☆★ ☆★ ☆★ ☆★




櫻がクロを探しに行ってしばらくの時間が経った後、流石に櫻が帰ってくるのを待ち続けても仕方ないと、そう判断した来夏達は、各々で荷物をまとめ、解散しようとしていた。


しかし、そんな彼女らの前に1人の少女が立ちはだかる。


風貌からして、一目で魔法少女と分かるような格好をしている少女の名は、アンプタ。


「見つけた。裏切り者」


「誰だ」


来夏は虚な目をしたアンプタを見て、警戒を強める。対してアンプタはそんな来夏の呟きに応えるように、言う。


「7つの大罪、『暴食』のアンプタ。自己紹介するとこうなる」


アンプタは虚な目をしたまま、来夏達の方へ、より正確に言えば、アルファの方へその人差し指を向ける。


「用事はそこの裏切り者の始末。それ以外には用はない。でも邪魔をするなら容赦はしない」


当然、そう言われてはいそうですかと引き下がる来夏達ではない。各々戦闘体制を整え、アンプタへ抵抗の意思を見せる。


「馬鹿な奴ら」


アンプタは、そんな来夏達を蔑むような目で見る。

次の瞬間。


「が、あぁああああああああ!!!!」


双山魔衣の片腕が、()()()


当然、それを引き起こしたのはアンプタである。しかし、アンプタはその場から一切体を動かしてはいない。

遠隔から、魔衣の片腕だけを、綺麗に切断したのだ。


アルファの顔が、絶望に染まる。

自身を全力で守ると約束した櫻はこの場にはいない。相手の実力の底は見えず、標的は自分。

アルファの体の震えは、止まらない。


同様に、来夏達もまた、アンプタへの警戒を強める。


魔衣は吹き飛んだ部分を押さえて激痛に苦しんでいる。


「早く退いた方がいいよ。邪魔をすれば、皆死ぬだけだから」


アンプタが言葉を発した瞬間、魔衣の残った方の腕も切断され、宙を舞う。


「次は右足かな」


魔衣の四肢が次々に切断されていく。

そんな様子を、アルファ達は黙って見ているしかない。人数で言えば、アルファ達の方が有利だアルファに加え、ガンマにベータ。束にユカリもいるのだから。しかし、その誰もが硬直して足を動かすことができていない。未知数な魔法少女の動向に、怯えているからだろう。

そんな中、1人だけアンプタに向かって突撃したのは、来夏だ。


来夏はアンプタに向かって高速で接近してその拳を振るおうとするが………。


「おっと、あんたの相手は俺だぜ」


来夏の拳は、()()()()()()()に止められる。


「クソっ、どけ!!」


「俺達は別の場所でやり合おうぜ。邪魔になったら悪いしな」


男が言った瞬間、影から1人の少年が現れ、男と来夏を自信の影へと引きずりこむ。


「良い戦闘を」


そのまま、影と共に来夏と人間の男は消え去り、その場に残ったのはアンプタとアルファ達だけになった。


アンプタは消えた3人のことを気にする様子もなく、指先をアルファ達の方へ向ける。


「じゃあ、全員殺すね」


1人の少女による、蹂躙が始まる。



☆★ ☆★ ☆★ ☆★ ☆★




『影』によって人間の男と共に連れ去られた来夏は、アルファ達のいる場所とは遠く離れた場所に到着していた。

そこには、先程来夏を影の中へと連れ込んだ『影』と呼ばれる少年と、来夏の拳を受け止めた人間の男。加えて、人間の男の後ろに、まるで支えている執事かのように佇んでいる吸血鬼の男がいた。


「3対1かよ。弱ぇ奴は、群れないと碌に戦えねえんだな」


来夏は余裕そうな笑みを浮かべ、虚勢を張るが、実際には余裕は全くない。


だが……。


(私はもう負けたくない。絶対に勝つ)


負けるつもりは毛頭ない。

彼女の頭の中には、勝つビジョンしか見えていないのだから。

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