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Memory115

さて、今回のこと、魔衣さんに相談しておかないと。それと、一応生命維持装置が失敗した時のスペアプランも考えておかないとな。失敗して助けられませんでしたなんて展開だけは、絶対に避けなければならない。指切りげんまんしちゃったしね。もし約束を破ったら、針千本飲まされることになる。恐ろしい。


「見つけたぞ」


そんな風に考えながら歩いていると、ふと後ろから声が聞こえてくる。

ここら辺の道は人気が少ない。だから人がいたら気づくはずなんだけど……。なんて思い、少し気になったので、後ろを振り返ってみる。


「辰樹?」


そこにいたのは、かつてクラスメイトであり、俺に告白してきた男の子、広島辰樹がいた。

だが、いつもの辰樹とは少し様子が違った。


「そういえば小僧の体を使っていたんだったな……。忘れていた。結論から言うと、俺は辰樹ではない。そうだな……かつてはこう呼ばれていた。“魔王”と」


俺は警戒を強める。

辰樹の冗談という線もあるだろう。しかし、それにしては気迫が違いすぎる。


「そう警戒するな。お前を害する気はない。ただ少し、未来の伴侶を一目見ておこうと思ってな」


「伴侶…?」


「そうだ。クロ、お前は俺と結婚するんだからな」


???????????


「は?」


「照れなくてもいい。安心しろ。ここには俺以外誰もいない」


「照れてないが????」


本当に何を言ってるんだ? 未来の伴侶? 結婚だって? なんで勝手にそこまで話が進んでるんだ。俺は一切了承した覚えはないぞ。


「…流石に気が早すぎたか。だが、俺は本気だ。お前がその気なら、今すぐ魔界に帰って式を挙げてやってもいいぞ」


「やめておいた方がいいと思うけど」


なんたって、俺の前世はおと


「ああ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


前世のことを、知っている、だと……? 

こいつ、一体どこまで……。


「前世以外のことでいうのなら、この辰樹という小僧の体は一時的に借りているだけだ。用が済めば返してやる。この小僧の体には世話になったからな」


「話が読めてこないんだけど……」


「もう少し簡潔に話そうか? お前に惚れた。嫁にこい。以上だ」


「なんだこれいみわからんたすけてゆき…………」


惚れる要素どこ?

魔王と接点なんてなかったし、仮にあったとして、どこに惚れられたのかが全くわからないんだが……。容姿とか? それならシロも当てはまりそうだし……。


「ふむ。なるほどな。まだ記憶の全てを解放しているわけではないのだな」


「解放? 一体何の話をして……」


「それどころか、一部の記憶に新しく蓋をしてまでいる。なるほどな、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


妹に嫌われるような人間になりたくない?

それは当然だ。妹に嫌われたくないなんて、世の中の兄は皆考えていると思う。だって家族だし。そんなこと改めて言われても……。


「ああ。勝手に話を進めてしまったな。昔からの悪い癖だ。興味のないものは名前すら覚えられんが、興味のある奴についてはとことん調べたくなってしまう」


本当になんなんだこいつ。

ただの変人………ってわけでもなさそうだし……。いや、仮にも魔王なわけだし、何企んでるのかわからなくても仕方ないか。


「結婚に関しては、今起こっている問題が全て片付いてから考えてもらっても、俺は別に構わん。待つのは慣れているからな」


「いや、多分絶対結婚することなんてないと思うけど……」


「後、これはただのアドバイスだが……」


「?」


「記憶は早めに思い出させておいた方がいいぞ。タイミングによってはお前の精神がどうなるかわからん。全ての事が片付いてから思い出すにしても、色々問題は起こりそうだしな」


そんなこと言われても、記憶なんて思い出そうと思って思い出せるようなものでもないとは思うのだが……。というか、俺って記憶思い出したんじゃなかったのか? この前、もう1人の自分(?)と一つになったところだと思うんだが…。

やっぱり、こいつの言うことはよくわからない。悪意を持って発言しているわけではなさそうなんだけど……。でもやっぱり意味わかんないなぁ……。


「それと、結婚は前向きに考えることをオススメする」


「そんなに結婚したいのかよ……」


もしかして拗らせてる感じかな……。きっと相手にされなさすぎて、誰彼構わずこんなことを言って回っているのかもしれない……。俺は憐れみの視線を魔王に向ける。


「お前何か勘違いしていないか?」


「別にぃー?」


「ふむ………」


魔王、俺はわかっているぞ。きっといい出会いがなかったんだよな。人とのコミュニケーションに慣れてないから、ちょっと言葉たらずなところがあるだけなんだよな。


「お前、今失礼なことを考えなかったか? 一応言っておくが、俺はモテるからな。これまでどれほどの女を抱いてきたことか……」


は?


「女の敵!!!!」


「嫉妬か? かわいいところもあるのだな。安心しろ。浮気はせん」


「誰もお前の嫁になるとは言ってないが??」


「そうカリカリするな。夜は満足させてやる」


「帰れ!!!!」





☆★ ☆★ ☆★ ☆★ ☆★





“ブラックホール”内に取り込まれ、そこでガンマと名乗る少女と出会った櫻達。ガンマは好戦的な性格のようで、櫻達とやり合う気しかないようだ。だが、櫻としては、魔法省と協力するためにやってきているため、敵対するのはあまりよろしくないと考えている。


「待って、一度話し合いを…」


だからこそ、対話を試みようとしたわけだが…。


「お前らの目的は分かってる。分かった上でこうやってるんだ。それが命令だからな。ま、ワタシとしては自分の力を存分に見せつけるチャンスがやってくればどうでもいいんだけどな」


対話は失敗。櫻達はガンマと戦闘するしか選択肢はないようだ。


「仕方ない……。魔衣さんと私で前に出る。束ちゃんは後ろで。怪我もまだ完治してないだろうし、無理はできるだけしないで」


「分かってます。櫻さん、無理しないでくださいね」


「そんなに戦うのは得意じゃないんだけどね……」


「話は終わりか? ならこちらから行かせてもらう!」


ガンマは黒い大鎌を持ちながら、櫻の方へ急接近する。

どうやら彼女は、近接戦で来るようだ。


「桜銘斬」


そして櫻もすぐさま『桜銘斬』を召喚し、ガンマに対抗する。

櫻とガンマは、互いに一歩も譲らず、拮抗している状態だ。


「後ろがお留守だよ」


しかし、ガンマの背後に回った魔衣が、ガンマに不意打ちを行おうとする。

櫻の相手に集中しているガンマは、魔衣の攻撃に反応できるわけではなく……。


「雷撃」


しかし、魔衣の振り下ろそうとしたその手に、電撃が走る。

突然の衝撃に、魔衣は狼狽える。その一瞬の隙をつき、ガンマは櫻から距離をとり、魔衣に対して強力な一撃を加える。


「『雷槌・ミョルニル』」


それは、櫻達もよく見知った、朝霧来夏の必殺技であり……。

その威力は……。


「そんな……」


魔衣ですら一撃で沈めるものだった。


「ふぅ……。思ったより魔力使っちまった。ま、でもまだ戦える」


ガンマは少し疲れた様子を見せながらも、櫻達と相対する。


「メインディッシュは最後においておくとして………次はその緑髪の子から行こうか!」


ガンマはその手に電撃を宿しながら、束の方へと近づいていく。


(まさか……『ミョルニル』を束ちゃんに…!)


『雷槌・ミョルニル』は強力な技だ。まともに食らえば、無事では済まない。魔衣の場合は、魔族ゆえのタフさから、気絶程度で済んだようだが、束は櫻達よりもタフではない。つまり、ガンマの『雷槌・ミョルニル』を食らえば、最悪死ぬ。


櫻は急いで、束の元へ向かう。

そして、ガンマが『ミョルニル』を束に向けようとした瞬間。


「束ちゃん!」


束を押しのけ、『ミョルニル』の前に自ら躍り出る。


「は?」


その様子を見て、ガンマは一瞬困惑し……。


(多分これ、避けれない……。せっかく、魔法省と協力できると思ったのに…何も……)


敗北を覚悟する櫻。

しかし、いつまで経っても、『ミョルニル』は自信に牙を向くことがなかった。


ガンマが『ミョルニル』を放たなかったためだ。


「やめだ。こういうの、あんま好きじゃねぇんだ。今日のところは帰れ。あんたとは1対1でやりたい」


そう言って、ガンマは櫻達の足元に“ホワイトホール”を出現させる。


「ワタシが逃したってことは、ベータからもわかるはずだ。ワタシが逃した相手を、わざわざ仕留めるなんてこと、ベータはしない。でも、アルファは命令に忠実だからな。だから、アルファが来る前に、はやくかえれ。ワタシに言えるのは、そんくらいだな」


「待って、貴方は、一体……」


「ワタシのことか? いいぜ、教えてやっても」


ガンマは声高らかに、誇るように告げる。


「ワタシは数ある人造魔法少女の“成功体”。クロと朝霧来夏の戦闘データから完成した、めちゃんこ強い魔法少女だ。とま、そんなところだ。以上! 解散!」


ガンマの口から放たれた事実に、櫻はもっと何か聞き出せないかと、彼女に話しかけようとするが。


だが、どうやら時間が足りなかったようで、櫻達はそのまま、“ホワイトホール”によって、外へと放り出されてしまった。






☆★ ☆★ ☆★ ☆★ ☆★





「とりあえず、帰って作戦会議だね」


「魔衣さん、起きてたんですね………」


「実は狸寝入りは私の得意分野なんだ」


櫻と束は、魔衣をジト目で見ながら思う。この人、頼りになるのかならないのかわからないな、と。

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