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Memory114

俺は、カナから魔法省の事情を聞いた。魔法省は裏で『組織』と繋がっており、魔法省の情報などを与えることを条件に、『組織』から人造人間を調達しているらしい。


カナ達は人造人間であるためか、普通に生活を送ることができない。魔法省で特殊な処置を行ってもらうことでしか、生きていくことができないそうだ。おそらくそれは事実だろう。実際俺も生命維持装置がなければ死んでいたし、人造人間の肉体はどうしてもそういう仕様になってしまうものなのだろう。


ということは、愛も何か処置をしておかないとまずいのか。まあ、今のところ愛の体には異常はなさそうだから、焦る必要はないだろうけど。


とりあえず、『原初』の魔法少女よりも、カナ達のような人造の魔法少女のことを考えた方が良さそうだ。

できれば、魔法省に従わなくてもいいようにしてあげたい。だから、カナ達が魔法省に頼らずに生きていけるようにする必要があるわけだが、多分だけど、生命維持装置を用意するのが1番手っ取り早いというか、現実的な気がする。

魔衣さんあたりに頼めば、もしかしたら生命維持装置もなんとかなるかもしれない。が、どちらにせよ、どれくらいの数が必要かの把握は必要だ。


「カナ、魔法省にいる人造の魔法少女って、どれくらいいるの?」


「よわすぎると、”処理“されちゃうから、いまのこってるのは、わたしたち4にんだけのはず……。すくなくともわたしがしってるかぎりではだけど」


4人か。

それなら、全然助けられる。後はカナ達の意思次第だ。


「カナ達は、ずっとこのままでいいって思ってるの?」


「? どういうこと?」


「外に出て、やりたいこととか、ないのかなって」


「…………そんなこと、かんがえてもいみなんか………」


カナは、悲しそうな顔をしながらそう言う。どう見ても、現状に満足しているとは思えないような顔だった。


「あるんだね。やりたいこと」


「………」


否定しない。でも、自分を押し殺してる。多分、どうせ無理だって、そう考えているから。


「わたし……がっこうにいきたい……」


「そっか……」


「いろんなこと、べんきょうしたい。それで、りっぱになって、はたらいて、みんなといっしょに、おでかけしたり……」


他人からしたら、何の変哲もない、普通の願い事。だけど、カナからしたら、いくら背伸びしても届かないような、とてつもなくハードルの高い(ファンタジー)なんだろう。


「カナなら、学校行けるよ」


「っ…………どうせむり。だって、わたしたちは……」


「私が助ける。いや、厳密には、助けてもらえるようお願いしにいくだけなんだけど…」


「たす、ける?」


「うん。助ける」


「ほんとに?」


カナは、縋るような目で俺のことを見てくる。

今までこうやって、手を差し伸べてくれる人すらいなかったんだろうな。


「ほんとに。約束するよ」


「やくそく……。じゃあ、ゆびきり! ゆびきりしよう」






ゆーびきーりげーんまん、うそつーいたらはーりせんぼんのーます。ゆびきった。








「ラカはかいがいりょこうにいってみたいっていってた。いたりあ? にいってみたいんだって。それで、タマはハンバーグをいっぱいたべたいって。でもやさいはたべないっていってた。へんなの。それでね、ナヤはみんなでカラオケ? っていうのにいってみたいんだって」


カナはキラキラとした表情をしながら、これからを語る。

やっぱり、年相応なんだなって。


海外旅行に、食べ物のこと。それにカラオケ、か。

海外旅行は少しハードルが高いかもしれないが、ハンバーグやカラオケくらいなら、彼女達が自由になれさえすればすぐに達成できる夢だろう。まあ、一度それを達成しちゃったら、もっと美味しいもの、もっと楽しいことを求めるようにはなるだろうけど、それはそれで健康な証だし、全然いいかな。俺が連れて行けてあげるかは別として。


本当は、大規模破壊の時の戦力になってもらおうかな、なんて考えてた。けど、俺はこんな子に戦ってほしいなんて思えない。だから、結局のところ、『原初』の魔法少女の存在は探っていかなきゃならない。でも、とりあえず優先はカナ達だ。

カナ達の生命維持装置を製作して、魔法省から助け出す。『原初』の魔法少女探しはその後でいい。


俺は隣で無邪気に笑うカナを見て、まるで新しく妹ができたみたいだな、なんて、呑気に考えた。







☆★ ☆★ ☆★ ☆★ ☆★







「だからね、櫻。君は厳密には魔法省に所属する魔法少女じゃない。だから、魔法省と直接交渉しにいくのは、私と束だけでいいんだ」


「私のお兄ちゃんは魔法省所属です。だから私も魔法省とのコンタクトはとれますよ、魔衣さん。それに、ここまで来て今更引き返すなんてこと、できないですから」


櫻、魔衣、束の三者は、魔法省大臣へと直談判しに来ていた。魔衣が言うには、話をするなら大臣本人じゃないと、とのことらしい。


「双山魔衣様御一行ですね。わたくしは羽留利様の専属メイド。ベータと申します」


魔衣達の元に現れたのは、メイド服を着た緑色の髪の女性だ。ベータと名乗った彼女は、事務的に、淡々と話す。


「悪いね。急に話がしたくなってさ。それで、私達はどこへ行けばいいのかな? 生憎、彼の家に来るのは初めてでね」


魔衣もまた、ベータを警戒しつつ、言葉を交わしていく。


「ええ、勿論。案内致しますよ。大切なお客様ですから。ですが、わたくしは少し忙しいので、案内人は別で用意しております」


ベータはそこまで言い終えると、先程まで無表情だった顔に、笑みを貼り付ける。


「わたくしよりも乱暴ですので、気をつけてくださいね」


瞬間、魔衣達の足元が、真っ黒に染まる。


「なっ、これは」


「どんどん足が沈んでいきます……。抜け出せないですね……」


「これって、もしかして………」


櫻、魔衣、束の三者は、そのまま真っ黒に染まった地面に吸い込まれるようにして、消えていった。




☆★ ☆★ ☆★ ☆★ ☆★




「ぅん……ここは………」


櫻が次に目を覚ましたのは、あたり一面真っ暗な空間だった。


「目が覚めたみたいだね」


「よかったです。無事みたいで。それにしても、ここはどこでしょうか? まさか地獄というわけじゃないでしょうし……」


真っ暗な空間には、魔衣と束も来ていたらしく、この空間がどのような存在であるのかを考えていた。

だが、櫻には心当たりがあった。勿論、この空間については初見だ。だが、この空間に入る前に、自分達の足元に出現した黒い沼は、櫻にとってはよく目にしたことのあるものだった。


「“ブラックホール”……」


クロの扱う“ブラックホール”。

櫻達を吸い込んだ闇は、まるでその“ブラックホール”と酷似、いや、()()()()()()()()()()()()()()


「やっぱり、櫻もそう思うかい」


「どこからどう見ても、クロちゃんの“ブラックホール”にしか見えなかった。けど、あれはクロちゃん固有の魔法だし………」


櫻達は考え込む。そんな時、櫻達の元へやってくる足音が、一つ。


「キミらがお客さん? よろしくー」


やってきたのは、真っ黒なボロ布を乱雑に羽織り、黒く大きな禍々しい鎌を片手で持ちながら裸足でうろついている少女だった。


「よろしくするのは構わないけれど、挨拶をするならまず名を名乗るべきじゃないかな? 少なくとも私はそう思うが」


魔衣が少女を警戒しながら、探り探りで言葉を投げかける。

魔衣の言葉に、少女は手をポンと、まるで『確かに!』と納得するかのように叩き、自身の名を告げる。


「ワタシはガンマ。生憎手加減とかできねー主義でさ。一撃で沈めちゃうかもしんねーけど、恨みっこなしな」

アルファ「飛ばされた………」

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