Memory112
カナ(双剣使い):☆好きなもの 仲間 ★嫌いなもの 敵
ナヤ(槍使い):☆好きなもの 皆 ★嫌いなもの 強い敵
ラカ(弓使い):☆好きなもの 空 ★嫌いなもの 自由な奴
タマ(大斧使い):☆好きなもの 戦い(皆といる時間) ★嫌いなもの 孤独
残り3人。
できれば、他の魔法少女の援護が来る前に終わらせたい。だから、時間稼ぎはさせられない。
槍、弓、双剣。残しておいて1番厄介なのは、弓か。
弓による攻撃は、“ブラックホール”で無効化できはする。が、結局“ブラックホール”の生成には魔力を使用する必要があるし、“ブラックホール”を使う際には、矢が飛んでくる場所に意識を集中する必要がある。
見たところ、ナヤという槍使いの少女は、速度が厄介だ。少しでも油断すれば、背後を取られてしまう。実際、さっきも背後を取られてピンチに陥ったわけだし。かといって、ナヤという少女にばかり集中すると、今度はカナに背後を取られる。というか、カナに意識を向けないのが1番まずい。ナヤは素早いから捉えにくいだけだが、カナの場合そもそも気配を感じ取ることができない。
2人とも無視してラカという弓使いの少女を狙えば、絶対に俺の命はないと見ていい。
それなら。
「“ブラックホール”」
2人に意識しなくてもいい状況になればいい。
俺はブラックホールを経由して、弓使いの少女、ラカの背後に回る。
最初からこうすれば良かったんじゃないかって?
でも、この方法だって万能じゃないんだ。
“ブラックホール”の内部から、“ホワイトホール”で出る。これを行えば、確かに実質的なテレポートのようなものは可能だ。だが、自分が“ブラックホール”内に入るということは、今まで自分が“ブラックホール”内に入れてきたものも当然一緒に存在しているわけで……。
「来る…!」
俺が今まで貯めてきたものが、俺に向かってくる。
今までは遠距離攻撃は全て”ブラックホール“で対応してきたが、ここはその”ブラックホール“の中だ。当然、”ブラックホール“を使うことはできない。つまり、全て避けなければいけない。
そして、避けながら、”ホワイトホール“を生成しなければならないわけだから、ただ避けるだけの単純作業というわけでもない。
うん。
「やっぱ無理だコレ!!」
えーいもうやけくそだ!
俺は両手に大鎌を持ち、ぶんぶんと振り回しながら”ホワイトホール“の生成のための魔力を練る。
大鎌振り回しとけば勝手に矢とかその他諸々迎撃しといてくれるでしょ理論だ。ちなみに今左太ももに一本かすった。痛い。
っと、よし。
”ホワイトホール“の生成準備、完了!
いける。あとは心の準備だけ……。
ってまずい!
「”ホワイトホール“!!」
やばい、目の前に矢が迫ってきたから、思わず”ホワイトホール“を発動させてしまった。
いや、大丈夫だ。多分座標は間違ってない。俺はちゃんと、ラカという魔法少女の背後に出現することができるはず…!
目の前が光に包まれ、暗闇の中から現実世界へと出ていく。
…‥ビンゴ!!
俺はちゃんとラカの背後に出現することができた。
「ラカ!! 後ろ!!」
槍使いの少女、ナヤが叫ぶが、もう遅い。
俺は『還元の大鎌』をラカに振り下ろし、彼女の魔力を全て奪う。コレで、一時的に魔力を全て失ったラカは気絶するだろう。
「2人目。…………っぶね!」
俺がラカを戦闘不能に追い込んで安心したのも束の間、俺のすぐそばにカナがやってきており、その双剣を正に今俺に向けようとしていた。本当に気配ないなこの子…! やっぱり、4人の中で1番厄介なのはカナって子かもしれない。というか、流石にこの子達、強くないか? 勿論、櫻や来夏レベルではない。それは当たり前といえばそうなんだけど。少なくとも焔や笑深李、美希の3人組の魔法少女よりかは強い。
ただ、今はこの子達と敵対しているが、この子達と俺は根本的には敵ではない。いや、そりゃ俺は悪の組織所属の魔法少女って立場で見たら、この子達とは敵対することになるんだけど。
でも、将来的には協力する可能性だってある。実際、もし俺が『原初』の魔法少女を見つけられなかった場合は、魔法省の魔法少女達と協力して大規模破壊を止めることになるわけだしね。
つまり、カナ達が強いっていうのは、俺からすれば逆に嬉しい誤算かもしれない。だって、その分大規模破壊を食い止められる可能性が上がるんだから。
話が逸れてしまったが、とりあえず、斧使いのタマ、弓使いのラカは倒した。残りは双剣使いのカナと、槍使いのナヤか。
先程も話した通り、カナもナヤも、片方に意識を向けていたら、もう片方にやられてしまう可能性がある。だから両方に意識を向けつつ、どちらか片方でも無力化する必要があるんだけど……。
流石に難しいな。
できればはやめに決着付けたいが………。
安定行動するしかないのか…?
☆★ ☆★ ☆★ ☆★ ☆★
ラカがやられた……。クソ……、このままじゃ、私達は………。
でも、大丈夫。まだこっちには、カナがいる。
カナは私達の中で、1番強い。一応、カナは双剣を使ってはいる。けど、実際にはタマが使う大斧も、ラカが使う弓も、私が使う槍も扱える。
カナが双剣を使っているのは、多分私達と合わせるためだ。ラカは射撃技術が物凄く高くて、実際カナも一応弓を扱えはするけどラカほどではなかった。それと、タマは高火力な一撃を好んでたから、破壊力のある大きな斧を選んでいた。でも、どちらも近接戦において強いとは言えない。弓は言わずもがな。斧は一撃一撃は強力だけど、攻撃した後の隙がデカすぎる。
一応、私が槍を使って近接戦を行うことはできる。けど、元々私は近接戦を積極的に行いたいって考えるタイプの人間じゃない。他の3人は怪人と戦うことに前向きだけど、私は怖くて怖くて仕方がなかった。4人の中で1番身長が高いくせに、4人の中で1番臆病だったんだ、私は。
4人の中で1番足がはやいのも、私が臆病で、逃げてばっかりだったから。
でも、それでいい。
私は、みせかけでいい。本当に突っ込む必要はない。ただ、相手を撹乱させるだけで十分だ。
後はカナが、全部やってくれる。
私は、槍をその手で握りしめる。カナがいれば、まだ大丈夫。まだ、やれる。
☆★ ☆★ ☆★ ☆★ ☆★
暫く戦っていて、分かったことがある。
ナヤとカナ、2人と戦っていて、基本的に攻めてくるのはカナだということだ。
一応、ナヤも撹乱してきはする。けど、あんまり俺との距離を詰めようとしてこないというか、どこか引っ込み気味に戦っている気がする。多分、ナヤが俺にとどめを刺しに来る、っていうのはない気がする。
2人で攻めるというよりかは、ナヤがカナのサポートをしている、といった感じだろうか?
とにかく、カナとナヤ、どっちから攻めるべきかは分かった。
カナを攻めようとすると、ナヤのサポートが少々面倒臭い。だから、カナの攻撃を受け流しつつ、ナヤの隙をついて『還元の大鎌』でナヤの意識を奪うのが1番丸いだろう。
ただ、ナヤはあまり俺に近付こうとはしてこない。だから、まずカナを攻めて、カナを追い込む。
俺は大鎌を二つ持ち、カナの持つ双剣を同じく二つの大鎌で弾いていく。
多少無理をする。防御ではなく、攻撃に転ずる。
足を踏み出し、少し胴体を前に出す。こうすれば、相手に胴体を晒す行為であるわけだから危険ではある。だが同時に、相手を崩しにかかるには最適な行動だろう。
「っ…!」
「これで、3人目になるかな!!」
わざと声高らかに宣言し、ナヤにカナのピンチをアピールする。
「カナ!!」
案の定、ナヤは食いついてきた。仲間想いなんだなぁと思うと同時に、少しの罪悪感を感じるが、こちらとしても援軍は勘弁なんだ。許してほしい。
俺は、攻めの姿勢をやめ、こちらに近づいてきたナヤの方へ向かう。
「! まさか!!」
カナが俺の行動の意図に気付き、追いかけてナヤへの接近を阻止しようとしてくるが……。
「“ホワイトホール”」
“ホワイトホール”から大量の矢を放ち、カナの足止めをする。
「ひっ、や、やめっ」
「ごめんね」
俺は『還元の大鎌』で、ナヤの魔力を奪い尽くす。
これで、3人目。残るは……。
「ナヤは、たたかうのがあんまりすきじゃなかった。できれば、わたしのあいてをしてほしかったのに……」
不満そうにしながら、“ホワイトホール”から放たれた矢を全て双剣で処理したカナだけだ。