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Adrian Blue Tear ―バー・エスメラルダの日常と非日常―  作者: すえもり
Ⅰバー・エスメラルダの日常と非日常 October

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ABT3. アマギ2.51の欠陥 (7)

「電話回線のチェック、ありがとうございました。それからアーノルドがずいぶん早く戻ってきてくれて助かります」

 ルピナスが電話で礼を言うと、ややノイズ混じりの音声でヘッケルが答えた。

『いや、修理などはすべてモニカに任せた。私は昨日は帝都にいなかったのでね。問題があれば教えてくれ。しかし、アーノルドのプログラムに軽微な欠陥があるようなのでね、定期チェックついでに今度アップデートしたいんですが、構いませんか、艦長』

『どこが悪いんだ?』

 割り込み通話の艦長の声が入る。

『ルピナス、アーノルドがなぜか洗濯機に執着すると言っていたな』

「ええ」

『すまん、どういう意味だい?』

『洗濯機の動作中にその場を離れようとしないそうです。前にルピナスが、中身に偏りがあると洗濯機が暴れて最悪の場合壊れるから、停止して入れ直すようにと教えたらしいのですが、それ以降、洗濯槽の回転速度測定を優先するバグが生じたんじゃあないですかね』


 艦長は吹き出した。

『まあ放っておいてもいいんですがね、他の業務よりも優先しているのは問題ですから』

「私てっきり、洗濯機に恋しちゃったのかと思いました。とっても真剣な顔をして見てるんですもの」

 男二人は電話口で笑った。

『そうだ、ひとつアマギ2.52に入れたい新機能があるんですが』

「アーノルドのプログラム改造ですか? 何でしょう?」

『嘘発見プログラム改とでも言いましょうか、今入れているのは犯罪者がサンプルのシンプルな機能なんですが、改版では例えばお客さまの浮気なんかも見抜けます』

「要りませんよ。余計なトラブルの元です」

『自己学習型で、従業員の不正や女性の高度なウソも感知する自信作なんですがねえ、実験だけでも』

『君の冗談は回りくどい。才能の無駄遣いはやめたまえ。余計な容量を食うんだろ』

「そうですよ。ステンさんに試す気ですか? フランツさんもティスさんも嘘つきじゃないですから」

『それは残念。家内のヘソクリを調べてやろうと思っていたのですが。まあもう少し改善の余地はあるので、またご検討ください。それでは』



 ルピナスがカウンターでそんな電話をしている間も、アーノルドは稼働する洗濯機の前で腕組みしていた。フランツは電話の内容こそ聞こえていなかったものの、彼の様子が妙だと思い声をかけた。

「あの」

「何だ、クロイツァー」

「まだ開店まで時間はありますし、代わりに見てますよ」

 アーノルドはフランツにちらりと視線を向けた。

「その必要はない」

「いや、ずっと見ている必要もないと思いますよ」

「他の準備は済ませた。好きでやっている」

 フランツは首を傾げた。

「好き? 洗濯機を見るのがですか?」

「観察していると余計な思考をせずに済む。お前は自分の用事をすればいい」

「はあ……分かりました」


 後日、ヘッケルが調整に現れるまで、アーノルドは毎日洗濯機の前を動かなかった。彼が真剣に洗濯槽の回転を見つめる姿が見られなくなったことは残念だったが、そのことでルピナスとフランツの意見は初めて一致した。アーノルドに言うと「何のことだ?」と、とぼけたように聞き返されただけだったが。





 ***NGシーン(本編とは関係ありません)***



「アーノルド!」

「マスター、手出しするな」

 彼は男の足首があった位置に向けて発砲するが、そこに影はなかった。「甘いな、A-RN」


「ストーップ! やり直し!」

 全員がランスのほうを振り返った。

「何だ、スプリングフィールド!」

 アーノルドが怒鳴った。少年は首を盛大に横に振った。

「全然ダメじゃん、そこの新人アンドロイドさん! そこは〇、〇二秒遅いって言わなきゃ!」


 艦長の顔をしたアンドロイドは、首を四十五度傾けた。

「何を言ってるんだ、彼は」

「撮り直すなら、その前にモニカの軽傷の手当をする。大丈夫か」

 アーノルドはモニカに駆け寄った。

「アーノルド、そこは損害評価報告(ダメージリポート)をって言うんだよ」

 アーノルドはガラスの瞳で少年を凝視した。

「スプリングフィールド、貴様は役立たずの銀髪の神父の生まれ変わりか何かか? 邪魔するつもりなら貴様も排除する」

「いや、ちげーけど、分かってんじゃん」


 ルピナスはランスの肩をつついた。

「ABTではNGシーンは公開していません」

「あっ、ごめん……」

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