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5 赤兎領 矢の森
「認められません!」
夜の森に怒りをはらんだ青年の声が響いた。
神国火陽が西、赤兎領は矢の森には鬼の隠れ里がある。
「ほむらはまだ十四になったばかりなのですよ!」
背中にしょった黒い翼から、勢いで羽毛を散らしながら言い放ったのはまだ若い烏天狗であった。
名を黒宇という。
鬼の里に育ち、頭領の娘の補佐役に任じられて間もない青年である。
「もう十四だろう。立派な大人ではないか」
「しかしまだ経験が浅い」
「…誰しも最初はそうだろう? 経験を積む機会を与えようと言ってるんじゃないか」
対するのは、白磁のような肌をした男である。陶器のようにつるりとした肌に、赤銅色の髪を長く伸ばしている。