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魔法の使い方教えます  作者: のろろん
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音響魔法の使い方

 ユコナと一緒にレスルに向かう。登録自体は、自分の名前と、特技、例えば、回復が得意とか、剣が得意とかを1つ選ぶだけだった。


「ふーん、サラの火魔法が得意なのは妥当と思うけど、ユコナはなぜ回復?」

「そ、それは、最初はサラと2人だったので、火と回復だと攻撃と守備でバランスがとれていると言われたからです。場合によっては、回復者がいるのが必須の案件もあるらしいので」


 たしかに、回復薬などもあるだろうけれど、一度傷ついたらおしまいのグループよりは、回復者がいるほうがよいに決まっている。治療のためにけが人を運ぶのはかなりの重労働だし、薬のみの状態で、万が一戦闘中に破損でもしたら一気に致命的になるかもしれない。


「で、プヨンは、どうしますか?」

「うーん、そうだなぁ、やっぱり回復かなぁ」

「えー、そうなんですか?わからなくはないけど、回復かぁ。かぶりますね」

「回復者が怪我してもお互い治療しあえるという、安定度抜群編成で」


 そういうと、受付に行って登録してもらった。ちょうどヒルマが担当だった。

「プヨン、あんたも回復なの?そういえば、ホイザーが、あんたの回復の登録でなんか話してたよ」

「ホイザーが?回復の件で?えー、なんで?」

「さぁ?先日の護衛の関係?依頼主となんかあったらしいけど」

「ふーん。とりあえず、放置」

「放置なの?ふふっ。まぁ、いいけどね・・・登録はすぐしとくわ」


 ユコナが登録の修正依頼をして、用紙に書き込んだ。それをヒルマが台帳に閉じる。

「プヨン、もし、教会に戻るんだったら、この書類を街の入口の護衛部に渡して、返事をもらってきてくれない?報酬は往復と急いで返事をもらわないといけないので、ちょっと多めの30グラン。しかも、前払いで渡せるわよ?そのかわり、今すぐ行ってほしいの。急ぎなのよね」

「え?返事もらって戻ってくるなら、教会って関係ないのでは?さらに、返事もらうなら前払いの意味もなさそうだけど」

「ふふふ、するどい観察力ね。気づかないほうが長生きできることもあるのよ?」


 ヒルマがにやにやとしている。仕事としては、町はずれまで行って戻ってくるだけだから1時間くらいだ。

「もちろん、やります。大急ぎね」

 急ぎの用事もないから暇つぶしにちょうどよかった。そう言うと、プヨンは渡す手紙と報酬を受け取り、

「ユコナ、もういいよね?戻るよ」

 と、レスルを後にすることにした。


 ユコナは帰るのかと思ったが、プヨンが町の出口のところにある護衛の詰所に行くのについてきてくれた。


 その道中で、ちょっとユコナに話しかける、

「ユコナ、ちょっと聞こえる?ちょっと実験したい。聞こえたら言ってね」

「え?えぇ、聞こえますよ?実験ですか?」

「パラメトリックスピーク」

 プヨンは、試しに魔法を使って、声に指向性を持たせてみる。正面のみ聞こえるが、その周囲には音が聞こえなくなる魔法だ。舌先に魔法を施すことで発生させた高周波の超音波に本来の声を乗せる。こうすると、声は周囲に広がらず、前だけに聞こえるようになる。


「ユコナ―――死ねーい!!」

 指向性をもたせた声の状態で思いっきり大声を出すが、周りの人は何も変わらず、反応らしい反応がなかった。ユコナに暴言を吐いているにもかかわらず、ルフトも特に何もしてこない。ただ、ユコナの直線方向に見えていた通行人の2人だけが、何事というような顔をしてびっくりして振り返っていた。

「な、なんですか?急に大声で。びっくりしますよ」

「この声ね、ユコナは聞こえてるけど、周りの人は聞こえていないんだよ」

「え、そんなことができるんですか?」

「ほんとだよ。なんか、周りの人に聞かれたくないときとかに便利だと思って。試した」

「そ、そんなことができるんですか?ちょっと信じられませんが」

「じゃぁ、左右にぶれながら歩いてごらんよ」


 そう言うと、ユコナはジグザグに歩きだした。

「こ、こんな感じですか?」

「そう、そんな感じ。そのまま、ジグザグに歩いていってみてよ」

『そう、・・・な感・。・・まま、ジグ・・・歩いて・・・みてよ』


 ユコナには、とぎれとぎれに聞こえている。

「なんか、とぎれとぎれに聞こえます。左に行くと聞こえなくなって、右に行くと聞こえますね。言っていることはなんとなくわかりましたけど」

「聞こえる範囲は、自分の正面くらいかなぁ。面白いでしょ。ルフトには聞かれたくないときは、これで話すよ」



 そう話して歩いていると、

「すいません、ちょっとお聞きしたいのですが・・・」

ふいに、街の外の方から歩いてきた2人の女性に、すれ違いざまに話しかけてきた。不審に思われないようにするのは当たり前だが、必要以上ににこにこ愛想よく感じた。

「え?なんでしょうか?」

 ユコナが反応する。


(なんだろ。道かな?)

 プヨンがそう思っていると、

「そちらの3人のどちらかで、プヨンさんか、ユコナさんはおられませんか?」

(え?2人じゃなく、3人?)

 プヨンもユコナもそこがひっかかって、お互い目を見合わせた。相手も3人というからには、プヨンとユコナ以外に、ルフトが見えているのは間違いない。ユコナは、どう返事するのがよいか思案したが即座に思いつかなかった。プヨンがユコナを見ると、ユコナの目が返事してと訴えかけてきていた。


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