レスルの登録の仕方 7
教会の裏庭にプヨンは、1週間ほど前に手に入れた、炎の剣とやらをしげしげと見つめていた。
あれから、この剣がどうなっているか、使い心地などをいろいろと試していた。
W金属、すなわちタングステンで作られているようで、少々の炎の温度には十分耐えられるようだった。が、やたら重い。せいぜい4~5kgだけど、鉄に比べると倍近くある。
切れ味も思っていたほどよくはなく、叩きつけて使うこん棒として使うほうがよさそうだった。
「あとは、保管方法か。邪魔だし、持って歩くのは何より重いよね」
ティムは腰に帯剣していたが、常に持って歩くのは重いし邪魔だ。とっさの時に、いちいち抜くのも時間のロスになるように思われた。
プヨンは、ストレージ魔法を使って、剣を収納しようといろいろ試してみた。
「これで、どうだ」「うーん、うまくいかないな」
なかなかうまくいかず、つい独り言がでてしまう。紙などと違って剣だ。重くてサイズも大きい。
最近では、ちょっとした食料などは日常的にストレージを使って出し入れするようになっていた。ずいぶん慣れていたからすぐできるかと思ったが、こうした重量物となると入れ慣れてはいなかった。
それでも、小一時間格闘していると、なんとか入れられた。一度入れ方のコツがわかると、あとは慣れだ。
入れた後、取り出せなくならないように、ちゃんと毎回必ず紐づけしておくことも習慣づける。
そうして、何度も出し入れをしていると、手首あたりから、気軽に出し入れできるようになってきた。
そんなことをしていると、ユコナがやってきた。
「プヨン、昨日は、ご活躍だったそうで。サラリスから聞きました」
にやにやと笑いながら話しかけてくる。
おそらくサラリスに剣の話を聞いたからだろうと察して、プヨンは、昨日手に入れたティムの炎の剣を取り出して、見せてやった。
「メインフレアー」
小声で呟く。そっと目が赤外線も見えるようにして確認すると、ユコナの10mほど後方に護衛のルフトがいることも確認できた。
(もうばれているのだから姿を現してもいいのだろうに)
とプヨンは思ったが、見えているとそれはそれでユコナは気になるだろう。ユコナも気づいているだろうけれど無視している。プヨンも、あえて気にしないことにした。
「うん。これが戦利品だよ。見たい?」
「ぜひ」
ユコナの前で、剣をひらひらと動かすと、後方のルフトのシルエットも近づいて覗き込んでいるのが見えた。気になるようだ。
「ここを握って、こう、魔法を使うようにして、力をそそいでやると・・・」
ブフォーー
橙色の炎が噴き出してくる。もっと強制的に炎を出すのかと思ったけれど、出すか出さないかはかなり自分でコントロールできた。
「こんな感じだよ。どうやってるのかは知らないけど、炎を意識しなくてもエネルギーを注ごうとするだけで炎が出る」
「へー、そうなんですね。私でもできますかね?」
一通り、ユコナに説明してあげると、ユコナも剣を手にして炎を出していた。
一方で、炎の強弱はある程度は変えられても、出てくる炎の形や温度が決まっているようだ。魔力さえあれば作る方法をあまり考えなくても一定の質の炎が出せる反面、炎の温度や形を自在に変えることはできなさそうだった。
普通に炎魔法を使って、剣に必要な威力の炎をまとわせたほうが効果が高い場合もありそうだ。
「実は、また、ちょっとプヨンにもお願いがありまして」
一通り剣を見終わると、ユコナが切り出してきた。剣に興味があるのかとプヨンは思っていたが、剣だけのためにきたわけではなかったようだ。
「なんでしょう」
あらたまって言われると、つい身構えてしまう。
「実はね、レスルなんだけど、私とサラリスとプヨンで組みたいの。募集時に単独では危険とかでダメなものがあったり、一定以上の人数のほうが評価されやすかったりで」
たしかに、ユコナの言うように、大きな依頼とかは基本的に単独での募集はされないことが多いと聞いていた。
常に一定人数で連携を取っているメンバーが組む方が、危険も減り、成果も安定して出しやすい。
特に、害獣駆除や護衛のような戦闘などが伴うものはメンバーの構成や熟練度が重要になってくる。
「ふーん、別に構わないけど、固定メンバーで依頼を受けることがあるってことね」
「じゃぁ、レスルにメンバー追加したいのでお願いします。基本は3人以上で募集の依頼が多いらしいんです」
「わかったよー」
そういうと、プヨンは、剣をストレージに収納して、出かけるため立ち上がった。
「え、ええっ?け、剣は?」
「え?剣は、収納したよ。さっきもそうやって出したよ」
「え?ど、どこにですか?」
ユコナは、プヨンの周りを確かめる。腰などにないことを確認した。
「ここだよ」
そういうと、さっきできるようになったばかりだが、さも以前から当たり前にできるかのように、ストレージに収納した剣の出し入れを見せてあげた。
シュッ、シュッ
プヨンの手のひらのところで、剣が消えたり現れたりする。ユコナと、そして後方のルフトも近づいてきて、無言でその出し入れを凝視しているのがわかった。
「やるでしょ」
プヨンは、ルフトのほうを意識しながらそう言ってみた。ユコナが無言でコクコクと頷いていることがちょっとかわいらしく、妙に自尊心をくすぐられた。
プヨンは、にこにこしながら、ユコナとレスルに向かって歩いていった。
 




