伝説の剣 5
プヨン達のいる町のはずれを、2人の女性が会話しながら歩いている。20代半ばくらいだろうか。
「お姉さま、ニードネンが失敗したと聞いて急ぎきてしまいましたが、誰にやられたのかは確認してくるべきでした、しかも、一昨日仕掛けたハリーは怪我はさせましたが、結局逃げられてしまいましたし・・・」
どうやら、先日、ハリーをナンパしたという女性のようだった。ハリーが肉がはじけるようなかわった魔法を受けた、気をつけろとプヨンに言っていた件だ。ニードネンがやられたと聞いて、自分たちで挽回しようとしたが、思うような収穫を得られていなかった。
「そ、そうね、ルファ。ちょっと焦りすぎたかもね。でも、一昨日のハリーは、どうやら違うわね。そもそも魔法を使ってこなかったし、違うと思うわ」
「そう思います。あとは、依頼を受けたレスルのまとめ役をしているホイザーとかいう者ですが、この者にしかけるのは慎重にしたほうがいいかと。街の中はさけるべきと思いますが・・・」
「そ、そうね。そう思うわ。少し準備をしましょう」
そういうと、2人は、町の外に出て行った。
先日の炎の剣のイベントから数日は、プヨンは平穏な日々を過ごしていた。プヨンは、2度ほどレスルに行ったが、やったことといえば、たまたま募集のあった、急ぎではあるがたいした難易度ではない近場へのお使いや肉目的の狩りで小銭を稼いだだけだ。最近、小さいネズミが畑をあらしているらしくて駆除人募集などもしているが、特に危険な生き物というわけではなく、無難にこなしていた。もっともこの手の依頼はいたちごっこで、なかなか解決するということはないのだが。
そうして、先週おこったティムのこともほぼ忘れたころ、うれしそうな顔をしたサラリスが走ってくるのが見えた。それがティムの炎の剣の記憶を呼び起こす。
「プヨン、きたわよ。ほらほらティムからよ。ふーふー」
息を整えながら、待ちきれないとばかりに、サラリスが話はじめる。やれやれ顔のプヨンが聞く、
「何を全力ダッシュしてるんだか。どうしてそんなにうれしそうな顔してるの?」
見ると、サラリスが手に紙切れを持っている。一応聞いてはみたが、だいたい予測はついていた。
「ほら、こないだのティムから果たし状だって。明日よ。やる?やる?やるならついて行くわよ」
にこにことうれしそうに、サラリスは、これを見ろとばかりに、ティムの手紙を広げて見せる。
「なんとかしろっていっただろう。俺、関係ないんじゃないの?」
「どうするの?どうする?立会人がいるでしょ。わたし、付き合ってあげるわよ」
「・・・・いや、いいよ。逃げるから」
「だ、だめよ。いくわよ。ほら、伝説の炎の剣をもってくるって」
腕を掴まれる。振り切って逃げてもいいのだが、プヨンも、これはこれで面白いとも思っていた。ぶつぶつ言いながらも、どんなあほだろうと、つい、にやついてしまう悪いプヨンがいた。
「果たし状:俺は、ようやく、本物の炎の剣を手に入れた。これは炎で溶けることのない魔法の金属で作られている本物だ。この剣で俺は真の力を発揮する。今度こそ、まことの勝負をし、勝った方がサラリスを手に入れる。どちらがサラリスにふさわしいか、決着をつけよう・・・・」
その後も、何やらいろいろ書かれていたが、
「こんなものもってきて、何考えてるの?こわいーこわいー、負けちゃうと思うよ」
「だ、だめよ。ちゃんと勝ってよ。この機会にきっちりけりをつけたいのよ。そしたら、私は自由の身よ」
「こっちはなんのメリットもないよ。勇戦しつつも負けてしまって、再戦を誓うのがいいと思うよ。そのときのサラの顔を見たいけどなぁ」
「ま、待ってよ。お、おねがいー。よろしくね」
サラリスは、腰をくねくねさせながら、謎のお願いのくねくねポーズをしていた。
 




