伝説の剣 4
ティムが剣を振り下ろすたびに、融けた鉄の塊がとんでくる。それをかわす。パターン化した攻撃になっていた。
(な、なにが火炎弾だよ。溶けた鉄がとんできてるだけだろ?これって、魔法でとばしてるわけでもないんじゃないのかな。炎の剣って、こんなのなのか?なんか、うさんくさい・・・)
そう考えている間にも、ティムは火炎弾を連発してきて、そのたびに数発の火の塊=溶けた鉄の粒が飛んできていた。地面に落ちて、草にあたると、黒く焦げている。
(そ、そうだ。もともと鉄で、温度があがって溶けてきてるなら、ほんとに3000℃にしちゃえばいいんだ)
その後も、しばらくティムからの攻撃と、それを避けるプヨンの攻防が続いたが、ティムの動きはだんだん鈍ってきていた。ティムの剣の炎も徐々に小さくなりだしている。どうやら、ティムは魔力をかなり消耗してきているようだ。そして、動きがいったんとまったその瞬間、
「ダブルループ」
周囲のマジノ粒子を介して集めたエネルギーで窒素を分解する。そして、分解した窒素からの結合エネルギーを利用し、ティムの持つ剣の位置を中心に熱を生み出す魔法を使った。ティムの炎の剣に上乗せするかのように、さらに炎を発生させると、剣の炎が一気に強くなった。ティムの剣の温度が上昇しているからか、炎の色が暗めの赤からオレンジ色に変化していく。色温度からすると、4000℃近いはずだ。
「お、おぉぉ、炎が強くなっている。いいぞいいぞ」
疲れた顔をしているティムだったが、炎が強くなっているのが剣のせいだと思っているのか、強気になっている。振るたびに飛んでくる火炎弾の焼けた鉄粒の数もだんだん増えていっていた。そして、
「こいつは、どうだ。くらえっ」
「あ、危ない。サラリス、よけろ」
ティムが渾身の一発をはなったとき、
ボテッ
ティムの炎の剣の剣身が根元で溶け折れ、融けた剣の先部分が、剣を振った勢いでサラリスの方に向けて飛んでいってしまった。
「ひゃーー、ティム、危ないでしょ」
「あ、あぶねー、あんな溶岩のような塊が直撃したら死んでしまう」
サラリスは、とっさとはいえ、身構えていたのか飛んでくる焼けた鉄の塊をなんなくかわすことができたが、一方のティムは茫然と折れた剣を見ていた。動きが停まっている。
「あっ。で、伝説の剣が・・・・、折れた」
「あっ。ティム・・・剣が・・・」
ティムもサラリスも、予想外に剣が折れたことに驚いていた。
「伝説の炎の剣、破れたり・・・・ふふふ」
プヨンはここぞとばかりに勝ち誇ってやろうと思ったが、ティムがあまりに呆然とした顔をしているので少しかわいそうにもなった。なんとなく、自分が悪いことをした気になってくる。
(そりゃそうか。せっかくお宝の剣だったのにな)
「わ、悪かったな、折るつもりはなかったんだが・・・」
「こ、これは、う、うぅ、オヤジに怒られる・・・・」
(折る気満々だったが、無理に反感買うのもなんだし、適当に言っておこう)
プヨンは、そう思いながらティムの顔を見る。今にも泣きそうな顔をしていた。
サラリスも心配になったのか、
「テ、ティム、だ、大丈夫よ。その剣は、本物の炎の剣じゃないから」
「え、本物じゃないって?な、なんだって?そんな馬鹿な」
「ほんとよ。だいたい、その剣、使ってる最中から溶けていたでしょ」
「と、溶けていただって?」
「たぶんね、やすい鉄の剣に、使用者の魔力を吸い取って簡易的に炎を見せかけるようにした粗悪品と思うわ」
ティムは、それを聞いて固まった。そんなはずは、などとぶつぶつつぶやいている。よほどショックだったのだろう。しばらくじっとしていたが、やがて、
「あ、あのオヤジ。あんだけ頼みこんで、さんざんこきつかったあげく、やっとの思いでもらえたのに。ゆるせん」
急に叫びだし、3人組の方を一瞥した後、
「プヨン、勝負はあずけておいてやる。本物の炎の剣を手に入れたら再勝負だ」
そう宣言すると、ティムは3人を連れて、戻っていった。
「さぁ、サラリス、詳しく語るがいい」
「プヨン、大儀であった。平和は守られたわ」
「その程度の笑顔でごまかすことはできぬ。が、なんとなく、状況はわかった。ただ、再勝負とかいってたから、きちんと未然に防ぐように。失敗は許されない」
「わ、わかった。とりあえず、助かったわ、ありがとね」
そういうと、サラリスは、ティム達とは逆方向から帰っていった。
 




