伝説の剣 3
「し、しかし、勝負と言われても、俺は武器も何もないし、剣に素手じゃ・・・・」
「おい、デミン、お前のその木刀を渡してやれ」
3人の男の1人、デミンは、言われたことを理解すると、さすがに後ろめたいのか、聞き返す。
「えぇ?ティム様、炎の剣を使うのに相手には木刀なんですかい?」
「うっわーーー、さすがティムね。完璧ね。炎の剣を受け止めたら、木刀だと燃えちゃうでしょ」
サラリスは突っ込んだが、ティムはまったく気にした様子もなかった。
「兵は非情なり。俺は非情の男だ。デミン、さっさとあいつに投げてやれ」
そう言われたデミンはとても申し訳なさそうに、プヨンに向かって木刀を投げてきた。
「あいつ、なんかと間違って覚えてるんじゃ?あれなら、兵は卑怯なりじゃ?」
サラリスも、ないわという顔をしている。投げられた木刀がプヨンの顔に向かって飛んできたのもあり、避けるのもなんだからとりあえず手で受け止めた。ティムの炎の剣はさらに輝きを増していた。
「サラ、ティムって、剣は上手なの?」
「たいしたことはないから、プヨンだと問題ないとは思うけど、ただ、炎の剣は、使用者からエネルギーを吸い取って、炎の形にするのよ。当たり前だけど、触れたら燃えるわよ。でも、あれは・・・」
サラリスが何か詳しく説明してくれようとしたが、ティムは問答無用でくるようで、サラリスの説明が終わるまで待つ様子が感じられない。説明を最後まで聞ける時間はなさそうだった。
「よし、いくぞ」
「サラリス、とりあえず、離れて?」
「え、い、いいの?ティムをとめたほうがよくない?」
「いや、まぁ、とまらんでしょ。なんか、面白いヤツだし」
(プヨン、なんか、うれしそうに見えるよね。いいのかしら)
サラリスは、プヨンのわくわく顔をみて吹きだしそうになっていたが、炎の剣は炎の剣、くらうとそれなりの威力があると思われる。それ以外にも何か能力があるかもしれない。心配であった。本物であればだが。
プヨンは、木刀を持つと、距離をとりながら足場のよいほうにゆっくりと移動していった。炎でくるなら何かあったら、水か氷で防ごうと心の準備はできている-。ティムの炎の剣から目を離さず、じっと見つめていた。ティムは、自身満々のようで、
「ふふふ、すごいだろう。この鉄の剣身の温度は3000℃もあるのだ。お前など、触れたら一瞬で消し炭だぞ」
ティムは、高笑いしている。が、プヨンとしては、
(鉄で3000℃もあったら、融けちゃうだろうが)
はったりなのかと、ちょっと気が抜けてしまったが、ティムに向かってはこう返しておいた。
「お、お前、3000℃もあるのに、相手に木刀とかないわ」
「うるさい、いくぞ」
ティムは、そういうと上段に構えて切り込んできた。
「ハイパトロフィー」
プヨンは、とりあえず筋力強化で動きやすくした。おそらく、ティムも勝つ気できているので、似たような強化を使っているだろう。逆にここで使わないと、相手のものがものだけに大ダメージをくらう可能性もある。やむを得なかった。
「プヨン、あんたが負けるとは思わないけど、怪我しないでね」
サラリスが応援してくれるのはいいが、それが、ティムの火に油をそそぐ。炎の剣も、より炎が大きくなった気がする。
エイッ、ヤ―
勢いづけてティムが打ち込んでくるが、大振りなのかあまり複雑なフェイントのような動きもなく、みえみえの攻撃が続いた。さすがに木刀で受けるのはためらわれたので避け専門だ。ティムの動きも強化されているのだろうが、プヨンの動きに比べたら、十分に亀だった。
よくよく見ると、剣の剣身部分が真っ赤になっている。それを見て、プヨンはふと思った。
(こいつ、3000℃とかいってたけど、赤くなっているだけですんでいるのなら、どう考えても3000℃はないんじゃないか?きっと1000℃かもっと低いんじゃないのかな)
戦いながら、そんなことを考えていた。似たような攻撃パターンが続き、単調な動きに飽きてきたそのとき、ティムの振りがひときわ大きくなった。
「くらえっ。火炎弾。これが、この魔法剣の真の威力だ」
大振りの剣身から、小石程度ではあるが、数発の溶けた鉄の塊が飛んできた。油断していたプヨンは、とっさに顔をかばいながらよけたが、一粒ふとももにあたってしまった。硬質化で傷はつかないようにしていたが、熱は感じてしまう。
「あっつっ」
「あ、プヨン。大丈夫?」
サラリスが心配して声をかけてくれたが、目とかにあたるとやばそうだ。ただ、大きさが小さくふとももの服の上からだったので、鉄粒とはいえ、ひどいやけどにはなっていなかった。
「リパリー」
小声でつぶやき、とりあえずの応急処置をしておく。皮膚表面がただれただろうがすぐに回復をかけたこともあり、動くのにまったく問題はなかった。
その後もそうした攻撃が何度か続いたが、基本は、振り下ろした剣の方向に飛んでくる。その直線上に立たないようにすればいいので、避けることはそう難しくはなかった。ただ、だからといって、良い対応も思いつかない。さて、どうしたものか。プヨンは、考えていた。




