水魔法の使い方 2-3
「じゃぁ、プヨンいくわよー。といっても、その果物持っててくれるだけでいいけどねー」
「わかった、じゃぁ、持ってる。ユコナが、このきゅうりにかけるんだよね」
「そうです。ちょうど腕みたいな感じで、腕代わりのきゅうりでゆっくり殴りかかってきてください」
そう言われて、プヨンは、きゅうりを持つ。ちょうど肘から手首くらいの長さだ。それをもってゆっくりとユコナに殴り掛かった。
ユコナは事前にキャスティングでエネルギーを集めていたのか、即座に叫ぶ。
「フロストバイト!」
プヨンがゆっくりと振り下ろすきゅうりを両手で抑えた。ゆっくりとだから、掴むような仕草になる。きゅうりが急速に凍り付く。凍ることで、内部の水分の体積が増えたからか、外側の皮の部分が裂け、まだ凍ってない水分が噴き出してきた。その噴き出した水もあふれだすと同時に、また、凍ってしまう。
「おぉぉ、おれのぉぉうでがーーーー。うぎゃー。でも、これ、凍ったから膨張したのかな?これはそう?」
プヨンが自分の腕に見立てて恐れおののいていると、
「氷の壊死デシ。ふふふ。すごい?プヨンのほんものの腕でも試したいけどなー」
「・・・それはダメ」
そう言葉を交わしている間に、ユコナは、もう一つの球体の果物を取り出した。メロンか小さめのスイカのような感じだ。
「じゃぁ、今度はこっちで。投げつけてみて」
そう言われて、プヨンはユコナに向かって、放り投げてみた。ちょっともったいなかったが。
「フロストバイト」
ユコナは、飛んでくる空中の果物に向けて、同じ魔法を使った。果物は空中で凍り付いていく。そして、凍り付き水分が膨張したため、果物は空中でいくつかの塊に割れてしまっていた。
「あーあ。もったいない」
「魔法は鬼道なり。ふふふ。私、魔法使うときは遠慮しないわ。悪い子には特にね」
「そうですか・・・。はぁ」
プヨンは大きくため息をついた。
プヨン達には聞こえなかったが、ハリー達は、驚いていた。
「な、なんだあれ。空中で、破裂したぞ。さっきのきゅうりっぽいのも、中から破裂したようだ」
「じゃぁ、次は、プヨンの番ね?プヨンもできるでしょ。見てみたい」
「え、俺もするの?なんだそれ」
しかし、プヨンの返事を待たず、ユコナは、きゅうりをもって、襲い掛かってきた。ゆっくりと。プヨンは、反射的に反応してしまった。
「ブラストチラー」
ユコナの徐々に凍る魔法と違って、瞬間的に-40℃近くまで凍らせる。内部の細胞壁が壊れず新鮮さを損なわない氷結方法だ。水から氷になる際の組織破壊が起こりにくく、果物は凍り付いたが、特に破裂とかは起こらなかった。
「つめた。????、でも、なんで、水が噴き出てこないのですか?凍らせましたよね?」
「うん。凍らせはしたよ。でも、うまくきれいに凍ったから、鮮度良好みたいだね」
「???そうなのですか?じゃぁ、次はこっちを投げるからね」
ユコナはへんな顔をしながらも、次のメロン状の果物を取り、投げつけてきた。それを軌道を読みつつ、同じように空中で凍らせる。
「ブラストチラー」
こちらも空中で瞬間冷凍してみた。そのため、今回も、特に空中で破裂することもなく、そのまま飛んできた、そして、プヨンは手でそれを受け止めるが、
「ソニケイショーン」
バゴン
大きな音がして、果物は粉々に砕け散った。手のひらを防御魔法を応用して硬質化させ、その硬質化した手のひらを1秒間に2.5万回ほど振動させ、超音波を作り出した。
「な、なんですか、今のは?」
「あぁ、凍らせた後、粉々に砕いてみたんだ。2段階魔法だよ」
硬いものに超音波振動を加える。これにより内部に発生するキャビテーションの衝撃波が物質を細かく砕くことができる。超音波破砕機と同じ原理だ。
「そ、そうなんですか?それってどういうことですか?」
「魔法は奇道なり。ユコナ。すぐにわかってしまうようなものではダメなのだよ。内緒」
プヨンは、なんとなく面倒になって、そういうものがあるとだけ説明したが、ユコナは不服そうだった。
「な、なんだあれは、粉々に砕けてしまったぞ」
ハリーは、突然プヨンの手元の果物が粉々に砕けるのを見て青ざめていた。横を見ると、ビエラも同様だ。
(あ、あれがあいつらの普段の攻撃魔法なのか?あんなのくらったら・・・)
ビエラは、ハリーの方を振り返りもしない。プヨンの足元に1cm粒くらいに砕け散った果物のかけらを、青ざめた顔で見つめていた。
「ビエラ、あいつらの治療費は、すみやかに払っといてくれよ」
コクコク
声には出さないが、ビエラは、激しく何度もうなづいていた。
 




