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魔法の使い方教えます  作者: のろろん
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観光案内の書き方(ユトリナ)2

 朝がきて、まぶしさで目が覚めた。


 そこそこ陽が高くなったころメイサがきて、一通り世話してくれた。その後もあやしたりしてくれているのだろう、いろいろとかまってくれるが、なんというか気恥ずかしく、まだるっこしいだけだった。


(これ、どうしたらいいんだろ。喜んだらいいのか?手くらいふるか?)


 いい大人だったカタロとしては、素直に反応するのもためらわれ、愛想をふりまいているつもりでも、どこか笑顔もひきつっている。


 そのうち、再び扉がノックされ例の制服を着た女性が入ってきた。メイサを見つけると、


「おや、こちらにおられたのですか?昨日、裏の小屋で失火があったそうで、一部が燃えたそうです。すぐ消えたそうですけど一応確認をお願いします。」

「そうなのですか?どこですか?」


 メイサはそう答えながら部屋から出ていった。


 入れ替わりでパエラが入ってきた。メイサにでも頼まれたのか、自分を抱きかかえ、あやしついでに、建物の中をうろうろしてくれる。


 部屋からでると、長い廊下の両側に同じ扉が続いており、突き当りに階段が見えた。


 どうやら3階建てらしく、3階をまわってから1階の大きな礼拝所に連れて行ってくれた。椅子が並んだ大部屋だ。このあたりで崇拝されているのか、2体の人型の神像が立つその前に祭壇があった。祭壇には大量の液体の入った小瓶が並んでいた。


 その隣の部屋には20人程度が集まっていたが、その大半はなんらかの怪我をしているように見えた。怪我人は多くが武装しており、みんな若く見える。外見年齢もせいぜい40歳くらいまでだ。病人や年配の人もいるが怪我人に比べると数人だ。


 部屋の中央には例の薄緑色のローブを着た女性が2人いて、けが人の横で何かぶつぶつ言いながら作業をしている。どうやら治療にでもあたっているようだ。この教会は病院か救護施設でも兼ねているようだ。

 

 その後パエラは食堂による。

 いろいろな食材が置いてあったが、どこか見覚えのある野菜や果物、肉などが金属の包丁や器と一緒においてあった。その横には大きな水樽もある。冷蔵庫のような家電や水道なども見当たらない。せいぜい氷で鮮度を保つ程度なのだろう。中央にはかまどがあり、薪の小山があることから煮炊きなどは木を燃やして行うことがわかった。

 

 食堂の大きなテーブルでは、カタロと同じような境遇なのか、子供たちがばらけて座り、銘々で遊んだり勉強したりしているのも見えた。


(見た範囲で考えると、文化的にはそこまで近代ではないんだろうなぁ。まだ、電気やガスなどもないのかなぁ。水も水道はなさそうだから井戸か)


 そんなことを考えていると、パエラは奥から果物を取り出し、しぼった果汁を飲ませてくれた。梨のような甘い味がする。中で果汁を飲ませてもらってしばらくすると、メイサが食堂に入ってきた。

 パエラはそれを見て、思い出したように聞いていた。


「そういえば、この子の名前はなんというのですか?」


 メイサは、一瞬はっとしたような顔をして、


「な、名前ですか。そういえば、名前は・・・・。たしか、そばにあったものの中にも名前や素性につながるようなものは特になかったですし。そういえば、他にも白い布なども入っていましたけど、中身はみていなかったですね。ちょっと見に行ってみましょう。」


 メイサは部屋をでていこうとしたので、パエラも飲ませていたものを置き、抱きかかえたまま一緒に部屋からでてついていく。自分が入れられていた箱とその中身がおいてある部屋に移動した。


 メイサが包まれた布をもってきて中身をあけると、小さな指輪と20cm程度の短剣が一本入っていた。


 指輪は正方形の台座のようなものがあるだけで、特にこれといって特徴のない金属の指輪だった。宝石のようなものもついていない。


 短剣もふつうの金属製の短剣だった。引き抜かれたものを見ると、儀礼用ではなく真剣で刃が入っている。ただ、錆もなく刃先は輝いているが、使い込んだものには見えなかった。持ち手も特に宝飾もなく、所属でも示すのか、盾の前で青と赤の剣が交差しているような模様が入っているくらいだった。

 

 一通り、といっても1、2分だが、確認し終わるとメイサはつぶやいた。


「うーん、名前や出身を示すようなものはないですねぇ。この指輪や剣は何か由来があるのかもしれませんが、ちょっとみたことはないですね。」

「そうですか、まぁ、そんなもんですよねぇ。といって、名前はいりますよねぇ。」

「・・・・そうですねぇ。どうしましょうか。パエラ、何かいいのありませんか?」


 パエラは、唐突に聞かれたため、ちょっとあわせて考えてみたが、


「そうは言われても、ハイっとすぐに出てはきませんが・・」

「まぁ、そうですよねぇ・・・・・」


 2人でしばらく悩んでいたが、メイサは、


「ほっぺたがぷよぷよしているし、“プヨン”にしましょうか・・・・」

「プヨンですか?特に私はこだわりはありませんが、よろしいんですかね?」

「そうしましょう。」


 メイサは返事をした。こうしてカタロは今日からプヨンと呼ばれることになった。


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