観光案内の書き方(ユトリナ)
保護してもらったカタロと、メイサ、バザリアの3人は、その後1時間ほど歩き小さな町についた。
「おや、メイサ様、今、戻られたのですか?お疲れ様です」
「ただいま、戻りました。」
町の入口に近づくと、門番らしき男性がこちらに近寄りながら話しかけてきた。布地の服の上に革製の厚めのジャケットのようなものを羽織り、一応武器として金属製の槍を持っている。そばには、弓らしきものも置いてあった。
(槍と弓装備の門番かぁ。守衛がいるってことは、何か守らないといけないのか、それとも、町の入口っぽいから形だけいるんだろうか。何を言っているのか、言葉はわからないけど、挨拶でもしてるのかなぁ)
などと、まわりを見ながらカタロはいろいろと考えていた。
メイサ達は挨拶を交わすとすぐに町に入り、入口から続く通り沿いに歩いていく。
時間帯は日が沈んで2時間くらいか、街はすでに暗くなっているが、まだそれなりの人通りがあり活気のある雰囲気だった。行き交う人の話し声が聞こえているし、酒場のようなところや飲食店もそれなりに賑わっている。
行き交う人の服装などは人それぞれだが帯剣していたり、武器らしきものも持っている人がいる。そのわりには、女性なども出歩いているので治安も悪くなさそうに見えた。
メイサとバザリアの2人は行き交う人に挨拶をし、顔見知りとは立ち止まって話などしながら、まもなく小さな教会というか修道院というか、そんな建物にたどり着いた。
「おや、おかえりなさい。遅かったですね」
「ただいま、パエラ、今帰りました。」
入口近くにいた、メイサ達と同じような服装の女性から話しかけられ、メイサは返事をして中に入っていく。
入口にいた女性、パエラは、すぐにメイサの抱えている赤ん坊に気づいて、
「そ、その子は、どうされたのですか?」
「伺った村長宅からの帰り道で、道端にこの子が箱の中に入れられているのに気づきました。事情はわかりませんが、まわりには誰もおらず、やむを得ず保護したのですが、少し院長様に話をしたいと思います。」
「院長は、2階の執務室ですかね」
「そうですか。ありがとう。お伺いしてみます」
そういって、メイサは、赤ん坊を抱きかかえたまま、2階にあがっていった。
コンコン
「どうぞ」
院長室の前で、メイサは扉をノックして、中からの返事を確認したあと、扉をあけた。
「おかえりなさい、どうでしたか?」
院長は見た目からして風格のある女性だった。メイサを見ると立ち上がってこちらに近づきながら声をかけてきた。
「依頼されていたことは、いつものことですので、特に問題はありませんが、こちらが・・・」
そう言うと、メイサは赤子を見せながら今日あったことを説明した。
「・・・状況はわかりました。まぁ、たまにあることですので、いつも通りで」
特に驚いたふうもなく、一通り聞き終えた院長はそう言い、返事を聞いたメイサも一礼して退室していった。その後、違う部屋に連れていかれ、何かのスープのようなものを飲まされたあと、簡易で作られたベッドのようなところに寝かされた。
明かりの消された誰もいない部屋で寝かされ、ようやく落ち着いたカタロは、激変した今日1日を振り返っていた。
(とりあえず、まぁ、無事、明日がむかえられそうで、ほっとしたけど、どうしたもんか。まぁ、夢のようではあるけど、現実なんだよなぁ。)
あまりの激変ぶりに、昨日までのことが現実だったのかもよくわからなくなっていた。
(やっぱり、どこか違う世界に飛ばされたのかな?たしかに雰囲気は見たことないし、えらく古めかしい感じ。でも、町や屋内はそこそこ明るいから、電気くらいはあるのかな?蝋燭やランプってわけでもなさそうだったけど。マジノは、確か、違和感のないようにするっていってたし、見た感じでは、人だよなぁ。たぶん)
部屋の中を見回してみたが、ふつうの部屋だった。ただ木造のようで、かなり古めかしい感じはする。町の明かりがわずかに入ってくる程度の薄明りで、細かいところまではわからなかったが。
(そういえば、投げ出されたとき落ちるなと思ったら、急に落下が止まったような気がしたなぁ。助けてくれた女性の指先から、炎?明かり?なんかそんなのも出ていたし。あれはなぜなんだろう。何かをつぶやいてたら、急に指先が光っていたし焦げ臭かった。マジノは思念が物質に影響するって言ってたけど、これがそういうことなんだろうか?)
思い返し、自分なりに整理してみる。
「火よ出ろ」「ファイアー」「熱くなれ」「水よ出ろ」
もしかすると、さっきと同じように念じたら何か起こるのかと指を突き出したりしながら、適当につぶやいてみた。いろいろ試して見たが、何も起こらない。結局、飽きてやめてしまった。
(まぁ、そんな単純じゃないよな)
まぁ特に深く考えもせず言うだけ言ってみただけでできたら苦労はしない。他にもいろいろ考えているうちに眠くなって寝てしまった。
 




