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魔法の使い方教えます  作者: のろろん
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護衛の仕方 2-11

雷が落ちてから数秒、プヨンはようやく目を開け、周りを見渡した。耳がキンキンしているので、まだ音はよく聞こえないが、目はもう大丈夫だった。雷が落ちた瞬間は熱と衝撃を感じたが、致命的なほどではなかった。プヨンの目の前10mくらいのところに、黒い焦げ跡がある。ここに落ちたようだった。

「みんな大丈夫なのかな?」

話しかけてみたが、ユコナもサラリスもうずくまっているだけで返事が返ってこないから、聞こえていないようだった。ホイザーも寝たきりになっている。そう思っていると、さっきと同じような感覚が再びあった。髪の毛や服が引っ張られるが、今度は上ではなく地面のほうに引っ張られるようだ。

「あっ。今度は、こっちか。インシュレーション」

いつもの体表面を硬質化していたロンズデーライト魔法の応用で、膝から下の体表面をダイヤモンドで覆う。ダイヤモンドは、きわめて電気を通しにくい性質があるため、電気系には強い耐性がある。プヨンは、これを利用した。

「あ、足が動かなくなった」「な、何これ、うごけない」

「ご、ごめん、ちょっとそのままで」

プヨンもしゃがんだまま、じっとしていた。

サラリスとユコナも、肌が硬質化したため、しゃがんだまま動けなくなってしまった。転ぶことはないが、手をばたばたさせている。ホイザーは、背中面が同じようになったまま、横たわっていた。

(寝そべったままだけけれど、高さが低いから、雷は落ちにくいかも)

ホイザーは寝そべったままで、サラリスとユコナはしゃがんだまま、動けないので、手をばたばたしていた。ピリピリした感覚は続いていた。


「な、なぜだー。なぜ、何も起こらんのだ」

魔力は注いでいるつもりだが、一向に発動する気配がないため、ニードネンはイラついていた。ゴスイは、目線をあわそうとしない。

「あ、あの女たちが、地面に向かって手を振っているが、何かしているのか?」

「さ、さぁ。聖雷を抑えるなど、聞いたこともありませんが」

理由もわからないが、途中で魔法発動を止めることもできず、そのまま力を注いでいた。すると、プヨン達から少し離れたところにあった低め、といっても5mくらいはあるが、木の先から、空中に向かって放電の光が走った。

バシー

木の枝などが燃え上がり、すぐに雷特有の音が聞こえてきた。

「な、なんで、あんなところから?」

「さ、さぁ?ところで、わたくし、もう、残量がありません」

ゴスイが、手のひらのストレージ魔法の入口付近を指さしながら、ニードネンに報告した。妙に落ち着いているようにも見えるが、状況を理解できていないゆえの無表情だと思われた。

「わ、わかっている。それは私も同じだ。すでに、残り少ない」

「そうなのですか?これだけあれば楽勝だと豪語されていたのでは?」

ゴスイがチクチクとニードネンを責めるが、ニードネンも返す気力がないようだ。

「そ、それを言うな。まさか、このような事態になるとは・・・」

ニードネンは、どうすべきか、腕組みをして考えていたが、容易に結論は出ない。

「残った魔力を動員しても、必ず目的が達成できるとは思えん・・・、かといって、このまま退くのもしゃくにさわる。生かしてとのノビターン様の仰せだったが、おめおめと、戻るくらいなら・・・」

「ど、どうなさるのですか?」

「こうしてくれるわ! 出でよ。黄泉の業火よ。ダルヴァーザ」

「あ、そ、それは、危険では?」

ニードネンは、意識を集中させ、みたびキャスティングに入った。先ほどと動きは違う。ゴスイは威力を考慮して止めるべきか躊躇したが、即座にとめなかったこともあって完成してしまったようだ。遠く、プヨン達の後方、メサル達の乗った馬車のすぐそばで空気が渦を巻くように集まり、中心から激しい炎が噴き出した。吹きすさぶ風のため、炎が渦を巻くように集まり、そして、炎の中心からはじけ、炎の塊が四方に飛んだ。炎と風だけなので大きな爆発音などはなかったが、馬車が大きく揺れ、横倒しになりそうなくらい傾くのが見えた。

「くっ。ちょっと離れていたからか、残量すべてを使ったわりに思ったほどの威力が出ませんでした・・・。是非もなし。急ぎ撤収!」

ニードネンが走り出し、ゴスイも無言で後に続いた。


ゴゴ―。

「うわっ」「えぇ」

すでに、先ほどの硬質化は解除し、再び動けるようになったプヨン達はびっくりして声をあげた。突然背後のメサル達のいる馬車のそばで、風が渦巻き、その中から炎が現れ周囲に破裂するように飛び散る。この爆炎魔法の影響で、メサル達の馬車が激しく揺れている。さいわい直撃ではなかったからか馬車は横倒しにはならなかったが、揺れのひどさからすると中身が無傷でいるとも思えなかった。

「あ、あいつらが反対に走っていく。何するつもりかしら」

サラリスが叫んでいる。

「俺は、馬車の方を見てくる。サラリスは、あっちを警戒して、まだ何かしてくるかも」

「わ、わかったわ。ユコナはホイザーをね」

サラリスにそう言われたユコナは、サラリスを見ながらうなずいた。それを見たプヨンは、馬車の方に走り出した。


ホイザーは、寝返りをうっていた。


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