護衛の仕方 2-9
一度相手からの火球を防いだあと、プヨン達は相手の出方を伺おうとしていた。と思っていると、相手側から、第2波の火球が放たれるのが見えた。今度は数が多い。全部で、30発くらいはあるように見えた。
「ふふ。私の限界はあんなものじゃないわよ。いくわよ。アイギスの咆哮! 狙った獲物ははずさないわ」
サラリスも同程度の大きさの火球を30発程度放つ。教官試験で見せた防御魔法と同程度の数、おそらく、現時点の限界に近い数を解き放つ。お互いの中央付近ですれ違い、約半数を打ち落としていた。
「アイギスの咆哮で約半数は落としたわ。残りは本体を攻撃して・・・やるのよぉぅ・・・」
急激にサラリスの声がしぼんでいく。相手は打ち終わると同時に時計回りに距離を保ちつつ迂回していた。
「動いちゃダメって何度言ったらわかるのよ!」
サラリスが文句を言う。
「なるほど、3手目は地面を狙ったんだな」
「動かない敵などいませんよ」
「うぅ・・・。ひど・・・」
ここ一番の見せ場の炎舞をなじられ、サラリスは少しふてくされていた。そう言いつつユコナは先ほどと同じように残りを落とそうとしているが、1つだったのに対し今度は残りが10以上あり緊張しているようだ。ここは、プヨンは保険をかけておくことにした。
「アルパインルート」
「デルカタイマウアー」
ユコナの叫びと同時に、振った手の先に複数の氷の板が現れる。通称、クロベンと言われる氷の絶壁をイメージする。氷は空中や地中の水分を集めた上で、水蒸気→水→氷とするため、空気の温度をただ上げる炎よりは格段に難易度が高く、多くのエネルギーを必要とする。そのためか、全部で7つしか出なかったようだ。それを見越していたプヨンは、空中の窒素を急激に冷却し、液体窒素の薄い壁を空中に出すことにした。ユコナの氷壁は、全数、相手の炎を打ち落としていた。プヨンの魔法は、腕を伸ばしてゆっくりと横に振る動作にあわせ薄い膜ができていく。振り終わると、前方の3mくらいの高さの空中に5m四方くらいの薄い膜ができていた。その幕のせいで少し視界がぼやけているが、残った数個はプヨンの液体壁に衝突し、炎は熱で液体窒素を急激に気化させながらも、熱を奪われて消滅していた。
「あの2人の女の子達は魔法が使えたのか。相手の魔法もそうだが、それを防げる2人もすごい。ただの話し相手じゃないのか」
馬車から出るなとは言われたメサルだったが、馬車の窓からサラリスとユコナが打ち合いをしているのを見ていた。
「お、お兄様、わ、私にも見せてください」
メサルに顔をくっつけて、レアも外を見ている。
「しかし、あいつらは誰だろう。俺たちを狙ってきているのか?」
「さ、さぁ、私には心当たりはありませんが・・・ペリン・・・」
後ろにいてぶるぶる震えていたペリンは、全力で首を横にふって、知らないと伝えていた。
「い、いったいどういうことですか?ゴスイ。今のも防がれるとは」
「い、いや、その。なぜでしょう。あのようなものがいるとは」
「もういいです。今いる手前の3人は確保する対象外です。こうも邪魔立てするのなら仕方ありません。こうなったら、私の聖雷で一撃で。ふふふ。これを使うのは久しぶりです」
そういうと、ニードネンは大きく息を吸い込み深呼吸をすると、ゆっくりと手を広げ、先ほどのゴスイのように腰に手をやりながら、ストレージ魔法を使用し中の魔力瓶から魔力を吸い出しはじめた。
「天を支配する精霊達よ、我が呼びかけに応えよ・・・」
複雑な手ぶりをしながら、一言ずつ呟くようにゆっくりとした詠唱がはじまった。
ホイザーは、身動き1つしなかった。




