護衛の仕方2-2
2人並んで、外に出ると、同い年位の女の子が待っていた。おっとりした顔立ちで服装も普通の布製の服を着ているだけではあるが、腰に剣を佩いているところを見ると、剣士のように見えた。
「お兄様、お待ちしていました」
メサルを見つけると話しかけてきた。どうやら、兄妹なんだろうかな。
「レア、待ってたんだね。」
「だって、一緒に入ってくれなかったんですから、待つしかないじゃないですか」
「・・・そ、そりゃ、一緒には入れないだろ・・・・」
プヨンは、2人の唐突な会話に、えっと思って戸惑っていたところ、
「お兄様、こちらの方は?」
ふいにプヨンの方を見ながら、レアと呼ばれた女の子は、メサルに問いただした。
「プヨンです。さっき、風呂で一緒になって、ちょっと話してたもので・・・」
自己紹介すると、レアの表情がさっと変わり、
「えぇ。わ、私とは入らなかったのに、この方と入っていたというのですか?」
「え、えぇ?」
プヨンは、2人のやり取りに、びっくり半分、興味半分で、思わず、レアを見つめてしまった。レアは、かなりの兄ラブの子なんだろうか。
「た、たまたまだ。たまたま中で一緒になっただけ。男同士なんだから、ふつうだろ」
「そ、それはそうですが。本当ですか?よからぬものであれば、成敗しなければ・・・」
よくわからない修羅場をもっと見てみたい気もしたが、ぶっそうな言葉も聞こえ、プヨンは、慌てて、
「あ、あの。・・・・俺、失礼しますよ。また、会ったらよろしく」
「また、会う約束をしているのですか。どういう・・・・」
レアの口を塞ぎながら、メサルは、
「す、すまない。今日は、これで。また、会う機会があったらよろしく」
暴れるレアを押さえつけながらだが、筋力がないと言っていたためか、女であるレアにも力負けしそうだった。プヨンは、余計なことに巻き込まれる前にさっさと退散することにした。
(な、なんだったんだ。あの子は・・・・)
部屋に戻っても、結局、誰も戻ってきていないようだった。
(みんな、朝まで頑張るんだろうか。元気だなぁ。誰かハカイされたんじゃないだろうか)
そんなことを考えながら、プヨンは、寝ることにした。
翌朝になっても、ホイザー達は戻ってきていなかったが、とりあえず、ユコナ、サラリス達と合流した。
「昨日は、結局、ホイザー達は誰も戻らなかったらしい」
「まぁ、予想通りですけどね。そんなものでしょうね」
ホイザー達が戻らなかったことを伝えると、2人はやれやれという顔をしながらも、何をしているかは想像がついているようだった。2人も特にこれといって気にするそぶりもなく、3人で予定していた朝食を食べ、待ち合わせの場所に行くことにした。
待ち合わせの場所にいくと、豪奢な馬車が停まっている。ネタノ聖教の守護神の一人である、ヤッパリム神の紋章の入った儀装馬車だ。となりに、プヨン達が乗ってきた荷馬車が停まっているが、大きさも雰囲気もまったく別物だ。
「すごいねー、この馬車。しかも、引いてるのは一角獣だよ。乗り心地もよさそう」
そう言われて、プヨンが馬車の前を見ると、馬の頭のところに角が生えていた。
「へー、一角獣って聖獣なんでしょ?初めて見たかも」
「ユコナ、私たち、こっちに乗れるのかな?」
馬車の周りで、主にサラリスとユコナが、馬車を見ながらあれこれ話ししていると、さすがに、時間通りにはホイザーやハリー達もあらわれた。後ろに2人、プヨン達と同い年くらいの男の子と女の子、そして、1人の年配の修道女を連れていた。
「みんな、遅くなってすまなかった。今日の護衛を依頼された、ネタノ聖教のメサル様とレア様、それとお二人の世話係と案内役をされる修道女副長のペリン様だ」
ネタノ聖教は、ここよりもっと北の方が地元で、このあたりでも大きな宗教組織の1つだった。特に敵対などはしているわけでもなく、平和的な団体だ。あらためて目の前の3人を見たプヨンは、メサルとレアに気づき、昨日話をした時に護衛の話をしたことを思い出した。メサルも似たような顔をしている。
「プヨンさん、また、お会いしましたね。昨日はありがとうございました」
「あ、昨日の・・・。やはり、お兄様と秘密の約束をしていましたのね?」
メサルとレアの声が聞こえる。
メサルはそれを遮りながら、礼儀正しく、3人、特にプヨンに向かってあいさつしてきた。レアの方は、本能的に見てはならない何かを感じるのでスルーした。
「よろしくお願いします」
プヨンもメサルだけを見て、形式的な返事をしておいたが、目の端でちらっとレアを見るとこちらを見ているのがわかる。まぁ、視線はいたいほど感じられているのだけれど。
(ちょっと失礼だったかな)
とも思ったが、やはり逃げて横に目をやるとサラリスとユコナも横で一礼しているが見えた。ホイザーはそれを聞いて、
「なんだ、プヨンはメサル様と知り合いなのか?」
「昨日、温泉でたまたま、一緒になったんだよ」
と事実を伝えておいた。メサルのすぐ横から、なにやら闇の世界出身ですかといえそうなくらいの気配が感じられたが、とっくに見てはならないものと認識されているので、今以上の新たな問題はなかった。だからといって、安全なわけではないけれど。
ふと、馬車の向こうを見ると、ハリー達がきていた。
「あっちに、ハリー達もきていますね」
ユコナも気づいてつぶやいたが、ハリーは2日酔いなのか、目が危険そうだった。残りも寝不足のようには見える。
(昨日、あんなのがあったのに、大丈夫なのか?)
とも思ったが、サラリスやユコナもわりと気にしていないようだし、それなりの危険な仕事で今日までやってきたのだから、こんなもんでなんとかなるのかなとも思えた。
 




