護衛の仕方2-1
どれくらい眠っていたのだろう。もう、外はまっくらで、町の喧騒もほとんど聞こえなくなっているから、深夜なんだろうか。でも、部屋は静かで、ふと目が覚めただけで、ホイザー達も、まだ戻ってきていないようだった。サラリス達は部屋が違うからか、どうしているのかわからない。
(そういえば、風呂も入らず寝てたな。せっかくだし、温泉でもいこうか)
そう思って、プヨンは、1人で温泉に入りに行った。案内に従っていくと、奥に着替えるところがあり、ちょっとした露天風呂のようになっていたが、時間なのか誰もおらず、貸し切り状態だったので、1番奥まで行ってのんびり入ることができた。空を見上げると、半分くらいの月の横に、赤い星が3つほど並んで見えていた。
(そういえば、夜空をゆっくり見ながら風呂って、記憶にないなぁ)
まったりしていると、もう1人入ってくるのが見えた。
(おっ。こんな時間にもう1人か。でも、まだ、あがるのははやいかな?)
そう考えていると、入ってきたのは、妙に動きがぎこちないような気がする。
(体のどこかが悪いのかな?)
「大丈夫ですか?手伝おうとまでは思っていないですが、必要があれば」
プヨンは、とりあえず、声だけかけておいた。
「だ、大丈夫です。ありがとうふつうに動けるんで。ありがとう」
そういうと、少し離れた入口よりのところに腰かけたようだった。1分ほど沈黙が続いたが、他に誰もいないのもあって、あっちから話しかけてきた。
「どちらから、こられたんですか?温泉で?」
声もだし、うっすらと星明りで見えるところからだと、かなり若そうに見えた。物静かな雰囲気もするし、おっとりしているのか、口調もゆっくりに感じられた。
「隣町からだよ。ユトリナから、ちょっとお仕事で」
「へー、そうなんですね。実は、来年入学する学校の下見に行くんですよ。だから、その街も通ります。通過するだけですけど」
しばらく、お互い特に名乗ることもないまま、雑談や自分の環境などを話ししていた。聞くところによると、異国といっても隣の国らしく、こことほとんど変わらないらしいけれど、回復系の治療勉強を兼ねた留学だと教えてもらった。
「そういえば、さっき、なんか動きがぎこちなかったけど、どこか体が悪いからとか?」
「えぇ、ちょっと筋力が弱くなる病気で。でも、筋力魔法でふつうの人程度には動けるんですよ」
(なるほどね。それで、さっき筋力がない上に、魔法を使って強化しながらだから、ゆっくりした動作になっていたのか)
たいしたことではないが、違和感を感じた正体がわかって、プヨンはすっきりしていた。
そう話しているうちに、だんだんのぼせてきて、プヨンは風呂から出ることにした。
「じゃあ、僕は、明日、護衛の仕事があるので、このくらいで出ますね」
プヨンは、そう言って温泉を出て、脱衣所に向かって歩いて行った。
一通り支度が終わって涼んでいると、相手も、そう長く入っているはずもなく、出てきて着替えていた。灯火の光のあるところに出ると、年は同い年くらいに見えた。留学がどうのと言っているくらいだから、だいたい想像はしていたが。
(そういえば、病気だというわりには、背が高いよな。180cm近いんじゃないか?けっこうがっしりしているように見えるけど)
そう外見を見ていると、
「さっき、護衛と言われましたけど、もしかしたら、明日、お願いしている護衛の方ですか?」
そう聞かれて思い出してみたが、護衛対象はあまり細かくは聞いていなかった。
(たしか、ホイザーは、護衛対象は女の子だと言っていたよなぁ。違うよね)
「うーん、どうでしょう。自分が聞いていた人とは、違うと思うけどなぁ」
「そうですか、失礼しました。あ、そういえば、言い忘れていましたが、メサルといいます。また、お会いしたらよろしくお願いしますね」
「プヨンです、よろしく」
少し離れながらで着替えたりもしていたが、時々、ぎこちない動きをしているのが気にかかった。助けるほどではないけど、結局、出るタイミングが同じになってしまい、ほぼ同時に外に出ることになってしまった。




