教官試験の受け方3
次の3組目はどちらも同じくらいの年らしく、20代後半くらいに見える男性2人組だった。鎧を着ているところを見ると実戦派なのかもしれない。受験者は先に精度からはじめていた。順調にすすみ、先ほどの女性よりはできるようで、20m位まで命中させていた。
「なぁ、サラリスもあのくらいはできるの?」
プヨンが試験を見ながらサラリスに聞いて見ると、
「フッ。あのくらいなら、問題ないわ」
返事からはけっこう自信があるようだった。他人が本気を出しているのを見る機会が少ないからだが、今一つ、平均がよくわからないプヨンだ。続けて試験をしている威力についても先の女性よりはあるようで、両手を広げたより少し大きい火球をだしていた。
「おー、あれは、けっこう大きいね。2mはあるんじゃないか?」
一見で、直径2mはある。あれを食らったら、ただではすみそうもない。
「そうね。さすがに試験を受けるだけはあるわね」
「なぁ、サラリスは、自分が出す魔法を、自分で防げるのかい?」
「それは、無理ね。ある程度は威力を減らせるけど、無効化はふつう無理よ」
「どうして?」
「魔法を発動するのに、周りから集めたものを意識して放つわけでしょ。発動まではギャザリングとかで十分に時間をかけるけど、防御はそれを一瞬で無効化するんだから、同じ量は無理よ」
「な、なるほどな。相手が貯めたのを一瞬で解除だと、相当実力差がないと難しいのか」
そんなことを話していると、試験者も最後の防御をするところにうつっていた。相方のほうから10発程度が放出されたが、何もせず突っ立っていた。どうするのかと思っていると、そのまま直接、試験者の体で受け止めたようだ。ただ、倒れたりはせず、問題ないように見える。
「全弾くらってるけど、いいのかい?」
サラリスに聞いて見ると、
「やるわね、今の。よほど自信があるんでしょうね。力が足りなかったら、ダメージ受けちゃうんだし、念入りに調整しているか、よほど、試験者は防御の実力があるんでしょうね」
あれで問題ないのだろうかと考えていると、サラリスが察してくれたのか教えてくれた。「防御は、確実に防げるなら、こちらの方法が主流よ。見栄えもいいし、動作もはやいしね。自分に当たる直前で相手の魔力を霧散させたんだけど、タイミングあわせて、相手以上の魔力を集められないと完全には無効化できないのよね」
同程度の実力者が魔法を正面から打ち合ったとすると、放つほうはエネルギーを集めてから放つのに対して、防御する側はその集めたエネルギーを一瞬で消さないといけない。だから、同程度の魔法の打ち合いであれば、一般的には、魔法防御はダメージをある程度減らすのが限界で完全には無効化はできないらしかった。
(そうか。マジノ粒子から集めたエネルギーを具現化することが攻撃となるのに対し、エネルギーをマジノ粒子を介して分散させるのが防御か。小さくてもいいから、数を打ってくれっていっていた理由も納得だ。小さくないと防御しきれないってことなんだな)
前の2試合を見て、プヨンもおおよそのやり方がわかってきていた。
「火球の数はあのくらいでいいのかい?」
「あのくらいって、さっきのは、10発くらいだっけ?少ないわねー、もっと多くてもいいわよ。でも、プヨンは片手だっけ?まぁ、慣れもあるし、仕方ないわよね。遠慮しなくてもいいんだけどねー」
サラリスの遠慮するなとのお言葉がでた。
(そうか、まぁ、でも無茶ぶりして失敗させるのもなんだし、予定通りの片手でいいな)
やり方もしっかり把握できたし、プヨンも安心してきた。
サラリスの順番がきて、係から名前が呼ばれた。まずは、サラリスの威力示威をするため、サラリスだけが試験場の指定位置に移動していた。プヨンは、元居た位置で座ったまま様子を見ていた。すぐにサラリスは火魔法を放つ準備をはじめ、ギャザリングから何を言っているかは聞こえないがキャスティングの動作が見えた。やがて、サラリスの手の平あたりが赤く輝きだし、よくみる火魔法の炎が具現化されていった。
「お・・・おぉ、でかい・・・・」
プヨンは、思わず声がでてしまった。これが、サラリスの本気なのか、前回ゴーンを倒した時は、地下だったこともあってみることがなかったが、。ざっくりとみても、7、8mはありそうだ。火球の大きさだけで比較すれば、さっきの試験者の100倍以上のエネルギー量があることになる。
一方、サラリスは、試験とはいっても落ち着いていた。慣れた仕草で魔法を放つことができ、いつも通りの威力がでているようだった。
「ふふふ、プヨン、見てなさいよ。やーー」
掛け声とともに、サラリスは、炎を上空に向けて放った。距離に応じて炎の大きさは小さくなっていくが、少なくとも100m以上は飛ばせ、速度も申し分なかった。サラリスは、とりあえず、最初の試験を無事できてほっとしていた。
サラリスが放った炎の大きさもさることながら、それが放たれた速度もかなりのものだった。プヨンが過去みた他人の魔法では、火でも石などの投射などでも意識して飛ばすためか、人が手で直接投げるものとそう変わらなかったが、今の速度は弓矢とそう変わらなかった。
(おぉ、あの速さもすごいな。あれは、ちょっと正面から避けきるのは厳しそう)
サラリスがプヨンを見ながらにやにやしている。それを見ながら、プヨンは、サラリスと向き合った場合を想定してみた。
(先に精度のほうをやっちゃおうかな。防御を先にすると、全力出して疲れたら精度落ちそうだし。その前にちょっと休憩とろうと)
サラリスはそう考え、精度の方を先にやることにした。疲れているというほどではないが、数分小休止をとっている。指定位置に立って的の位置を確認する。的は、30度くらいの角度の範囲に点在している。
(さてと、どれからやろうかな。数をやりすぎるのも疲れて精度落ちるし、かといって、いきなり遠くにやってミスをするのもどうかなと思うし。まぁ、最初は確実なところからよね)
「じゃー、はじめます。まずは、20mからいきます」
サラリスの20m宣言を聞いて、プヨンは、ちょっと驚いていた。
(えっ。20mってさっきの限界ラインじゃなくて?いきなり、めいっぱいからいくのか?)
プヨンがそう思いながらサラリスを見ていると、サラリスは、さっきと同じような動作で火球を準備していたが、大きさはずっと小さく、こぶしより小さい程度だった。サラリスは、魔法を丁寧に放ったようで、速度もかなりゆっくりとんでいったが、特にゆらぎもなく、20mの的に命中していた。




