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魔法の使い方教えます  作者: のろろん
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教官試験の受け方2

 プヨンは試合場の隅に用意された、即席の控室に行ってみた。


 順番待ちをしているアデルを見つけたが、特に緊張したふうでもなく場慣れしている。見るからに暇そうなアデルは、すぐにプヨンを見つけて話しかけてきた。


「おー、プヨン。今日は見学か?」


「え、うん。そんなとこ。アデルはあんまり緊張していないよね。さすがだね」


「え。あぁ、まぁな。3ヶ月ごとで駆り出されるし毎度のことだ。それに、しょせんは、模擬戦だ。打撲程度の怪我はあっても、死ぬことはない。怪我も基本は治してもらえるしな。適度な緊張感のあるちょうどいい運動よ」


 獲物を狩るような目で不敵な笑みを浮かべている。アデルは教官を仕事にしているわけじゃないが、今日が資格更新のタイミングらしい。立ち話でちょっとした剣のノウハウなどを教えてもらっていると、すぐにアデルの番がきた。


「ちょっと行ってくるわ。まぁ、そこで、今言ったことを見せてやるよ。ちゃんと見てろよ」


 腕前を見せてやると言わんばかりに、自分の腕をぽんぽんと叩きながらアデルは出て行った。


 試合場を見ると2人ずつ3組がいるのが見える。


 最初の組の試合が始まる。双方とも筋力強化を使いながら、試験対象の武器である剣を使って打ち合っていた。


 遠目だが個人の持ち物ではなくレスルの訓練用の剣のようで、見た目が同じに見えた。


 おそらく技能以外の試験条件をなるべく同等にする意図があるのだろうとプヨンは勝手に納得する。


 あとは見た限りでは、どちらが強いかの勝負ではないからか、筋力強化や空中浮遊以外の攻撃魔法を使っていない。純粋に剣+肉体だけの勝負のように見えた。


 試合自体は高度な剣技の応酬のようで、それぞれの流儀の構えから打ち込んだり、色々なフェイントを駆使して戦っている。一見互角のように見えたていたのも最初の2、3分のことで、片方が最初の一撃を決めると、徐々に差が広がりはじめ、5分もしない間に一方は武器を落としていた。


 続く2試合目の後、3試合目のアデルは、最初から一方的であっという間に片が付いていた。


 アデルは無事に勝ったようだが、すれ違ったのか試合後の話を聞くことはできず、そのまま午後まで休憩となった。



 午後は攻撃の魔法の試験があるが、まだサラリスもきていなかったので適当にぶらぶらしていた。


 この間に受付に行って、先日の蜂駆除の件の報奨金と、ヒルマが冗談半分で約束してくれた害虫駆除経験の資格証を更新しておいた。


 ヒルマは不思議がっていたが、別のミドルのメンバーも依頼を受けていたようだ。指定場所に行ったところ、すでに巣がなくなっていたと報告があったようで依頼達成となった。


 新しい資格証をもらったが、この依頼はフィナと一緒に受けたことを報告していたので、フィナの分も一緒に受け取っておいた。


(報酬はフィナと山分けだよね。俺は運んだだけだし、半分でも多いくらいかもしれないけど)


 そのあとは静かなところに移動し、頭の中でサラリスが説明してくれた火魔法試験を思い出しつつ、どうするかをのんびり考えていた。


「これ、試験って見学できるんですか?」


 ちょっと他の人の戦いというものに興味があったが、受付の女性には、


「部外者はダメですよ。関係者のみです」


 以前ホイザーが魔法の使い方はあまり公にしたくない者が多いと言っていたが、そのせいか試験場所は当事者しか入れないと言われた。


 今日の魔法教官の試験はあまり種類がないようだ。ストレージの使用可能の証明と冷却系の魔法を少人数受けた人がいたらしいが、プヨンは入れてもらえなかった。


 聞いた話だとストレージは単純に使えるかどうかの証明、冷却系はどのくらいの水量=氷を作れるのかと、それをどの程度正確に指定された的に命中させられるかという内容らしかった。火魔法も似たような内容になるということだ。


 集合の時間が近付いてきてもなかなかやってこないサラリスを本気で心配し始めたころ、ようやくサラリスがやってきた。


「ごめんごめん、寝坊したのー」

「もう、昼過ぎて3時のおやつの時間だよ。寝坊って、もうちょいマシな言い訳してよ」


 適当すぎるサラリスの言い訳を聞き流しつつ、お詫びのおやつを買ってもらうことにする。バツが悪かったのかサラリスも気前よく買ってくれ、それを食べながら試験に向けて事前の打ち合わせをした。


「前にも言っていたように、威力、精度の試験はわたしが1人でやるものだから、プヨンは何もしなくていい」


「うん、わかってる。見てるわ」


「それでね、防御の試験についてなんだけどね、プヨンが私に打ち込んだ魔法を防御することを試験官に見てもらうのよ。だから、小さくてもいいからなるべく多く、なるべく同時に打ち込んでほしいのよ」


 相手の火魔法をどの程度防げるかが点数になり、さらに複数同時だと高く評価されるらしい。


 怪我の回復に使用するミメモム草を応用した液体を染み込ませ、受けた魔力=ダメージに反応する特殊な布地を身に着けてする。その反応具合で色が変わるらしいが、その有無で判定されると教えてくれた。


 逆にいうと色が変わるほどの変色がなければ、ダメージなしとなるようだ。


「だからね、まぁ程度は考えてね。数のこともあるけど、1発あたりが強すぎない程度でね。私が防げないってことはそうそうないんだけどね」


 サラリスは昨日「片手で出せる」と言ったことを何度も引き合いにだして、とにかくほどよい威力で同時に出してくれと強調された。



 そうこうしているうちに、試験場に移動するようにとの連絡がきた。試験を受けるのは4組いる。サラリスはそのうちの4番目だったが、呼ばれた時点で最初の1組はすでに終わっていた。


「よし、準備はいいわよね。いきましょう」


 サラリスの気合を入れた声とともに2人で移動する。ちょうど2組目が威力系の試験をしている。


 サラリスはもともと人同士の魔法の打ち合いなども見慣れているからか、あまり興味がないようだったが、プヨンは他人の魔法を見る機会がなく一度見てみたかった。


 試験場にいるのは年配の教官と思われる男性と20弱くらいの女性でどちらも長いローブのようなものを着ていた。様子を見ていると女性側は何やら複雑な動きをしつつ、大声でキャスティングの詠唱をして集中力を高めていた。


 やがて手のひらの先にあらわれた火球が急速に大きくなる。だいたい1.5m、両手を広げた大きさになったところで空に向かって解き放った。火球はまっすぐに空に向かって飛んで行ったが、徐々に小さくなり50mくらいで薄れて見えなくなった。


「まぁまぁね。まぁ、あんなもんかぁ」


サラリスの年齢からすると上からの言い方過ぎて違和感もあるが、それなりに自信があるのかあまり怖気づいたりはしていない。さすがといえばさすがだ。


 次はサラリスから聞いた話では、防御とのことだ。


 黙って様子を見ていると、教官側と思しき男性が同時に8個の小石大の大きさの火球を同時に女性に向かって打ち込んでいた。女性側も火魔法で対抗した。6個は迎撃したが2個打ち漏らし、あわてて避けていた。


 最後は精度だ。どうやら一定距離ごとに並ぶ的に向かって火球を放ち、命中させていくようだ。的は、かなり小さく見える。

 

 円盤の板が50cmごとに並んでいるらしいが、一直線ではなく適度にばらけている。円盤1つはせいぜい10cmくらいの大きさだった。


 サラリスにどうするのか聞く。的は好きに狙えばいいらしく、遠いほどポイントは高いらしいが、1つでもはずすとそこで終了だそうだ。確実に当てることが試されるとのことだった。女性側は5mくらいの的から1つずつ的を打ち落としていったが、15mを超えたあたりではずしていた。


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