かみの子の作り方3
ふと、何かの鳴き声か泣き声か、そのようなものが聞こえた。人の声は間違いない。道を早足で歩いていた2人の女性は歩みを止め、とっさに聞こえた方向を振り返ったが、何なのかはわからなかった。
2人の外見を見たところ、丈の長い薄緑色のローブのようなものを着ているが、似たような服装をしている。何かしらの共通の制服のようなものなのか。
2人は同時に振り返ったようで、お互い気のせいではないとわかったが、だからといって周りに特に何か気になるものも見えない。
「バザリア、今、何か、人の声のようなものが聞こえた気がしたのですが・・・」
2人のうちの1人が、もう一人に話しかけた。
「メイサ様、たしかに、私にも聞こえました・・・。子供の声のように聞こえたのですが。」
ふくよかな感じのするバザリアと呼ばれた女性は、耳をすましながらあたりを伺っているが、声は1度聞こえたきりだった。
バザリアは、メイサと呼ばれた女性よりは年齢が上のように見えるが、言葉遣いは丁寧であった。
一方のメイサと呼ばれた女性は、ようやく大人になったくらいの年齢に見える。
「少し暗くなってきています。早めに戻られたほうが・・・」
と、バザリアは、控えめに、進みましょうと提案した。
「そうですね・・・」
と、メイサも進む方向をみようとしたところ、今きた方向、少し離れたところがぼやっと光っているように感じられた。
距離にしたら、20mか、もう少しあるか。
「・・あの、あそこのほうが、少し光っているように見えませんか?」
メイサは、ぼやっと光っているところを指さしながらバザリアに尋ねた。
「光っているですか・・・?さぁ、私にはわかりませんが・・・」
バザリアは指さされた方向を見てみたが、特に気になるようなところは見当たらない。
「そ、そうですか。あそこが光っているように見えます。なんでしょう・・・。あ・・・、光がよわくなって・・・、消えてしまった」
メイサがそうつぶやくと、
「はぁ・・・、何か見えていたのですか?」
とバザリアは聞き返した。バザリアには見えなかったようだ。
「すぐそこですし、ちょっと戻ってみましょう」
メイサはそう言うと、あかりの見えた方向に歩きだした。
(あ、こっちに戻ってくる。気づいたか?やった)
カタロは2人が振り返って、こちらのほうに歩いてくるのに気づいた。
よし、もう1度声をだして、
「こっちです。こっちー」
と叫んでみた。
「ふぎゃー」
メイサとバザリアが歩いていくと、少し先から再び声が聞こえた。
「なんでしょうね」
タッタッタ
メイサが小走りで近づくと、箱のようなものが見える。その中に何かいるようだ。
目の前まで近づくと、厚紙のような箱の中に布にくるまれた赤ん坊が見えた。
「こ、これは・・・、赤子・・・ですよね?」
ドタドタ
遅れて走ってきたバザリアも気づき、
「そのようですが、なぜに、このようなところで。他には誰もいないのでしょうか?」
2人は並んで赤ん坊をだまって見下ろし、それぞれ状況を理解しようとしていた。
そして、カタロは、
(こ、これは。なんか言ってるけど、何言ってるかわかんない・・・)
知らない言葉で唐突に話しかけられて、ぎょっとしていた。当たり前であるが。
(と、とりあえず、見た目は普通の人に見える。た、助かるのか?)
「す・・、すいません、助けてほしいです」
カタロはゆっくりと話しかけてみたが、
「ふぎゃぎゃー、ふぎゃふぎゃぎゃ」
メイサとバザリアには、赤ん坊が泣いているだけだった。
「赤ん坊が・・・、泣いているようですね・・・・どうしましょう」
「どうしましょうと言われましても、メイサ様、まわりには誰もいないようですが」
「ほっておくわけにもいきませんよね・・・」
「それは・・・、そうですが、だれがここに連れてきたのでしょうか。親らしきものも見当たりませんが?」
しばし2人は周りを見渡すが、何も変わらない。
「どのくらいここにいるのでしょうか?」
「さぁ?そう長い時間ではないと思いますが・・・。メイサ様、少し、待たれますか?」
「そ、そうですね。特に急いでいるわけでもないですし、お連れの方が戻るまで・・・」
一方、カタロは、
(助けてくれるんではないのか?ぼーっとつったって、どうしたんだ?言葉は通じないっぽいなぁ。喉がかわいた。水が飲みたい)
そんなことを考えていた。