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魔法の使い方教えます  作者: のろろん
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みんなの悩み方 5

 追手が現れないこともあって、いったん休憩をとることになった。不用意に動き続けるほうが、かえって見つかりやすいという意見もあったようだ。


 いつのまにか空中に炎が浮かんでいた。


 銘々が食材を取り出し、火で焼きながら何かを食べている。この炎は熱気は感じるが、炎が苦手なχにも不思議と危険は感じられなかった。


「地面から少し浮かんだところで火が燃えているが、あれは何か意味があるのか?」


 χが聞くと、プヨンはすぐに教えてくれた。


「うん? あぁ、焼け跡がつくと、ここにいたことがわかるだろ。痕跡を残さないためかな」


「デメリットはないのか? 燃料もなく燃やせるものなのか?」


「問題ないよ。水を燃やすから。デメリットはなんだろ。あるかな? ちょっとだけ扱いが難しいこと?」


 プヨンの説明はよくわからない。水を燃やす? この男だけまだ能力がよくわからない。この炎の周りにいると、不思議と潤いが増すような気がした。



 それぞれの食事が終わり、休憩が一段落した頃、不意にプヨンは遠くを見ると急に慌ただしく動き出した。


「そろそろ出発するかな」


 「わかったわ。すぐに発ちましょう」


 それに応じた声はユコナだ。χには少し焦りがあるように聞こえるが、これを合図にみんな大急ぎで片付けを開始する。何かあったのだろうか。


「じゃあプヨン火器当番よろしくね。あと何mってところかわかる?」


「うん。9時から2人、6時からも2人。さっきのメンバーじゃないかな。ここは俺とフィナツーでやるから先に街に戻っておいて」


 わかったと周りが声をかける中、フィナツーとプヨンが残ると聞き、χは慌てて声をかけた。


「ま、待ってくれ。俺も残っていいか? 火器当番って何をするんだ?」


この慌て具合は普通じゃない。もちろんχにはなんとなく察しがついているが、この2人の能力を見るいい機会に思えた。


「いいけど、危ないかもよ? もっとも火器当番は文字通り火器を当番の者が対応するんだけど、プヨンだしすぐ終わるわよ」


 フィナツーがそうχに教えてくれた。さらにプヨンに向かっても尋ねてみたがまったく緊張感がない。今日の晩ご飯は何にするかと聞いているような、一種のくつろぎすら感じてしまう。


 急かす割に余裕、よくわからない。


「あと何m離れてるの?」


「あと40m。こちらには気づいていないのか、ふらふらとさまよう感じだが、こっちに来るのは間違いない」


 プヨンはそう断言する。ずいぶんはっきりと言うからには、かなり自信があるのだろう。


 この見通しの悪い森の中で、どうやって位置を把握しているのだろうか。プヨンが見つめる方向を見てみたが、木々の葉しか見えない。木々の葉が風で揺れる音や、動物の鳴き声はするが、それだけでは何もわからなかった。



「うわっ。なんだ?」「落ちないでよ?」


突然体が持ち上がり、慌ててもがいてみたが、同時にフィナツーの声がかかる。場所を変えるようだ。


 そのまま足音を立てず、滑るように森の中を移動する。


 それを理解すると同時に空に向かって緑の光の筋が走るのが見えた。3秒ほど光って消える。


「うわーなんだ。敵襲か?」「あっちだ。右方向だ」


 聞きなれない声が聞こえると同時に、さらに青い光の筋が続く。今度は4本、色も方向も太さも違う。


「か、囲まれてるぞ!」「なんだこの光は、打ち返せ!」「身を隠せ、狙い撃ちされるぞ」


 複数の怒号が聞こえた。姿はよく見えないが、声の雰囲気からも、慌てている様子が手に取るようにわかる。


 バババン


 とどめとばかりに空中で派手な音がして、いくつか空中で火柱が見えた。木々の中で使わないところを見ると自然に優しいが、これは威嚇なのか。


「い、今のはお前がやったのか?」


プヨンに向かってχが問いただすが、プヨンは笑っているだけで答えない。


「このくらいにしとく?」


「そうだな」


 そう言うとそのまま浮かび上がり、木スレスレに飛んでいく。地上で数人が散り散りに走っていくのが見える。


 そのいく先に鉄球を打ち込んで行く。


 バサバサバサッ


 葉や枝を撃ち抜く音がし、男たちの叫び声が聞こえる。不意をつかれたのか、あっという間に散り散りになっていくのがわかる。


「よし、これで戸締りはしたな」


 プヨンはそれだけ言うと、さらに上空に高度を上げていく。


 崖より高いところに上がったことのないχは、驚きのあまり叫び続け、フィナツーに軟弱者と言われてしまった。

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