狩りの仕方2
4人は町を出て、サラリスを先頭にのんびり周りを見ながら歩いていた。レオンは、一応護衛という名目でつきそってくれてはいるけど、どっちかというと、町の上官が、これを名目に息抜き外出したかったのではとプヨンは考えていた。もっとも、レオンは、けっこうしっかりした金属鎧を身に着けているし、剣も持ってきている。それなりにしっかり護衛する気のようだ。
(けっこう重そうだけど、しんどくないのかな?まぁ、慣れているのかもしれないけど)
ガチャガチャと金属音を立てながら歩いていた。歩きながら、レオンは、いろいろと話をしてくれた。自分が最近何をしているのか、なぜ、この町の配属になったのかなどだ。最近、ウィステリア山への巡礼者が増えたことで、それを狙った盗賊や、旅人同士のトラブルが増えていること、他の町では、貴族などを狙った、子供の誘拐などが立て続けにあったことなどを教えてくれた。
3人+1人は、一応、目的としては手ごろな獲物がいれば魔法を使って狩りをするとはなっているが、そうそう獲物側から近寄ってきてくれるはずもなく、人通りもそれなりにあるので、散歩程度と変わらなかった。天気がいいから、のんびり散策しているのと変わらなかった。ある程度すすむと、遠くのほうに小高い山が見えている。といっても、高い山でもない。そこが今日の目的地だった。ある程度最寄りまで近づいたら道をはずれ、草原を歩いていくことになった。道をはずれようとしたところで、レオンが3人にいってきた。
「そういえば、サラリス様、ご存知かもしれませんが、最近このあたりで、ハーバードがよく見かけられているそうです」
「ご存知じゃないです。あと、今更だけど、サラリス様とかもやめて。プヨンもサラでいいよ」
「たしかに、今更だね。あんまり気にしてなかったけど。ところでハーバードって?」
そうサラリスに言いつつ、レオンにハーバードについて聞いてみた。
「ハーバードは、どれくらいだろう。このくらいですかね?そこそこ大きな鳥なんですけどね、群れで狩りをするんですよ。人を襲うこともまれにありますよ。こっちの人数が1人でない限りは、まず襲われることはないんです。それでも運が悪く襲われた人たちがいたそうで、報告がきていました」
「このぐらい」のところで、両手を大きく広げながら、だいたいの大きさを教えてくれた。そんなことを話しながらも、特にかわったこともなく、道をはずれて15分ほどはのんびりと歩いていけた。遠くに、数十匹のアウトパラの群れが草を食べている。かなり距離が離れているので、それを狙うのは無理そうだった。ふと横を見ると、それを狙っている大型の犬のような肉食動物のイーゴズも見えるので、迂回することにした。
遠回りをしながら、4人は歩いていたが、前のレオンとサラリスは何やら話し込んでいるので、ユコナがプヨンに話しかけてきた。こっちにきたころに買った自然魔法の本があったが、この3ヶ月ほどは、暇があったらその話をしてきていた。なかなかうまくいかないようで、悩んでいるのもあるみたいで、だまって聞いていた。さすがに雨や雪の天候とかは、辺り一帯で大変そうに思うからか、雷にえらく執心してるようで、いかにしたらできるかを一生懸命聞いていた。
今日もいつものように、ふんふん、と聞いていた。自分としても、天気魔法というのはそれなりに興味があって、使う機会はないものの、原理はもともと知っていることもあるので、ユコナの話を聞いていても、なんとなくできそうだなって思っていた。問題があるとしたら、おそらく規模だけの問題だろうと思って聞き流していた。そう遠くないうちに、ユコナも使えるようになるだろうなと考えていた。
ユコナは、かなり熱が入っているようで、前の2人と少しずつ距離が開いていっていたが、自分も、雨を降らすならどうしようかななどと相槌打ちながら頭の中で考えていたら、ふと、
「それで、プヨンは雷魔法が使えるんでしょ?」
と、ふいにユコナが聞いてきた。ただ、話半分に聞いていたのもあって、
「うん、うん」
と、何の気なしに、返事してしまった。
その瞬間、例のユコナの冷気魔法がさく裂した、ような気がした。びくっとして、ユコナの目を見ると、
「プヨン、雷魔法、使えますよね?」
自分の目をじっと見ながら聞いてくる。
「え、い、いや。・・・使えないよ」
と、あわてて、目をそらしながら、訂正した。ふつうに考えたらできないはずだし、問題ないはずだが、今日のユコナはなぜか強気で、
「嘘でしょ、はっきり言って、バレバレです」
「えっ・・・。な、なんで?なんで、そう思うの?」
ちょっとビクッとしながら聞いてみると、
「プヨンは、・・・・、使えるまでは、どうやったら使えるかなとか、あーやったら使えそうとかいろいろ言ってくるのに。・・・・私が、天気の本買ってからいろいろ言っているのに、最近うんうんばっかりですよ」
「うっ・・・・」
そう言われたら、効果を出すにはどの程度の威力がいるかを頭の中で考えていたけど、どうやったら使えるかは考える必要がなかった。
「使えるんでしょ・・・?」
(こ、怖い。目が・・・)
「・・は、はい・・・」
「やっぱり・・・。どういうことですか?私がこれだけ悩んでもできないのに、なんでプヨンが」
「え、いや、毎日、ユコナが講義してくれるんで・・・。その、なんかわかりやすくて」
しかし、火に油なのは、間違いなさそうで、
「納得できません。私ができないのに、それを聞いて理解できるとか」
「そ、そう言われてましても」
天気は春先のいい天気なのに、ここだけ氷河期のようだ。
「見せてください。プヨンのを・・・・」
「い、いや、そう言われても。ここで?」
「じゃぁ、何ができるようになったのですか?」
「は、はい。・・・小さな、雷が少し・・・・」
プヨンは、事実を素直に言うことにした。ちょっと隠し通せるとは思えなかった。
「見せてほしいです」
プヨンは、立ち止まった。そして、胸の前で、右手と左手の人差し指を1本ずつ出して、
「ビオグラフ」
パチ、パチン。
人差し指の間で、放電させてみた。
「あっ」
ユコナは、そう言って固まった。
「も、もう一度」
「ビオグラフ」
パチ、パチン。
もう一度、言われたようにやってみた。
「わ、わかりました。・・・それで限界なんですか?雨とかもできるんですか?」
「い、いや。・・・・これが限界だよ。今のところ、他のはできない」
厳密にはほんとのことではないが、現実に目の当たりにして、そこを突っ込んでくる余裕は無いように見えた。ユコナは、何か自分の考えに入ってしまったようだ。
どうやってとか、本では、こう書いてあったがとか、ぶつぶつとつぶやいている。
サラリスとレオンは、まだいろいろ話しながら歩いているようだ。ときおり笑い声とかも聞こえてくる。あっちはうまくやっているようだが、こっちは2人並んで、黙々と歩くことになった。
 




