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魔法の使い方教えます  作者: のろろん
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夜戦の仕方 5

 ノビターンとプヨンとは対峙していた。お互いの位置は漠然と把握している。位置を偽装している上にプヨンの視界は完全にぼけぼけだ。


 自分もそうだが相手も位置をぼかしているのがわかる。自分のような直接目に作用させるものとは違うようだ。


 急に周りが霧に包まれた。その割には空気が生暖かい。何やらおかしな天候だが、気にしないで目の前に集中する。


 もともと視覚に頼っているノビターンは、暗闇では相手の位置がよくわからない。距離にして20mほどなのはわかるが、相手が動くことも考えると狙いを定めた攻撃は難しかった。


 雨がほぼやみ、落雷も距離があいているのがわかる。天候は問題ない。


 ゆっくりと距離を詰め、追い込みをかける。とりあえずのフェロモン作戦を発動し、『アイ』で相手の目に関する能力を封じ、『コイ』で手前に引き寄せた。


 次は、虹彩と瞳孔も制御してやる。どの程度聞いているかはわからないが、相手はほとんど周りが見えていないだろう。


 『暗闇に怯えるがいい』そう思うノビターンだがもちろん怯えさせるだけのつもりはない。次の手がある。


 そう思いながらストレージから薄い板を取り出した。硬い岩を研磨した短刀岩だ。数は100枚以上ある、少々の打ち損じなど問題にならない。


「バリスティック」


 そう思って投げつけてみたが、軒並み交わされていく。当たらない。やはりこの距離と暗さでは無理か。だからといってこれ以上近づくのも危険に思われる。


 ならばとっておき、最近覚えたての魔法があった。教会の古書を読んでいた時に偶然見つけたものだ。


「サンティ」


 周りの空気の酸素量を減らし、さらに血中酸素濃度を低下させる。


 少し時間がかかるのと、目に見える効果がわからないところが課題だが、動物で試した限りではそう時間もかからず痙攣して身動きがとれなくなっていた。


 おまけに体表面に作用させるから、ざっくりと相手が見えていれば十分な効果が見込める。


 このままいけば数分もしないうちに相手は息苦しくて、まともに動けなくなる。時間短縮のため、さらに剣を投げて相手に激しい動作をさせ続けた。




 プヨンはにらみ合ったまま次の手を考えていた。ノミのこともあるから生け捕りにしようと考える。


 まず近づかないといけないな思っていたところ、『こいこい』という声が聞こえた。集音機能ではあるが、魔法効果を高めるためか声に出しているようにも見える。


 おかげで相手の位置が特定できたが、声とともに勢いよく引き寄せられた。渡りに船ともいえるが大幅に距離を詰める。


 距離を詰めたからか、あきらかにプヨンを目掛け、短剣が一直線に飛んできた。こちらも位置を把握されているようだ。


 バシッ


 また1つ受け止めたが、これも岩石製だ。もしかすると磁気反応などにも対応しているのか。そうするとかなり考えて作られた武器に見える。


 他にも何か考えがあってのことに思える。もしかしたら倒す以外の目的があるのかもと、さらに気を引き締めた。



 突然、雰囲気が変わった。心臓が高鳴る。プヨンの常時監視魔法の1つが異常値を示している。


 『パルスヲキシメタ』は光学魔法の応用だ。赤い光と赤外線の2つを使用して血中酸素濃度を測る。


 血液は酸素が十分で有れば赤外光は吸収し、可視の赤い光だけが通過するが、酸素濃度が低下すると両方吸収されてします。


「さっきまでほぼ100%だったのに、酸素濃度が94、あ、今93になった」


「どういうこと?」


 プヨンの呟きを聞いてフィナツーがひょこっと顔を出す。本気で心配してくれているのかもしれないが、ただのトラブル好きの可能性も否定できない。


「うん。空気魔法の応用だ。生き物の体内酸素濃度をいじってきているかもしれない」


「どうやって?」


「空気の酸素を減らすのが定番だがこれは防ぎやすい。おそらく体に直接働きかけているんじゃないか。例えば『塞栓』とか『血栓』とか。俺も出血時の血止めとかで使うことがあるけど、相手の体に直接働きかけるのはかなり大変なはずなんだけど」


「ふーん、なるほど! それはすごい高等技術ね!」


 フィナツーの目をじっと見る。


 また何か武器が飛んできたが、当たったところで硬質化した皮膚には大したダメージはない。割り切って避けずに見つめ続けた。


「ありがとう。でもわかってないよな?」


「ピンポーン正解です。わかってないことをわかってる。よってセーフ!」


「あ。待てって!」


 パタン、ガチャ


「あっ、鍵かけやがった」


 何がセーフなのか。フィナツーが中身をわかってないのはわかっていたが、適当な相槌だけで逃げたようだ。散発ながら敵弾が飛んでくる中、しつこく問い詰める余裕もない。


 素直で愛らしかったフィナのことを思い出しながら、目の前の課題に向き合った。



 塞栓は血管づまりを引き起こす。出血時の止血魔法としては効果があるが、通常時にやられると血が止まることになる。もしかしたら肺もやられているのかもしれない。急いで対応する。


 まずは肺のリフレッシュだ。先日も喉を火傷した気道熱傷の治療をしたばかりだ。肺胞組織の新陳代謝を促進し、中身を作り替えた。


 だが血栓だとしたら位置がわからない。相手の攻撃位置が特定できないのに全部作り直していたら流石に割に合わない。と言ってあまりのんびりもしていられない。


「超音波破壊だ」


 結石破砕のように破壊を目指したが、場所がよくわからないのか狙いがつけられない。もしかすると当たってはいるが、凝固物の硬さが柔すぎて破壊できないのかもしれない。


 あきらかに後手に回っている。長くはないが確実に効果が出て、酸素濃度は低下していく。




 そういえば以前試した方法がある。これなら位置特定できるはずだ。原理は覚えているが、名前は何だったか。


「トモ……トモ……」


 詰まっている位置さえわかれば血栓を溶解させることはできる。思い出した。


 「トモグラフィースキャン」


 これも光学魔法の応用だ。X線を安定して取り出すのは骨を折ったが、短時間ならなんとかなる。


 CTスキャン方式で断面観察をする。プヨンは全身スキャンで位置を探った。見つけた後は破砕していくだけだ。


 数はそう多くなかった。せいぜい数個だ。見つけたものは砕いたはずだ。


 だが恐ろしい方法だ。普通なら気がつかない。


 それに体内作用には、距離による効果減衰を超えて相手の自己防御を突破する必要もある。


 かなりのエネルギーが必要となるはずだ。正確な計算はできないが、ユコナにも試したし、自分も試されたが、手を触れてゼロ距離魔法でない限り、大した効果は出せなかった。


 それにこんなシークレット効果の魔法をためらいなくやれるとしたら、能力もさることながらかなりの悪者だ。あっさりと除去しましたでは優しいプヨンになってしまう。


 ここは相手をしっかり捕まえて色々と聞いてみたいことがある。そのためには、逃がさないようにもっと近寄ってもらう必要があった。


「うぅぅくー、くる、しぃ。息が」


 なんだかんだで飛び回ってプヨンは今高度30mくらいの位置にいる。飛来物を避けつつ、上空に飛び上がっていたためだ。突然首をかきむしるような仕草をし、わざわざ大きめの声で苦しさをアピールする。


 とてもわざとらしい気がする。ちょっと顔がにやけてしまったが、霧中でそこまで細部は見えないだろう。


 そしてもがくように手足を動かしながらゆっくりと降下する。落下しての激突は痛いので、なんとか耐えている感を出しつつ無難に落ちるためだ。


 地面におちたところでわざとらしくうずくまる。


 ふとすぐ横にノミがいる。薄めを開けており、ギョッとした。


 起きているのか? 半目なだけなのか?


 何か反応しろよと思うが、目の前の相手に集中する。


「こい。落ちてこい」


 小声で呟く。相手もゆっくりとだが様子を窺いつつついてきている。そのまま苦しそうにしつつ仰向けになり、苦しくて動けないふりをする。もう一芝居だ。


「IBM」


 アイ・ビームは相手の位置を特定するためのアクティブ魔法だ。


 目の前から赤いレーザー光を照射して相手にあてると位置がわかる。


 二酸化炭素から取り出したレーザー光は、赤外線領域のためそのままでは見えない。もちろん相手が視える目を持っていたらどうしようもないが、こちらの位置を特定されにくい。


「あれか」


 物に当たったところは透過せずに発光するので位置がわかる。確認できた。


 最後のとどめに使うものだが、プヨンはもともと見えるように誘っているので、今回は位置がばれても構わない。


 プヨンは相手を捕捉するとすぐに目を閉じた。目の前で発動させるため、視えるプヨンが長時間見ると、まぶしさで目をやられるからだ。

 

「ダブルカープ」


 地上移動時や飛行時の牽引や荷物の引っ張りに使用する一般魔法だ。


「こいこい、落ちろ」


 小さな声だがしっかりと呟き、追っ手を空中から引きずり落とす。


「ふふふ、もう離さないつもりー」


「うっ! なんで?」


 プヨンが力を込めると、驚きの声が聞こえた。当然だ。こちらから仕掛けているのだから。


 しかしそれ以降、叫び声は途絶えた。ちょうどプヨンが上空数mあたりに作った低酸素地帯にあたりだ。


 使用したのは『NOX』を使った大気汚染魔法だが、目的は大気汚染ではない。頑張って酸素を消費させ、半分程度まで酸素濃度を減らした空域を用意しておいた。拡散しないよう維持するのにちょっと苦労したが、そんなところで悲鳴をあげたならまともに影響を受ける。


 酸欠空気だ。大きく息を吸い込んだら、残っていた体内の酸素を根こそぎ奪われ意識が飛ぶ。


 きたきた。


 必死に耐えているのがわかる。


 さきほどプヨンは演じただけだが、かなり朦朧としているようだ。下降と上昇を繰り返しながら落ちてきた。


「さぁ、こっちに飛び込んでおいで」


 などとふざけながら待ち構えていると、あと3mくらいまできたところで、


「あ! あぶねっ! 意識飛んだな」


 急に急降下を始めた。


 完全に落ちたようだ。一瞬ためらったため、魔法で受け止めるタイミングが遅れた


 真下で受け止めるつもりだったが、ちょっとずれている。慌てて飛びつき、正面から受け止める形になった。


 


 受け止めて顔を見る。上空で髪の毛はぼさぼさになっているが、顔は見覚えがある。ノミといつもセットの出現パターンで、名前はたしかノビターンだったはずだ。そばに存在であればノミの身内だと予測していたのは間違いではなかった。


 なんとなくユコナに近い何かを感じる。


 さっきまでこちらに仕掛けてきたのがこいつだと思うと、


「ポイッ」


 もともと抱きかかえておくつもりもなく、床に転がしておいた。


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