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魔法の使い方教えます  作者: のろろん
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回復魔法の使い方4

 2人が行ってしまったので、プヨンは1人レスルのロビーに残っていた。


 ぼんやりと周りを眺めながら、どのくらい時間がかかるかなぁと考える。ざっくりとした説明を受けるはずだ。30分くらいはかかりそうな気がする。ロビーを眺めていると絶えず変化があって面白い。昼前だからか人影はまばらだが、2組ほどテーブルを囲って話し込んでいるグループがいる。何か打ち合わせでもしているが、身振り手振りが面白くて飽きがこない。


 反対のカウンターには受付、その横の壁には大きめのウッドボードがかかり、いくつか張り紙があった。いろいろな案内や仕事の募集が貼ってある。さらに奥は雑貨屋だ。旅に必要な装備品や消耗品、携帯用の食料品などが売られている店があった。


「ふーん、これは、ランプかぁ。明かりくらい自分でなんとかなりそうなものだが、安いな。100グランだって。こっちの鉄の剣かな。これは高いなぁ。1500グランだ」


 などとぶつぶつ言いながらぶらぶらと見て回って時間を過ごした。


「保存食、便利ですよー。冷たくてもおいしいっすー」


 あっちでは保存食の試食品もやっている。おやつがわりにたむろしている子供たちもいる。もちろん、試食も控えめながらプヨンも混ざる。


「これ。なんかのシチュー? 瓶詰だって」

「ちょっと割れやすいが、蝋で密閉していある。これがあると1週間、腐らせないで持ち運べるぞ」


 そんな声も聞こえてくる。前にストレージって荷物を運ぶ魔法を見たことがあった。あれっきりだができない人も多いのだろうか。このあたりの需要がどうなのかは気になった。


 売り物を一通り見ると、流れとして今度は掲示板だ。


 当たり前だが掲示板にはいろんな案内が掲示され、その中には求人票も多数貼ってある。氷輸送のような大急ぎの単発から鉱石搬送のようないつでも万年人手不足まで、数日~10日程度の短期の仕事が多い。ここは街道沿いだから、町の中、隣町などの移動の人足や保管品の警護はひっきりなしにある。健康であればだれでもできる雑用運動だ。


 害獣退治や警備隊が街中の警備強化のため応援人足を募ることはもあるが件数は少ない。あとはちょっとしたイベントの設営補助や職人徒弟募集のような、経験や長期契約を伴うもの、なかには治療医や人探し、運動イベント、スポーツ大会の代理出場なんてものもあった。



 そうこうしているうちに2人が戻ってきた。


 とりあえず基本の説明は難しくもないだろうし、決まった説明を聞くだけのはずだ。滞りなく終わったと信じたい。2人の顔からもトラブルの気配はない。戻ってきたばかりだが、サラリスは急いでいるようだ。


「ちょっと遅くなっちゃった。私、今日、このあと用事があってそろそろ戻らないといけないんだよね。ユコナはどうする?」

「私は、特に用事があるわけじゃないけど・・・。どうしましょう。せっかくだから、もうちょっとレスルとかを見ていこうかなと思ってるけど」


 サラリスに対しそう返すユコナ。プヨンがいろいろ売店を見ていたことをサラリス達は気づいていたのだろうか。


「じゃぁ、ちょっと悪いけど、私は先に戻るね。ユコナもはやめに戻っておいでよ」


 ちらっとこちらに目配せしてからそう言い残し、サラリスは先にレスルを出て行った。


 残るプヨンとユコナ、プヨンはすでに一通りレスル内の売店などを見てしまっていたが、これはユコナの探検アピールだ。今得た知識も再確認しつつ、付き合ってやることになった。


 

 しばらくは、ユコナが売店や掲示板を見て回っているのを、ちょっと後ろから見ながらついて回る。時折口を出すが、大した盛り上がりもない。


 携帯用の食器類、とりわけ寝具などに特に興味をもったようだが、特に目当ての買い物があるわけでもなく、とりとめのない会話をする程度が続く。そうして15分ほど経ったころ、急に入口のほうが騒がしくなった。


「おい、こっちだ!」「はやく、運べ」「入口をあけてくれ」


 そんな声が聞こえてきた。レスル内にいる人たちも、何があったのかと入口のほうを見てそれとなく人だかりができていく。


 隙間から見ると30前後くらいの革の鎧を着た男性が見えた。がっしりしたもう少し年上の男性に背負われて運ばれてきたところだ。その後ろにさらに2人、同い年か少し若いくらいの女性もついてきている。


「奥の部屋を使っていいらしい。そっとだぞ」

「わかった。すぐに治療できる人を呼んでこい」


 続けて聞こえる声からも、切羽詰まっているのがわかる。


 運んできた仲間と思われるメンバーは、なぜか運び終えると、またすぐレスルから出て行った。周囲の人たちは気にしないふりをしつつ、遠巻きに怪我の様子を伺っている。下手に巻き込まれると面倒かもしれないし、特に手伝えることがあるわけでもない。


 奥に行きやすいように通路を確保し、何かできるように一部テーブルなどをどかして場所をあけてやったあとは遠巻きに見ているだけだった。


 遠目に見ていても怪我をした人がいることはわかる。奥の簡易の治療室に運ばれていったようだ。仕事の種類によっては負傷することも多い。間抜けだと刃物を鞘に入れる時に指を落としたりもする。あいつどんなヘマしただろうといった詮索をしている。みんな心配そうな顔をしてはいるが、見慣れている感じだった。


 ユコナも一時的に意識を向けてはいたが、下手に手を出そうとはしないと決めたようだ。徐々に距離をとりつつある。まわりが落ち着きを取り戻しつつあり、気にはしつつもまた売り物を見始めようとしている。


 その時、奥からレスルの支配人のホイザーと先ほどの仲間の1人と思われる女性が一緒にでてきた。そのままレスルの出口のほうに走っていく。出口で少し立ち話をしたあと、女性はどこかに走っていってしまった。


 それを見送ったホイザーが、急ぎまた中に入ってきた。


 奥に戻っていこうとしたようだが、その様子をぼーっと見ていたプヨンと目があった。はっとしたように目を見開き、その瞬間ホイザーはプヨンに向かって走り寄ってきた。


「くっくっく。今日はついているようだな。おい、プヨン。ちょっときてくれ」


 ホイザーはプヨンの腕を掴んで、奥に引っ張っていこうとする。


「へ? な、なに? ちょっと待って」


 強く抵抗するわけではないが、ズルズルと連れていかれる。


 ユコナも何事が起ったのかと思わずびくっとしたが、プヨンが引きずられていくのを見て、我にかえったようだ。買い物をいったんおいて、慌ててついてきてくれた。


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