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魔法の使い方教えます  作者: のろろん
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仲間との攻防の仕方5



 空振りが続きレオンは焦りが出てきていた。


 今日は武器を強化しているにも関わらず避けられ続けている。


 剣にだけ集中する普段の方がまだ当てられる気がしてくる。


「今回はいつも以上に当たらないぞ。どうなっているんだ。って、あつつっ」


 当てることを気にし過ぎたが、ふと剣が熱を帯びていることに気づいた。温かいを通り越してなぜか剣が熱くなっている。


「ま、まさか、僕の剣の速度が速すぎて発熱したか?」


 さすがに速度が速くて熱くなるはずはないが、たしかに持ち手が温かい。


「あちっ」


 お風呂の湯程度だったものが急に熱くなった。慌てて手元に水をかけ火傷を抑えた。


 レオンも痛みの軽減などは戦闘中でもできる。気を強く持って対抗するのだ。


 応急手当が終わり動き回ることには支障はなかったが、剣の温度は一向に下がらなかった。


 何かされてはいるが抑え込めているのか? 不安ではあったが剣を振り続けるしかなかった。


 


 プヨンはレオンの剣の熱を測定していた。70℃くらいだろうか。


『ザ・エル』


 プヨンのいつもの比熱検知だ。レオンの剣の長さが見た目だけ入れ替わったことに気づきいつも通りの赤外線検知で対応する。熱くなった剣が特殊な方法で浮かびあがってくる。


 見分ける方法は加熱するときの温まり方の違いを見る方法だ。


 魔法によるレーザー光の材料は空中にたくさんある。持ち手の位置はわかっているのだから、そこを狙って炭酸ガスレーザーを当てて剣を温め、温度差を利用して見える化を行う。


 他にも火球を応用する方法もある。


 低温だが巨大化した火球で空間全体を温めるという方法であれば、空気に比べて温まりにくい体や金属部分は目立つ。気温より高いまたは低い部分を作り適度に温度を変化させてもよかった。


 レオンが新方法で一気に勝負をかけてきたことはわかったが、攻めるレオンに対しプヨンは回避に徹している。レオンの打つ手をことごとく受け流す。


 これでいつも通りプヨンとレオンの2人はいい勝負をしているように見えるはずだ。



 5分ほどたった。ブンッ、ブンッとレオンの空振りの音が響く。


 レオンの剣が空振りする音と土を蹴る音が響く。もちろんプヨンは空中移動のため足音はしない。激しく動いているわりには呼吸は落ち着いていた。


「なんでだ。なぜ、当たらないんだ」


 最初はたまたまかなと思った。大げさに避けているから当たらなかったのかなと。だが何度やっても当たらない。


 実際の剣の長さは何度も何度も練習した。


 見える時と見えない時で、どこまでが実体の存在範囲かを理解するのに時間がかかった。だが自分だけが把握しているはずの剣の先端を、プヨンはかすめるように避けていく。


 たまたまギリギリなのかそれとも見切られているのか。


「あっと。あ、汗が(目に入った)」


 そう思ったが汗はやけに冷たかった。


 ユコナ御用達のはずの体温低下も仕掛けられているようだ。


 動きを鈍くすることを狙ったものだ。


 プヨンを見る。何食わぬ顔をしているが、さらに何か仕掛けているはずだ。


 この冷や汗がさらにレオンの焦りを募らせた。


「ぐっ。プヨンさん……な……息は?」


 レオンの息があがってきている。もうそろそろ限界で話すこともままならないが、プヨンは足音一つ立てずに飛び回っている。疲労が見えてきたと思うと、突然なくなるようにすら見え翻弄される。


 攻撃をなぜ避けられているのか、さっぱりわからないままレオンは剣を振り続ける。


 時折砂埃の先に光の筋が見えたり、ほのかに剣が熱い気がしたが、それが何かを考える余裕もなかった。



「ふぅー、あっ」


 ババババッ。


 レオンが一息つこうと動きを緩めたところに連続で火球が4発。休ませてももらえない。プヨンの残り体力がわからなくなる。まるでこちらの限界を読まれているようで、残り少ない体力をさらに削られていく。



「そろそろ本気でいきますよ」


 気力を振り絞ってレオンは叫んだ。


 動きが速くなり、その分疲労度の上がり方も早くなる。全力で動くときは呼吸を止めて力を込めるため、この動きを維持できるのは30秒が限界だ。



 レオンの剣の動きは専門の剣士だけあって、ユコナ達と違い速くて正確なはずだ。


 チュン、チュン


 レオンの剣がかすめる音が響く。なんとか当たり出した。


あたることでやる気が増したのか、レオンの体力が幾分回復したようだ。ここぞとばかりに動きがさらによくなる。


「なぜだ。避けたはずなのに」「距離感が掴めないぞ。うわー」


 プヨンの慌てふためく声が聞こえる。


 そばで見ているウラビン達にも聞こえているだろう。きっとレオン自身の評価があがるはずだ。


 もう一歩ギリギリを見極めた。


 肌が露出している部分を切りつけた1㎝ほどの深さまで切れている。プヨンの皮膚を切り裂く感触がレオンに伝わり、少しばかり血飛沫もあがった。


 ちょっと浅いか? 


 踏み込みが少し浅かったかと思うが、プヨンが冷静に止血していく前に追撃をかける。動きながらの止血は完璧ではないらしく治りが遅い。


 ここで最後の力を振り絞り、プヨンを追い込む。プヨンは逃げ場がないように見える。


 作戦通りでレオンの不安はなくなった。いつものパターンとは違う。今回は完璧だ。


 

 レオンはタイミングを見て、ストレージからそっとダーツ状の投げ矢を取り出した。ここでとっておきだ。これも剣と同様にカモフラージュする。真っ青に塗ってある上にさらに前に青い偽装壁を作り、頭上に放り投げそのまま上空で待機させた。


もちろんレオンは位置がわかるが、空の青さに溶け込んで見えなくなる。


準備ができたところで、レオンは同じパターンの攻撃を繰り出し、同じように避けられる。だが先ほどまでと違い、タイミングを取るための攻撃だ。焦らなければ必ずチャンスはくる、そう思いながらレオンは攻撃を繰り返した。


 その瞬間、プヨンは不意にバランスを崩した。


 足をすべらしたのか、つまづいたのか。


何故かはわからないが、膝がくずれ、無理に支えようとしたためか姿勢がおかしい。もしかしたらレオンの願いが届いて何かしらの天の力でも加わったのかもしれない。


「今だ。勝った!」


 レオンが心の中で叫ぶ。ここが勝負どころだ。同時に空中に待機させていた剣2本をプヨンに目掛けて投げつける。カモフラージュは未熟なのか、プヨンの1mほど手前で解除されてしまった。


 だがこの距離ならもうプヨンの目の前だ。1本は首筋、1本は太ももを狙っている。そしてそれに合わせてレオンも渾身の一撃を加えるべく突進した。


完璧なタイミングだ。そう思ったが、プヨンは焦った表情とは裏腹に剣をさばこうとする。

さもその方向で飛んでくるのがわかっていたかのようだ。


首筋の剣は叩き落され、もう一本は手で掴まれてしまった。予想外だが、これでプヨンの両手はふさがった。


一瞬ドキッとして動きが止まりそうになったが、なんとか気力で硬直を解き、レオンは一気にケリをつけるべく、このままの勢いで突っ込んでいく。


「ま、待ってくれレオン。俺はまだやれるはずだ!」


ギクッ


 一瞬レオンの動きが止まる。なぜか声が元気そうに聞こえ、口調も落ち着いている。疲れを感じない声に危険を感じた。


 思わずとどまろうとして違う方向を見ると、その先にいたリ・ウムと目があった。ここで引いてはいけない。


 だが先ほどから何度か切りつけた傷はすべて治りふさがっていた。


 思わず引こうと思ったタイミングでなぜかレオンは引き寄せられて加速する。


 体重をかけた突きの態勢に入っていたこともあり、ここで戻すことは難しく突き進むしかない。なぜかレオンの突進にあわせプヨンも飛び込んでくる。

 

 レオンが全力で突き出した長剣の先に吸い込まれるようにプヨンの肩当がぶつかった。


 ドムッ、ザクッ


「グフッ」


 さっきまでは甲高い音と違い、初めて肉を刺し貫く鈍い音がした。もちろんプヨンには刺された感触が伝わる。同時に呻きを出してやられたアピールをする。


「おぉぉ」「勝負あったな」


 リ・ウムとウラビンの合図で戦闘は終了した。




 うまく幕引きできたようだ。すでに治してしまったが傷跡を隠しつつ、プヨンはふらふらと立ち上がった。


 レオンの剣はそれほど深く刺さってはいない。レオンが剣をおそるおそる引き抜くのにあわせて治療をはじめ、プヨンは血を止めつつ立ち上がる。


 問題ないと伝えると、リ・ウム達は不思議そうな顔をしつつもレオンを呼びつけた。腕を確認したあとは次の作戦を練ろうということらしい。レオンは何か言いたそうだったが、一礼してすぐに立ち去っていった。



 それなりの重症であっても、誰も駆け寄ってきてくれない。治せる範囲の傷は無傷と同じ、軟棘とはそんなものだ。


「プヨンだいじょーぶー」「あぁ、うん」


 一応フィナツーが心配の声をかけてくれるが形式的なものでいつものことだ。


 ユコナもレオンにはついていかず様子を見てくれるらしい。


「きゃーー、大丈夫なの? いたいのとんでけー。ほら治療するわよ」


 わざとらしい。


 一瞬嬉しそうにも思えたが、すでに完治しているのをチラ見で確認するだけでわかってるとばかりに何もしてくれなかった。


 つまらないように見える。よく見ると氷の針が突き立てられていた。


 さらに追加攻撃を発動し、わざとらしく「よっわー」という聞こえるように触れ回る。


 まぁ誉め言葉ではあるからそれでいいが、もちろん手当どころか傷の確認すらしてくれなかった。


 もっともプヨンがレオンに刺された位置もこういった軟棘時はここを切られて終わりにする定位置だ。


 鎧の周りもインナーもすっかり血色に染まっているが、治療も最も慣れている。レオンが剣を抜き終わる時には表面的な治療は完成している。心配されないのも仕方はないが。


 プヨンはレオンにはついていかず、少し振り返ることにして立ち去ることにした。ユコナに一言告げる。


「じゃ、じゃぁな」


「サラよりできるようになったわね」


「フンッ」


 サラよりというところが気になるが、どうやらユコナも暇らしい。それならそうと言えばいいのだろうが、それとも何をしたのかまたいろいろと説明させられる気もする。


 ユコナの会話からは周りでどう見えていたのか、どこが隙でどこがよかったのかがよくわかるため、歩きながら次に向けた改善点をまとめていく。


 まぁ結果的にレオンは信頼を得られ、自分の実力もレオンといい勝負ができることを知らしめて、プヨンは満足していた。

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