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魔法の使い方教えます  作者: のろろん
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確保の仕方

「プヨン、あれって、どうなの?」

「さぁなぁ。距離のせいかかなり効果が減衰したな。手加減し過ぎたかな?」


 飛行中の不審物体を狙ったが、プヨンの威力はいつもに比べてかなり小さく見える。威力が落ちる原因はよくわからない。


「このままじゃ逃げられちゃうんじゃない? 今日のプヨンなんとなくいまいちな気がする」

「確かに。何故かわからないけど効きが悪いな。じゃぁ、もうちょっとちゃんとするよ」


 そう言うと、プヨンは熱気系をやめて光子系魔法に移行する。本気でやると岩とかも粉々にしてしまうから、ゆっくりお試しで威力を確認しながらだ。


「じゃぁ、やってみよう。『フエルマーノ』」


 光子魔法には不思議なことがある。


 光は狙った対象がわかっているのか、もっとも移動時間が短くなる経路を取る不思議な特性がある。それを利用すると対象をロックできる魔法になる。


「もっとも火球と違って一瞬で到達するから、ロックも何もないけどな」


 そう呟きつつ対象をしっかりと認識する。光は自動的に最適ルートを選定してくれる性質があるため、頭で目標をしっかり認識するとロック状態になる。プヨンもこの原理を思い出し、何度か試して確認した。


 それ以降はもっぱら物理系魔法の放射にもガイド光を併用し、距離や移動方向を計測しながら発動するようになっていた。1番大きいのは水中から空中を狙う時など、異なる物質間をまたぐ場合だ。


 火球や雹弾の追随は自分で都度修正を加える必要があるが、光では水中から空中など複数の材質を通って屈折しても、手を加える必要がない利点があった。


「ガルパンミラー」


 プヨンは二酸化炭素を使用して炭酸レーザーを目標に向けて照射した。この光は目に見えない可視光外だ。



 その光は放つと同時、マリーに届いてた。長焦点方式のため、少しくらい移動しても威力は落ちない。


「うぉぉー、いたたた。なんじゃ、あつ、熱い。服が燃える」


 マリーは肩先に炭酸レーザーを受けていた。受けたのは一瞬だが、膨大な熱量が一点で発生し、服が燃え、瞬間的に気化した肌の水分で肩口がはじけ飛ぶ。もちろん可視光外で目に見えない。


「ち、治療じゃ。治療!」


 肩口付近が熱で溶けてただれている。火傷は切り傷に比べ、くっつけるだけでは治せない。一度組織を剥がしてからの治療となるため、再生時間がかかる重症だ。


 マリーはメサルに回復を教えていたこともあり、治療魔法には自信があった。最速治療の『アウトペイシャント』をかけ続けるが、治るのを見計らったかのように次の攻撃がくる。


「は、発動の間隔が短すぎる。す、姿を隠しておるのか? でてこい」


 自身の周囲、全方位に氷粒をばらまいてみたが、どこにも当たった形跡がない。そばには何もいないようだ。


 結局マリーの治療と相手の攻撃による受傷が交互に繰り返され、相殺にはなっていた。もっとも一方的にマリーだけが痛みを感じるためかなり理不尽な相殺ではあったが。


「こ、このぉ。完全にこっちのペースを把握しておるのか」


 自身の意思で痛みを抑える。なんとか耐えてはいるが、左肩、右ひざ、左ひざなど手足に何度もひどい火傷を負っていた。


「な、なんでじゃー、どっから攻撃しているんじゃ。なぜ本体のわたしの防御より、遠距離の相手の攻撃が上回るんじゃー」


 マリーは叫ぶがどこからも返事がない。もちろん周囲に誰もいないため、マリーの声が届いていないだけなのだが。


 動揺しながらではあったが、マリーは最後の気力で360度全方位を水面で覆った。


「はぁはぁ。こ、これでどうじゃ。学校の女神像の光子砲とて水では角度がかわる。どこから打ってきてもこれでしのげるはず」


 だがプヨンの放つレーザーは『フエルマーノ』効果により自動で最適経路を選ぶ。マリーの服や身体は断続的に熱線を受け続けた。


 マリーに激痛が走るたびに治療し続けている。プヨンのエネルギーの供給速度も格段にあがっているようで、パルスのような断続的な放射であれば、かなりの時間維持できた。


「め、女神像の光線とは違うぞ。全然見えん。全方位おみずの壁は何をしている。なぜ水壁で防げんのじゃー」



 そこで一度レーザーの熱がやんだ。プヨンが手持ちを打ち尽くしたため、いったん冷却モードに入った。再励起のため、再びエネルギーをかき集める。



「お。さすがにばてよったか。今じゃ」


 マリーは高度を一気に30m下げ、湖面ギリギリの低空飛行に入る。これで地上からは狙いにくいはずだ。


「今のうちに一気に陸までいくぞって、うっぎゃー、せ、せなか。背中がー」


 が、一呼吸おいてすぐ次の攻撃がきた。10秒も開いていない。もちろん狙いは正確なままだ。


「むぃぃ、治療が間に合わん。服が燃える。す、水面。そうじゃ水面で消すしかない」




 対象が水面ギリギリに高度をさげたため、プヨンは水を光ファイバーがわりにする水流ファイバーでレーザー光を誘導し、上空から背面に向けて攻撃する。その分威力は落ちてしまうが、ぐるっと空中を迂回させた光でマリーを攻撃し続けた。

 

「うーむ、水を使うと思った以上に威力が落ちるな。落としきれないや」

「最初から反対側から打てばいいのに。あるいは反射させるとか」

「うーん、氷とかじゃ反射しないしなぁ。かといって火球と違って、遠くで打つのはまだ難しいし」


 普段練習をそばで見ているフィナツーに、わざわざ威力を削いで打たなくてもいいのにとぷぷっと笑われる。その間もマリーは受傷と治療を繰り返していたが、


 ジョボン


とうとう湖水に落ちてしまった。岸まであと100mほどだ。



「プヨン、着水したわよ? どうする?」

「うん。まぁ、このくらいにしとこうか。対象の回収と治療だ。持ち上げてこっちに引き寄せよう」

 


 「う、うぉ。なんじゃ引き上げられる。あ、キズが治っていく? どうなってるんじゃー」


 燃えては水に沈められ、火が消えたら治療され、また空中に引っ張りあげられる。さんざん魔法発動を食らい続けたマリーはもう気力がつきそうになっていた。


「むにゅー、な、なんとか岸に……つきたい」


 服は再生しないため、あちこちが燃えたのでもうボロボロだ。火傷したあとはきれいに治療されているが、大半は自分の意志で治していない。もう何が起こっているのかわからなかった。


 ドシャ、ズリズリズリ


 「じ、じめん。じめん……だ……」


マリーはプヨンに引っ張られ、なんとか岸までたどり着いた。そこで意識を失った。



プヨンは駆け寄ってくる人の気配に気づいた。


「な、何事ですか? ふー。 あの光は?」

「あ、二年生殿。 どうも何か未確認のものが近づいてきたようです」

「まことですか? こんなところに侵入者? 湖上に火の手が見えたので、慌てて様子を見に来ましたが……対象は視認しましたか? 人?」

「不明です。今のところ1体確認のみ」


 湖上に見える明かりを見て慌てて戻ってきたようだ。筋力強化で全力疾走したのか、息があがっているが、息を整えながらとぎれとぎれに話す。


 プヨンが簡単に報告を終えると、どうするか次の手を相談した。


 さっきまで実験対象に向けてお試し魔法を打ちまくり、岸まで運び、遠隔で治療を行ったのもすべてプヨンだ。しかし当然、状況がわかってないふりをする。


「二年生殿、湖岸の方で炎が消えるのを見ました。確認してみますか?」

「よろしい。行ってみましょう。私が先行します。万一私に何かあったら、あなたが報告に行くように」

「了解です」


 2人は前後に距離を取りつつ、火が消えた湖岸に向かって進む。プヨンは1体しか見つけていないが、当然単独行動とは限らず伏兵がいる可能性も高い。プヨンは明かりで目立たないよう闇夜のムーンライトを発動する。


「フォティン」


 もちろん二年生には発動がばれないように配慮する。ほのかに光を出し月明かり程度の明るさの空間照明の魔法で、湖岸に横たわる対象がうっすらと確認できた。影からは人のように見える。


「あそこに人影があるようですね」

「そうね。周りにはほかに人影もないし、不穏な気配もなさそう。行ってみましょう」



 近づきながらプヨンは自分がしたことと状況を整理する。今回のお試し魔法はもうすっかり慣れてきた、お得意の光子砲系だ。


 光子砲は焦点をしっかりとあわせれば巨大な熱を与えることができる。その気になったら巨木を燃え上がらせたり、岩を溶かしたりもプヨンならできるはずだが、今回はそこまで威力をだしていない。あくまで理論的な確認だ。そしてもう一つ試したかったのは遠距離治療。


 ただの火傷治療ではあるが、距離による減衰+本人の抵抗力を上回れるかの確認だ。


 今回与えたダメージはおそらく表層部だけで骨までは届いていたはずだ。溶けた皮膚がスパッタとして飛び散っていたのは見えたが、深部のダメージは少ないはずだ。


 その後動かなくなっていたが、単に治療か何かで体力がつきはてたか、一時的な痛みのためだろう。重症部分があったとしても、頭部は攻撃していないので死んでいるということもないはずだ。もちろんプヨンの理論上の話だが。



 湖水に落ちて濡れたせいもあるのか、服などの火は勝手に消え、湖岸は暗闇になっていた。


 

 プヨン達は湖岸に降りた。風のせいなのか、波の音が聞こえるが、他の生き物の気配はない。プヨンチェックでも確認できないし、二年生も何も感じないようだ。


 少し先に一人、少女の服装をした熟女が倒れているのはわかる。見たところ、まだやけど跡が残っていたので、プヨンはこっそり治療を施しておいた。


「こ、これは? 初年生プヨン、あなたがやったのか?」

「いえ、違います」


 聞かれたが、もちろんはぐらかす。


 気を失ったからか擬態も大半が解けている。顔は教官よりも同い年か年上に見えた。しかも服はあちこち焼け焦げていて露出過多だ。いろんな意味で不審者極まりなかった。


「な、なんという理解しがたい服装だ。というかこれはこういう服なのか?切れ端を身に着けているとも言えるが。しかしなぜこんなところで寝ているのだろう? もっともこれは寝ているのだろうか?」


 矢継ぎ早に質問を口にする。歩哨のくせなのか二年生はうろうろと歩きながら観察する。さすがにトラップはないだろうが、何か見落としていないかチェックしているのだろうか。


 プヨンも目覚め魔法の一環として、足の裏をくすぐってみた。空圧魔法の応用で指20本相当くらいでそっと試してみたが反応はなかった。本当に意識を失っているようだ。


「ファッションのことはよくわかりません。くすぐってみましたが、反応はありませんでした。寝たふりではなさそうです」


 普段はセーブしてなかなかできないことも散々試してある。しかし実験台として使ったあげく、礼をするどころかプヨンは真面目に対応し続けた。


「北方でいろいろあるらしいですがスパイか。あるいはこの不自然で淫らな服装。おそらく、蜜教の手の者かと」


「むぅ。確かにその意見、無視できぬものがある。さすがに密教はないだろうが」


 二年生は周囲を歩き回り観察していたが、それも1分ほど。生きていて怪我がなさそうだと判断すると、捕縛リングを取り出した。ついでにストレージから荷運び用の作業用台車を取り出す。


 プヨンは運びますよと言おうと思ったが、


「えいやっ」

「ぐへ」


 瞬間的に持ち上げられた不審者マリーは、一瞬うめき声をあげたあと、捕縛状態のまま作業台車で運ばれていく。もちろん手は使わず台車は魔力で牽引されていく。時折石などで台車が跳ねると顔を打ち付けて呻き声が出ていた。


プヨンの視線に気づいたのか、


「ふっ、捕縛者に対して丁寧すぎると言いたいのだろうが、私は優しいから……ほら、引きずると疲れるしね」

「え? えぇそうですね」


 捕虜になるということは、大変な目にあってしまう。抗議するのはあってからだ。


 プヨンはまた一つ学んでしまった。

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