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魔法の使い方教えます  作者: のろろん
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王剣の授かり方 2

 プヨンは気を取り直して、再度相手を観察する。


 まさか自分の体の一部を投げ、さらにすぐにそれを再生できるとは思わなかった。


 生え変わりのようなもので体内に事前にあったものを生やしたのか。


 限界はあるのだろうが、ここまで速く再生する生き物は初めて相対した。


 一定の距離を取りつつ慎重に向かい合う。まずはまわりに磁界を張り、周囲に仲間がいないか全方向に注意を向ける。よくよく考えれば相手が一体とも限らない。

 

 そう警戒していると再び左右のカマが2本飛んできた。


 バシッ


 一本は剣で叩き落とす。カマ自体は軽くプヨンの剣で軽く弾くだけでよかったが、地面に落ちずそのままブーメランのようにザリパーに戻っていった。


 どうも浮遊魔法で操作しているようだ。


パチーッ


 カマの付け根までいくと、ザリパーカマは付け根でくっついてしまう。カマが再び動いている。


「え? くっつくの? なんだそれ。 もしかして高速の治療魔法なのか」


 だがプヨンは先ほどよりは冷静だ。飛んでくることがわかっていたら身構えることができ、そのまま間合いをつめる。当然、もう一本のカマも再生して攻撃される前提だ。


 ビシュビシュ


 右、左とカマがくるのをステップで交わし、カマが緩やかに曲がりながら通り過ぎて行った。


「プヨン、後ろ!」


 ランカが『さん』を飛ばして叫ぶ。焦っているのはわかるが、プヨンは先ほどの磁界認識で飛ぶ位置を把握している。


 先ほど飛んでいったもう一本のカマがブーメランのように戻ってきている。今度はバックパイオンで背中に防御壁を張っているため、


 カキーン


 カマは防御壁に当たり、同時にそこにあわせて発現させた火球でカマが燃え上がり炎を噴き上げる音がする。


「おぉ、けっこう燃えるね」


 虫系は火に意識が向かう習性があるが、ザリパーも同じようだ。熱にザリパーの注意がいき、動きが一瞬止まる。


 ボギャ


 プヨンが飛び込み魔法で自身を加速し、一気に距離をつめ、ザリパーの脇を剣で軽く一閃した。


 いかにザリパーが巨体といえどプヨンの剣とは圧倒的な重量差がある。そのまま50m程度向こうまですっ飛んでいった。

 

「やった、どう?」


 オロナの民が、うぉーっと叫ぶ声が聞こえる。たまにはオロナの民にもできるアピールをしておく必要があるが、今日は認められたようだ。


 振り返ってランカを見るとランカの呆けたような顔が見えた。飛んでいった距離のせいか、一撃で倒したからかプヨンは満足していた。

 

 

「ふ、不合格!」

「えーー? なんでよ? なかなか威力あったでしょ?」

「昆虫系は火に弱いものが多いので、遠隔から火攻撃が基本です。危ないことはなるべく避けてくださいよ。ザリパーは危険なんですよ」

「えー、だから不合格なの? 厳しいなぁ、次からは気を付ける」


 ランカは、緊張冷めやらぬ顔で、プヨンを厳しい目で見つめている。


「はい。そうしてください。だから次からは近づかないでプヨンさんの得意な魔法でしてくださいね」

「魔法だったら合格だったの?」

「そうです。火球で追っ払えるはずです。むやみに突っ込む人はお仕置きです」

「お仕置きか……」


 ランカの冷めた視線に、喉まででかかった『お仕置きやってみて』を飲み込むしかなかった。



 今回は食べ物、特に肉類を積んでいないので危険動物が匂いに寄ってくることはなく、その後は餌目的の危険な生き物を見かけることはなかった。


 逆に寄ってきたのはコークスなどの燃料のせいだろうが炭疽禽だ。


 動物の死体に群がる掃除屋で、炭素が大好きな猛禽の一種だ。死ぬようなリスクはないが羽毛にまとった腐敗臭のようなきつい体臭が特に危険だ。猛烈に涙も出たり、吸い込むとむせたりもする。


「鼻に羽毛が入り込むと、死ぬほどの苦しみがありますよ」


 ランカの忠告が飛ぶ。鳥自体が小さいから一種の気体生物といえなくもなかった。


 その割には風下から近づかれ、何度か気が付かないうちに荷馬車の後ろのコークス樽に止まっていた。


 樽をつつく音で気付き、あわててランカが石弾で追い払っていた。


 もちろんプヨンも再び剣の錆にでもと思ったが、もし万が一にも触れ、ドブのような臭い付き羽毛が大量に体に着くと耐えがたいダメージを受ける。


 さっきも怒られたばかりだが、うかつに近いて剣で切ることは避けた方が無難だろう。


 万一プヨンに臭いが付くと隔離され、当分ランカはきてくれないに違いない。それくらい危険な生物だった。


「あ、まずい」


 プヨンが叫んだ時には遅かった。プヨンが出したドライアイス弾をかわした鳥をオロナが手で捕まえてしまっていた。


 ブチン


 音がして、鳥自体は力任せに掴まれたショックで絶命していたが、特に臭いのきつい体液が付着したオロナにも悲劇が訪れる。


 見てみてーと成果を示すオロナをチラ見し、うっと鼻を摘まむランカ。


 英雄になるはずがランカから即行で徒歩を命じられ、とぼとぼとプヨンと反対側の風下を歩かされていた。


 やっかいなことにこの匂いはすぐに取れない。プヨンも水をぶっかけてやったが、ダメだった。


 フィナツーが使った匂い儀装魔法『アエロマース』や脱臭魔法『デコ・ド・ライト』では取り除けない。最後にプヨンが光魔法を応用して『オオゾン』脱臭を思いつくまで、みんな息を最小限に抑えて歩いていた。


「プヨンさん、除臭魔法が使えるのですか?」

「え? いやまぁ、それほどでも。これでptがつきましたか?」

「いいでしょう。ランカポイント制度はじめました」

 

 今日のランカはノリがいいようだ。しかし、続いて、


「ランカptを50pt差し上げましょう。1,000pt貯めたら、『ランカご奉仕券』がでますよ」

「な、なんだって? ご奉仕拳だって?」


 プヨンはランカが繰り出すご奉仕に期待し、急にやる気が出てきた。先ほどまでの疲労がなかったかのようなすさまじい威力のご奉仕拳。こんな体力回復魔法があるとは、意志の力とは恐ろしい。プヨンはランカの発想に恐怖した。



「プヨンさん、つきましたよ。どうしましたか?」

「え? あ、あぁ。ありがとう」


 ランカの秘魔法ご奉仕拳には付随効果があった。


 プヨンはご奉仕の内容を考え始めた瞬間、時の流れが操作されたようだ。時短効果。集中しすぎたためかあっという間だった。結果が出る前にヴァクストの店についていた。





「ヴァクストさんはでかけているようですね」

 

 みんな出かけているようだ。


 ランカはプヨンを連れて案内をしてくれる。この休暇前後の間にできた鍛冶場やランカの礼拝所を見て回る。特段目新しいところもないが、少し広く効率よく動けるようになっていた。



 そうこうしていると、ランカがいいことを思いついたとばかりに目をキラキラさせ始めた。


「プヨンさん。プヨンさんの成果を見せてください」


「成果? 剣の切れ味ってこと? さっきのじゃダメなのかな? ただこれはそんな切れ味はよくないと思うよ。丈夫さはあるかもしれないけど」


「そうですか? でも、ヴァクストさんの参考になりそうな気がして」


「いや別に見たければ見せるけど。そう言うなら礼拝所の裏手にでもいこうか?」



 プヨンとランカと一応とりまきのオロナの民も建物の裏手に移動した。さすがに植物を傷つけるのもためらわれ、ガンオー(以前会った岩の意志体)には申し訳ないが、少し離れたところにあった大岩の前に立った。


 プヨンの剣は槍よりはいくぶんか軽いがそれでも相当重い。一方で大岩も直径2m。計算上は10トン程度はありそうだ。


「じゃぁ、こいつで思いっきりやってみようか? いいかな?」


「え、これですか? この大岩で? でもその剣は色が黒いくらいでどっちかというと刺突ですよね? 折れちゃいませんか?」


 プヨンの剣はフェンシングのように先が細い直径2㎝もない円筒形のタイプだ。頑張って作ったがこれ以上太くできなかった。


「まぁ、いいんじゃない? 剣先がそう長くもないからちょっと足りんかもしれんけどな」


 プヨンは通常の両刃の剣のように目一杯ふりかぶり、手加減しないで全力で剣身を叩きつける。


 もちろん斬撃の速さの大半は魔力による浮上と加速によるもので、筋力によるものはわずかだ。いつもの撃ち込み速度の数倍だ。


「プラネットバースト」


バゴウッ


 粉々に砕け散るかと思っていたが、大岩と剣の重量比は約50倍。木製バットで20gの小石を打つようなものだ。


 ブワッとほこりが舞い上がり、一部は砕けたが大半はそのまま飛んでいく。


 小さくなっていく石を見上げる。


「あれ? 砕け散るかと思ったけど、意外に頑丈なんだな。大砲の散弾を打ったみたいにどこかに飛んで行ってしまったか?」


「そ、そうみたいですね」


 ランカは今一つ状況が理解できていないようだ。上ずったような声で反応を示す。


 大きな岩だと思ったが、どこまで飛びあがっているのか、かなり角度が高めで上空に高くあがっていき、大きさは米粒程度になってしまった。


 現実離れしているのか、ランカの感想もどこか他人事のような口調だ。淡々とした話し方がかえって現実を理解できていないことを示していた。



 時間にして10秒以上たったころ、


「あ、戻ってきたかな」


バキバキバキッ、ドズゥゥゥン


「ひゃぁ」


 大岩が落ちたのだろう。せっかく植物を大事にしようと思ったのに、派手に木の幹や枝が折れる音が聞こえてきた。プヨンの配慮は無駄だったようだ。



「す、すごいんですかね? よくわかりませんけど……」


「まぁ、期待通りだけど、こんなもんだと思う。いい感じだけど、他のみんなはどんな強力な武器を使っているんだろうね」


 それでも大岩を弾き飛ばして折れも傷つきもしない剣だ。性能を見たランカが


「あ、あの。プヨンさん。その……その剣を、しばらく預からせてくれませんか? きっとヴァクストさんも参考にしたいと思うんです」

「え? これをか? そりゃ別にかまわないけど。こっちの蒼紅の剣のほうがよくないかな? これなら一組あげてもいいよ」


「や、やった。ありがとうございます」


「では、汝、ランカにこのWC委員会の紙、プヨンが作りし「王者の剣」を授ける」


「はい、ありがたく拝受いたします」


 即興の、王剣紙授の儀式を施してみた。ランカものってくる。


 ずっと以前、プヨンが紙箱に入っていたことで、ユコナが紙々と言っていたことを思い出す。 


 ただこっちの剣は異常に重い。さすがに屋内には持って入れないだろう。


「でもこの剣は重いから、ここに突き刺しとくよ。雨風とか気にしなくていいからね」


 そういうと別の大岩に向かって、プヨンは持っていた矮星と同物質の超重量剣を、


ガスッ


 と一息に突き刺した。重量が加わったからか岩が地面にずぶっとめり込んだが、10㎝ほど沈んだだけですぐにとまった。これで、問題ないはずだ。


「いるときは、ここに見に来て。もちろん、持っていけるなら好きにしてくれてもいいからね」


「は、はい。なんだか儀式っぽくてかっこいいですね。王剣なんてすごいな」


「まぁ、遊びだよ遊び」


 ランカはどこかの本にでもありそうな伝説の神授の剣をイメージしているのだろうか。妙にかしこまっている。


 そしてプヨンは次にランカの礼拝所に戻ると、蒼紅の2振りの剣と、以前作った水晶製の盾をストレージから取り出した。

 

 「この剣と盾は重くないから、普段使いできると思うよ。これは壁にかけておくよ。試すときに好きに使ってくれてもいいよ」


 水晶の盾を礼拝所の中、出口の扉の上につけ、その前で剣がX字に交差するようにかけた。


 なかなかいい感じにまとまっている。もっとも礼拝所にはあまり似合わないが。


「さてと、遊ぶのはこれくらいにして、そろそろ戻るよ。ランカありがとう」

「こちらこそ、ありがとうございます」


 それだけいうと、プヨンは学校への帰路についた。


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