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魔法の使い方教えます  作者: のろろん
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レスルの登録の仕方

感想でコメントいただいていたこともあって、簡単な用語や設定を作るため、ここでは、もとの25、26話をまとめてひとまとめにしました。


26話は、今後、今後の要約、設定などの要約を書いていきます。


2人はヒルマに案内されて、受付のカウンターの脇にあるドアから別室に入る。すぐにヒルマは別の業務があると、すぐに部屋を出て行って扉を閉めた。


部屋の中を見ると、ホイザーと呼ばれるこの町のレスルの責任者がいた。


登録認定は本来は一般職員がすることになっているが、あいにく試験を判断可能な者が出払っていて、今対応できるのは彼だけらしい。


「お?、お前らが登録希望者か。回復魔法だって? ほんとかよ。その年齢でか?」


ホイザーはプヨンとフィナをみて驚いていたが、希望するだけのものは多いのだろう。


「まぁ、とりあえず見るだけ見てやるよ。アデルの推薦もあるらしいしなぁ。どっちからする? 女の子の方からいくか?」


そう聞かれたが、特にどちらとも決めていなかったが、言われた通りフィナから受けることにした。


「じゃぁ、もう一個奥の部屋でやるからな、そっちの女の子、一緒にきてくれ」


そう言ってフィナを連れて行くと、プヨンは椅子に座って待つことにした。


待つこと5分ほどでフィナが出てきた。


「プヨン、合格したって。人も治せたよ」


フィナは部屋を出るなり嬉しそうに報告してくれた。


(へー、そうなんか。そんな難しくはなさそうだな)


そう考えながら、プヨンはフィナの返事を受けると、入れ替わりですぐに部屋に入る。


「じゃぁ、2人目はプヨンか。じゃぁさっそく始めるぞ。まぁ簡単な試験だから、そんなに構えないでくれよ。できるやつはできることだからな」

そう言われたが、どんな試験かもわからない。プヨンは緊張していたが、ここは『はい』とだけ返事をする。


「じゃぁ、準備するからな、よく見てろよ」


そう言うなり小さなナイフを取り出したホイザーは、左手の薬指の先をスパッと切った。


よく見るとホイザーの薬指は爪がなく長さも短い。第1関節あたりから先が切り落とされたようになくなっていた。その先をナイフで傷つけたようで、血の粒が1滴したたりおちた。


「じゃぁ、さっそくこの薬指の怪我を治してくれ。できたら合格だ」

 

試験がはじまったようだった。プヨンはホイザーの指を見て、そして固まる。


「ゆ、指の先がない……。こ、この怪我を治すの?」


「おぉ、そこはあまり気にすんな。昔ちょっとミスってな。そう不便ないのもあってそのままにしてるんだ。こいつを普通に治してくれるだけでいい」


プヨンはホイザーの言葉を理解しようと少し考える。


(治してくれるだけでいいって、ゆ、指がないのを治せって? で、でもフィナは合格したって言ってたよな。フィナはどんな試験を受けたんだ? 同じ内容なら治せなかったことになるが?)


 フィナがどうしたのかを想像すると、すぐに理解できた。そうだ。きっと指は2本ミスったに違いない 


怪我した指なら治したこともあるが、なくなった指を人で治すのは初めてだ。


思ったより簡単でないのかもしれない。念のため聞いてみたが、治すための方法はイメージできている。


「自分は、指の復元治療は初めてなんだけど……、もしかしたらうまくできないかもしれないし、ちょっと痛いかもしれないけど……、いい?」

ホイザーはそれを聞いて、


「えぇ? アデルは治療できるやつがいると言ってたけど、初めてなのかい? ぶっつけとはアデルにしては横着だな。まぁ、かまわんから、好きにやってみなよ」


そう言ってくれた。失敗してもダメでないならと、ちょっと安心する。


「じゃ、じゃぁ、やるよ」


意識を集中し、治療するところに指をあてていく。


(指の治療か。どういう順番でするか。やっぱり内側からか。骨、血管、筋肉、神経とリンパ、筋肉と神経を接合して、最後は皮膚で覆うか。あるものをコピーしていく順番で)


「まずは、骨からいくよ・・・。リパリー」


ホイザーの指先がほのかに光りだし、魔法が作用しはじめた。どの程度できるのか見定めながら、優しく見守るような眼で眺めている。すると、


「い、いてっ」


ホイザーが呟いた。指先が最初に少し割けてしまうのは仕方ない。


こいつ下手だなって顔をしていたが特に何も言わず指先を見ている。プヨンは作業を続けた。


ホイザーの指先にできた切れ目から亀裂が入り、さらに血がにじんだ。その中央から白いものが突き出てゆっくりと伸びていく。ホイザーの体の骨を少しずつかき集める。そして反対の手の薬指を見ながら、各組織や形状を確認した。集めた材料をもとに、指の骨をコピー再生していく。


「お、おい、プヨン! お前何してんだよ。キャスティングは?」


ホイザーが突然語気を強めた。


魔法を使うための準備をしている様子がなく、いきなり指の状態変化がはじまった。さらに“指先のナイフによるかすり傷の治療”とは違う現象が起こっていることに気づき、ホイザーはとまどっていた。


指先を見ながら治療に集中していたプヨンは、ホイザーの表情や発言には気づかずそのまま治療を継続していく。


(骨のコピー完了、血管のコピー、筋肉のコピー、神経のコピー)


「な、指が伸びていく……。初めてじゃないのか? どうなってんだよ」


これは欠損部分の再生。もちろんホイザーは何が起こっているかは理解できる。だが今まで治療できなかったのはそうそうできる者が限られ、金もかかる。不便も少なく勲章代わりにしていたのだ。それがプヨンが治療していることに結びつかず、茫然としたまま自分の指先を凝視している。作業ごとにホイザーの指が変化していく。


皮膚のコピーから、ゆっくりと確実に、神経を筋肉にくっつけて、皮膚のコピーをして、最後に爪を再生した。


完成だ。ホイザーの薬指、少なくとも外見はきれいに再生できていた。


「ホイザー、指、動かせる?」


ホイザーからは返事がなく、まだ自分の薬指をみている。


「ホイザー?」


プヨンがホイザーを呼び掛け続けると、4度目でようやく気づいたようだ。


「お、おぅ……。あ、あぁ、う、動くぞ」


指がくいくいと曲がっている。ホイザーの指は元通りに再生できたようだった。


「し、信じられんが、指が治ったのか」


浮ついた声は変わらないが、ホイザーはようやくまともに声が出た。


「プ、プヨン、お前はいったいどうなってんだ。指が治ったぞ」


「治ったって、フィナだってできたって言ってたよ? 同じでしょ?」


「ちげーよ。さっきの子は指先を切ったちっさい傷をなおしただけだよ。それで合格だよ」


少し怒鳴るように叫んだあと、ごほごほっせき込んだ。

「お前は、指が生えてきたじゃねーか。しかも元の指がない状態からの再生だぞ。ありえねー……。完全欠損の再生は……、AAAだぞ。お前の年でそんなやつこの辺にはいないぞ・・・」


「じゃ、じゃぁ、回復合格なんだね……。へへ」


「へへ、じゃねーよ。お前はなんなんだよ。どうすんだよ、これ……」


「もう一回元の指なしに戻せってこと?」


「……いや……このままでいい」



まだ頭の中が状況を認識できていないようだが、とりあえず試験が終わった。


「試験は一通り終わりだ。ちょっと登録するから、表で待っていてくれ。すぐ終わるから」


 そう言われて、プヨンは部屋の外に出て行った。




 プヨンが部屋を出るとフィナが話しかけてきた。


「プヨンどうだった?」


「うん、まぁ治せたっぽいから、合格じゃないかな。フィナも合格したんでしょ? よかったよかった」


 2人とも合格したのもあって、にこにこ話しながらだと時間はすぐに経つ。

「2人とも、もう一回部屋にきてくれー」


 ホイザーの声がかかると、今度は2人そろって先程の試験部屋に入った。


 部屋に入ると、ホイザーが小さい金属製の2つのプレートを持っていた。


 大きさは名刺サイズだ。


 左上に名前、ここのレスルのマークと番号が金属板に打ち付けられている。その下にはところどころにいくつか記号が並んでいた。


 ホイザーは納得できていない顔をしていたが、手渡し簡単に資格の補足説明をする。


「とりあえず、2人とも回復持ちだ。おめでとう。それからプヨン。アデルが素質ありってことで、剣も名乗っていいってことだから、印をつけてあるぞ」


「剣も使えるってこと? でもそんなテストしてないんじゃない?」


「アデルはうちの教官剣士だからな。奴が言うには、プヨン、『お前は技術はなってないが、その辺のやつとはいい勝負するだろう』だとさ。技術がないのに使いこなせるってのがよくわからんが、一定程度は使いこなせているそうだ。そこそこのやつと戦っても、ぼろ負けはしないから資格不足で足切りにしなくてもいいそうだ」


「え、そうなの? アデルとちょっと練習したからかな? ふふふ。やった」


 予想外の剣合格もついてきて嬉しかった。


「このカードが資格表だ。名前と登録の番号と所有資格が書いてある。紐があるから首か腰にでもぶらさげておいてくれ。基本はそれだけしか書いてない」


そのあとはホイザー直々でなくてもいいのだろうが、資格についての概要説明だ。


「有効期間は2年間だから、何もなくても期限が近付いたら更新にきてくれ。もちろん偽造はするなよ。台帳とあわなくなると、次から追加の資格が取れなくなるぞ」


 カードはきれいに角がとれ滑らかな金属だ。特に肌につけても怪我とかはなさそうだった。



ホイザーは続ける。


「レスルの中では資格は大きく3つある。Cは非戦闘系だ。登録の7割はこれだ。Cも経理とか、法律、商人とか、後ろに資格がついたりもする。技能資格はAとBだ。Bは武器の扱いだ。プヨンも剣Bがついてるだろう。ある程度使えるってことだ。Bの数で、使える技術というか、強さの程度が分かる。基本多いほうが優秀だ。B持ちは強さ自慢したいのもあって、オープンにしてるやつらが多いな」


 そこまで言うとホイザーは一息入れる。


「最後はAだ。Aは魔法を中心とした特殊技能だが、他にも鍵開けがあるな。荷物運搬はストレージでも筋力でも方法は問わないが可搬重量で決まる。石工や武器加工とかもある。こっちはなぁ、みんなに教えるやつと隠すやつは半々くらいだな」


「隠すんだ? なんでだろう」


「鍵開けとかうかつに知られるといらん嫌疑をかけられたりとかな。ものによっては、トラブルのもとになる。AもBも自分から教えるのはいいが、あんまり無暗に聞くな。仕事を依頼してくる奴は、これを持ってる人って指定してくることが多い。これで、2人とも、回復A持ちだ」


 プヨンはもらったカードを再度見る。カードには項目の横に無駄に空白がある。後日高資格ランクが取れた場合は、あいた場所に記号が追加されるが、今は「回復AAA」、「剣B」が入っていた。おそらく、それぞれの指定場所なのだろう。受け取ったカードを首からかけ、そのまま服の中に入れておいた。


「本来この辺は、ヒルマあたりに説明させるんだが・・・プヨン・・・、いや、プヨンさん。もし、力になってもらいたい時があったら、是非、協力していただきたい。うちもたまに大けがするやつがいるんだ。もちろん、絶対治療してくれって言ってるんじゃない。治す協力をしてくれれば、それだけでいいんだ。もちろん、金は出る。・・怪我人からだが」


「・・・大けがした人がいれば、治せばいいんだね。いいんだけど、自分もよくわかってないから、なんでもは無理だよ。でも、ちょっと大げさじゃないの?メイサとかも、よく骨なおしてるよ?」


「メイサも、もちろん資格を持ってるんだが、あいつはこの指は治せなかった。一度なくなったものは治せないそうだ。ふつうはそうだぞ。壊れたりちぎれたものをつなぎ合わせるなら、まだできるやつは多いんだ」


「へー。そうなんだ。でも今日こんなのするって誰にも言ってきてないし、怒られたらいやだから、誰にも言わないでね」


「なんだよそれ。お前自分のやったことがぜんぜんわかってないな。しかもさっきの10分とかかってないだろう。ねーよ。絶対ねーよ」


 口調は冷静だし声も大きくはないが、ホイザーはこいつあほかという表情、どうやってやりやがったんだという興味、ちょっと敬意を混ぜた複雑な表情をしていた。


「あとの仕事の受け方とか、細かい話はまた必要時に受付のほうできいてくれ」


 わかったと答え、2人は部屋を出て行った。



 部屋を出ると、プヨンは急に疲れていた。フィナもしんどそうだ。


「なんか疲れたね。フィナはいつものところに戻るの?」

 

フィナも特に口にはださず、うなずいただけだ。



 受付に近づくと、アデルが待ってたとばかりに話しかけてきた。


「けっこう時間かかってたじゃねーか。30分くらいか。2人ともどうだった」


「2人とも受かったよ。やるでしょ」


「おー、やるやる。プヨンは剣もなかなかだったぞ。反応がはやいのか、勘がいいのか。・・・しかし、その年でなぁ。A持ちかよぉ」


アデルは一通り褒めてくれたあと、今日採取してきた草入り袋を渡してくる。


「じゃあ、俺は、今日はここでお別れだー。メシ食いにいくから、それ渡しといてくれよ」


と言いつつ、さらにコイン2枚を投げてよこしてきた。

「今日はお前らは仕事を受けていたわけじゃないが、それは、まぁ、今日の駄賃だよ。あとで、なんか食えばいい。今度頼むことがあったら、ミドルを組んでくれよ。一緒に仕事をするメンバーが集まるとミドルというんだ」

そう言い残すと、立ち去って行った。


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