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魔法の使い方教えます  作者: のろろん
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脱出の仕方 2-2

「夜と昼では動作が違うのか。昼間はまだまだお遊びだったってことなのか」


 プヨンは当初の予想と異なって慌てているが、ここは冷静に当初の予定どおりに行くことにする。


 明け方前で、みんな寝入ってるころだ。目立ちたくないユコナと大きな音や明るい光が出るものは避けようと決めていたので、あらかじめ作戦は決まっている。


 「えい、凍って地面に張り付け!」


 ユコナは自分に向かってきた二体に水をかけ、それを凍らせて固めて足止めをする。


 膝から下に水がかかって凍りつき動けなくさせるが、後方にいた剣士が手に持つ剣で砕いて回復させていた。


 ユコナは4体を順に凍らせては距離をとり、囲まれないようにうまく立ち回っている。


 一方、プヨンは奥にいる2体の女神像が動いていないことが気になっていた。


 鏡を構えながら様子を伺う。


「鏡見てないで、プヨンもなんとかしてよっ」



 ユコナの叫びもあって、女神側の様子を見つつ、とりあえず浮遊剣で石像達を牽制する。

 ただ、これでは逃げ回っているだけだ。いずれ疲れて終わるのが目に見える。


 プヨンはユコナがひたすら水をかけては氷にすることに気付いていた。


 石に染み込んだ水分は氷になることで徐々に亀裂を作っているはずだ。


「その調子だ。石像の石をもろくしてやろう」


 プヨンは石像を砕いてしまうのがいいと思った。


 そうなると相手は石なんだから、熱衝撃が効果的だ。

 熱くなった石を急激に冷やせば、急激な膨張収縮で簡単に砕くことができる。


 どうやって熱するか、プヨンは事前に2つのアイデアを考えていた。


 一つはマイクロ波加熱、電子レンジと同じ方法だ。もう一つは光のコヒレント制御があった。


 プヨンがどうやって石像を加熱するか考えていると、ユコナが動き回っている地面に1センチ程度の赤い点がついてまわっているのに気づいた。

 夜だから赤い光点が目立っていたため、見えやすかったこともある。


 すぐにピンときた。女神像の光子砲だ。光子砲の位置確認のため、ガイド光が動き回っている。それが夜の暗闇の中で見えているのだろう。

 昼間は陽の光の中で見落としていたのかもしれない。



「ユコナ、赤い点に気をつけろ。体の上に見つけたらすぐに動いて位置をずらすんだ」

「え? よくわからないけど、赤い点に注意するのね」


 そう言いながら動き回っていると、


「あ、これね。なんか、少しあったかく感じる……って、あついっ!」


 数秒腕のところに赤い点がついているかと思ったら、突然、腕のところからまばゆい光が輝き、ユコナの腕に赤い光の筋が走るのが見えた。


 悲鳴というよりは絶叫だ。


 空中には光の筋は見えなかったが、ユコナに当たっていた赤い点のまわりが発火し、溶けてスパッタが飛ぶ。突然腕に赤い筋が走ったところが燃えあがっていた。


 ユコナは悲鳴をあげながら悶えるので、プヨンは慌てて後方に引き下がらせて石像から距離を取る。ユコナは服での治療効果が発動している。

 焦点がずれたようで炎の噴出は収まっていた。


 中央にいた女神像からの光子砲が放たれたようだ。


「腕が痛くて動かないわ!」


 反射的に腕を動かして避けたことと、それなりに距離が離れていたこともあって、腕が焼き切れることはなかった。

 致命傷ではなさそうだが、軽いレベルの火傷ではない。

 厚手の服の表面にあたったところは炎が噴き出て焦げてはいたが、短焦点だったのか燃えた部分の深さはそこまで深くないようだ。


 表面部分が高熱になったせいで、おそらくかなりの火傷を負ってしまったのだろうが、表面的な火傷であればなんとかなりそうだった。


「フェルンビハント」


 プヨンとユコナとは少し距離があったが、ユコナの怪我はおそらく火傷だろう。それなら腕の組織の再生だろうから離れていても遠隔治療ができそうだ。


 以前、メサルがレスルでやっていたのを見たことがあって密かに考えていた方法だ。


「なるべく腕を動かさないでいてくれ」

「無理に決まってるでしょ」


 ただ、ユコナは激しく動き回っている。こちらも狙ったところになかなか焦点があわないのか、治っているのかわからず時間がかかっている。


「えぇーい、範囲を広げてくれるわ」


 特定部位に絞れず、範囲の皮膚組織をまとめて修復する。


 なんとか、ユコナが逃げ回って時間を稼いでいてくれたが、そのうち


「あっ、腕の痛みなくなってきた」


 なんとか治りつつあるようだ。間に合って、プヨンはほっとした。

 

 片手で持っていた箒をふたたび両手で持ちなおし、ユコナは腕の回復効果があることを教えてくれる。


「やっ」


ガツン


「あっ。いたっ」

「今度はなんだ」

「し、しびれた」


 おまけで石像の一体を殴りつけ、砕けた石のかけらが飛び散っているが、殴りどころが悪くて腕がしびれてしまっただけらしい。


「顔とかには気をつけろ」

「わ、わかった。わたしの美貌は人類の宝だもんね。しかし、サラの話と全然違うじゃない」


 後半は独り言のようでプヨンにはうまく聞き取れなかったが。


 プヨンは持ってきた鏡を取り出し、タテネルの盾と同じように宙に浮かべて女神像とユコナの間に割り込ませる。


 なかなか焦点があわないのか、女神像からはすぐには2撃目がこないように見える。

 今のうちにプヨンは試してみたいことがあった。一言でいうとお返しするだけだ。


「この鏡はなんなの? 何かするの?」


 再び腕が動くようになったユコナが、鏡が気になるようで叫ぶように聞いてくる。


「うん、ちょっとな。そのまま、女神像との間に鏡を挟むようにしながらうまく逃げ回っていて」

 

 石像を壊すには叩いて砕くのもありだが、なんとなく力技すぎて無粋に思えた。

 

 筋肉バカならいいが、せっかくなのだから魔法でうまく壊してやりたい。


 特定部分を熱して急速に冷却する。膨張と収縮をすばやく繰り返す熱衝撃を利用し、石に亀裂を入れて砕く方法が良いと思えた。



「よし、今からやるから、うまくいったらそこを冷やしてくれ。一気に全力でだぞ。相手は右端の剣士だ」

「え?冷やすのね。わかったわ」


 ユコナと段取りをつける。


 石像が光学魔法を使用するのだから、ここはあえて同じ方法でいくことにする。

 材料はまわりにほぼ無限にある空気。空気中に大量にある窒素と二酸化炭素だ。


 水面に石を投げ入れて波紋を作るかのように、共鳴励起を利用して二酸化炭素から特定波長10.6の光波を取り出す。目には見えない領域の光だ。


 魔力をつぎ込んでいるところが熱を持ち、ぼやっと赤い光が見える。思ったより効率が悪いのか、光だけでなく、損失のため空気からの熱気が感じられた。


 しかし、目には見えないがかなりの光が取り出せているはずだ。

 水面でそこらじゅうが波紋だらけになったように、空中に無数の光波が発生しているに違いない。


 この波を一定範囲で凹レンズ効果で往復させて1つの波にまとめていく。


 


「まだ? まだなの?」

「いまからやるところ! 最初だからちょっと慎重に、出力を絞ってと」


 ユコナの催促がくるが、肝心なところがまだで照射するまではあと1つ足りない。


 水面の波が重なると波の山と谷が大きくなるように、光の波の山と谷をそろえ振幅を大きくしていく。 

 バラバラ波を1つにまとめてコヒレント化することだ。


そして、頃合いを見計らって、


「ガル・パンミラー」


 とりあえず最初だ。まずは、出力よりできたかどうかの確認のため、一度試射してみる。

 励起させて取り出し1つにそろえた光をガル・パノ集約し、ユコナのそばにいた石像の一体に向けて焦点をあわせてみた。


「あ、あぁぁっ」


 ユコナは数m離れたところにいた石像の腕が音もなく赤熱するのを見て、おかしな声をあげていた。


 赤熱した部分から溶けた石粒が飛び散って、スパッタ、火の粉が舞うのが見える。


 石像の放つ光は割と太さがあったが、一点に集約したプヨンの光のほうが、あたったところへのダメージは大きそうだった。

 それでも完全に集光しきれていないようで、プヨンが思っていたほど破壊力は見られなかったが。


「よし、今だ。冷やして」

「え? ええ!」


ジュジューー


 ユコナは大急ぎで腕周りに氷を貼り付けたが、石の赤熱の方が強いのか氷はすぐに溶け、水蒸気が舞い上がる。

 石像の腕周りが水蒸気でぼやけ、プヨンが以前に霧で女神像の光子砲を防いだように光は散らされてしまう。


「あぁ、ひど。ぜんぜんダメじゃないの。うぅ、こんな氷じゃすぐ融けちゃう」

「おぉ、もっとしっかり頼むわ」


 プヨンによって石像部分がそれなりに熱されていたのだろう。ユコナは自分の出した氷があっという間に融かされていくのを見て、熱量で力負けしたのが納得いかないのか小声でぶつぶつ文句を言う。


 しかし、プヨンによる照射とユコナによる冷却を何度か繰り返すと、


 ビシッ


 大きな音がしたところを見るとどうやら石部分に亀裂が入ったのだろう。

 ユコナもそれに気づき、まんざらでもない顔をしていた。

 

 「とりゃ」


 プヨンは腕周りに向かって浮かべていた盾を高速で叩きつけてみると、


バキンッ


 腕周りがもろくなっていたのだろう、腕が打ち込んだ衝撃で砕け地面に落ちていった。


「あ、やった!」


 ユコナが喜んでいる。プヨンも光学魔法自体も、石像の強度の弱め方もどちらもうまくいったことがわかり、倒し方の目途をつけることができた。


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