表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法の使い方教えます  作者: のろろん
204/441

学級活動の仕方

 連日の学校生活も防御の授業も少し慣れてきた4日目。


 昨日授業の後ちょっとした虫退治に参加した際にでも刺されたのか、朝起きると首筋がちょっと腫れているようだ。


 赤いできものができていて、ひりひりする。


 大きな動物退治も危険ではあるが、数が多くて小型の生き物もタチが悪い。

 半分訓練だったが、羽虫の群れにはそうそう魔法は当たらなかった。

 爆発系などの範囲系でなんとか巣を退治したが、その後が大変だった。


 服が当たらないように気を付けて着替えた。


 メサルはとっくに日の出前から礼拝とやらに行っており、すでにいない。


 着替え終わって窓際を見ると11/144サイズのフィナツーが、例の定時報告をしていた。


 毎回何を報告しているのか気になるが、ユノーを移動させているのとしか教えてくれなかった。

 

 「なんだそれ、もっと詳しく」


 とお願いしたが、それ以上は聞きだせていない。


 一度、電撃魔法で窒素酸化物の植物肥料を作ってやろうと持ち掛けたときは、あと一歩で落とせそうだったが、結局それでもはぐらかされてしまった。


「フィナツーは、昼間は何してるんだい?」

「うーん、べつにー。プヨンが見えるところで、ぼけっとしてるよ。日光浴かな。お食事」


 たしかにだいたい演習場の隅にちょこんと座っているのは目にしていた。


「なぁ、フィナやフィナツーに気づいてるのはどのくらいいるんだ?」


 目立つようにも思うが、蝶が飛んでるくらいで、みんな気にしないものなのか。

 フィナツーを捕まえようとするものは見たことなかった。もっとも、敵意があるものが近付くと何かしているのかもしれないが。


 時折フィナツーが立ち上がると、何やら魔法らしきものを使っている。


「フィナは、何か忙しいみたいだよ。新芽の植物の指導をしているんだって」

「へー、植物にも新学期があるんだな」


 そんな話をしているとメサルが戻ってきた。今日も朝飯を食いに行く時間になった。

 



 特に目新しいことは起こらず、今日の授業が終わった。


 初日は魔力を使い切ってしまい、食事を作る火力が足りず生煮えを食べたり、そもそも喉を通らなかった者も、手抜き加減がわかってきたのか余裕が見られるようになっていた。

 筋肉痛ならぬ、精神通による頭痛がしていたものも大半が回復している。慣れというものは大きい。


 4日目の夕飯を食堂の隅でこそこそと食べていると、孤高のプヨンを微塵も理解しないユコナが話しかけてきた。


「こんな隅っこで何してるのよ」

「え? いや、人と話すのが苦手なもので」

「バカなこと言ってないで。どう? もう慣れてきた?」

「慣れたと言えば慣れたかな。主なところは地図はいらないかな」


 初日はどこに何があるかわからず、右往左往するものもけっこういたが、さすがにそういった失敗はなくなっている。


「今日は木曜日だったから、明日は金曜日。週末だね。ご予定はあるの?」


 ユコナに聞かれるまで忘れていた。もともとここにくるまでは、決まった休日をとらない生活をしていた。

 一定サイクルで何もしなくていい日がくるのは、違和感があった。


 プヨン達がいるこのあたりの1週間のサイクルは、現在は7日だ。

 プヨンは今まで年中休息日兼労働日だったが、通常は昔ながらの習慣で曜日で行動が制限される。


 昔話や地域の伝承が大元らしいが、自然に宿る力は日替わりで影響度が変わるらしい。


 例えば火曜日なら火に関する魔法は効果が出やすいとか、水曜日は水魔法といった類だ。

 金曜日は欲望の日、精神系に効果があるそうだ。


 昔は生を意味する生曜日きようびや、怒りマークするを意味する怒曜日どようびなどいろいろあったらしい。


 何百年も前にはそうした曜日が多種多様で、休日にあたるものが20日に1回程度だったらしいから恐ろしい話だが、しかし、いろいろな事情や改革により、徐々に減らされて今は7日となっていた。


 実際にそうした効果が魔法にもあるのかは定かではないが、強く信じる者は感覚的に1-2割の追加効果があるらしい。

 

 思い込みかもしれないが、精霊の加護を強く信じるものは効果が出る。案外バカにもできなかった。


「明日は生と欲望の金曜日。精神力アップよ。明後日は土曜日、最初のおやすみどうしようかしらね。明日の夜の準備もあれだけど、昼の準備はできたの?」


 準備と言われハッとするが思い出せない。


「昼? なんだっけ? 探検?」

「まあね、プヨンはそんなもんよね」


 予想通りとばかりに鼻で笑われてしまった。


「委員と編成決めよ。希望を考えておけと言われたでしょ。 記憶喪失治療のお礼は貯金しとくわ」


 そう言われてそんなものがあったなと思い出した。


 もちろん、ユコナがお礼を貯金した銀行はそのうち倒産させるつもりだ。



 翌日の授業も防御だったが授業自体はあまりかわりばえしなかった。

 距離や個数に変化をつけたり、多少相手が変わる程度だ。


 そして午後から座学用の教室に戻る。


 ユコナが言っていた『委員』と『編成』のためだということはわかった。



 ハイルン教官が説明する。


「よし。じゃあ、先に委員決めだ。いくつか主要なものがあるが、それ以外は大半が防衛委員になる。すなわち交代での訓練も兼ね、学校のまわりの監視が役割だ」


 夜間の立ち番、見回りは交代で全員があたるようなことを言われたが、それに加えて校内全体の見回りや周辺部の警戒などもう少し複雑なこともするようだ。


 中には周辺にある防衛設備の使い方などの管理もあるらしい。


 配られた委員リストを見ながら、皆、思案顔をしている。よく見るとリストの一部には必須のものと希望者がいれば選ぶ2種類があることに気づいた。


 単純に絶対いるものと、あったほうがいいけどなくても大丈夫という程度に分かれるようだ。


 学校設備管理委員や美化委員、衛生委員は希望時のみであり、衛生委員などはさらに試験付きになっていた。名前からして回復教官の助手みたいなものか。


「それから委員をしたものは夜の歩哨の担当が半分になる特典がある。委員負担と歩哨、どっちを取るかだな」


 特典の説明が入る。


 最後まで見ると注釈がある。委員担当のないものは、全員で防衛委員にあたるようなことが書いてある。


 ちょうどそのタイミングで、生徒の1人から質問が出た。


「質問です。歩哨ってなんでしょうか? 防衛委員というやつですか?」


 ナイスタイミングとみんな思ったに違いない。プヨンも聞こうと思ったところだ。


 ハイルンはすぐ教えてくれた。


「防衛委員は校内警備が主だ。偵察要員と言ってもいい。だから夜間、就寝中に見回りがある」


 就寝時と聞いて、それまで雑談していたものも静かになる。


「もちろんお前たちの知っている石像をはじめとした警備システムもあるんだが、それ以外の何かの侵入時、だいたい入ってきた生き物を追い返したりだが、そういったものをいち早く察知するための監視をするんだ。全員にまわってくるんだが、頻度と担当する場所が違うのだ」


 『就寝時間中』の見回りがあるということが理解されていくにつれ、生徒たちのざわめきが大きくなっていく。誰しも寝る時間は削りたくないだろう。


「ふふふ、ようするにお前らの半分は夜の見回りだ。1人2時間で4交代、夜10時から、朝6時までだ」


 さらにハイルンが追い打ちをかけていた。


 皆さっきより真剣に考えだす。


 それからはワイワイしながら、やってみたい委員のあるものは自主的に委員を選んで立候補していき、それぞれ順番に立候補者で埋まっていった。



「ふふふ、私は風紀委員よ。プヨンは風紀を乱したから、トイレ掃除1週間」

「ほほう、じゃあちょっと風紀を乱すようなことするから待ってて」


 ターナは飼育委員に立候補して、サラリスは風紀委員に決定したようだ。早速、模範指導のマネをし始めたので、


「1年生、プヨン、申告しまーす。本日、9:40、サラリスがこっそり授業中にお菓子を食ってました」

「うっ。気づいてたの?」

「偵察もできる有能ですから。トイレ掃除やれよ」

「うぅぅ、やるわね。プヨンは要注意監視と・・・」


 勝手によくわからない考課がつけられていた。


 一部同じ委員を目指すものは、グループで話をし始めたのか、中央付近はまばらになっている。


 しばらくすると、ユコナが教壇に近づき、ハイルン教官に尋ねていた。

 そばにいたプヨンが気になって見ていると、


「教官、わたしは美化委員やります。試験とかあるんですか?」


ゴクリ


 教官のノドがなった気がする。


「ほ、本当にいいのか? 掃除とかするんだぞ?」

「え? えぇ。綺麗好きですし、わたしにあっているかも。あ、でもトイレ掃除とかあるのかなぁ」

「いや、大丈夫だ。トイレを一人でやることはない。みんなでやる。絶対大丈夫だ。でも、途中でやーめたとかはやめてくれよ?」

「もちろんですよ。投げ出したりしません」

「わかった。2回意思を確認したぞ。ユコナ美化委員合格です。報告してくる」

「え?えぇ?もう?」


 何が何やらわからないユコナを残して、ハイルンは教室を飛び出していった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ